武器商人暗殺! 衝撃報告の続きです。
22日深夜の連絡の次の日、私はO氏に無理を言って、夜2人で密会した。
O氏は、私に連絡を入れてくれてから、自分なりの世界中のコネを使って、事件の真相を調べてくれたようで、眠そうな目をこすりながら、こう話してくれた。
『暗殺された○○○○は、最近武器取引は休んでいたと聞いていたが、今回の旅が仕事の再開を意味していたようだ。
暗殺の真相は、某国諜報部とのトラブルが直接の原因らしい』
アメリカで何度か会ったことのある男のことを話すO氏は、複雑な表情だった。
『彼には家族もいた。ニュースになるかどうか?闇に葬り去られる可能性もある』
武器商人という商売を肯定することは出来ないが、会えたはずの女房子供のある一人の男の死としてとらえた時、私は20年以上前に起きた、ある事件のことを思い出した。
「死んだ騎手の残したものは、振りかえ見る時の微笑でなければならない」
ある障害専門の騎手が落馬事故で命を落とした後、中央競馬会から遺族に払われる
保証金の金額が新聞に掲載され、数日後、その騎手の家にコソ泥が入り、保証金全部を盗まれるという痛ましい事件だった。
しかし、興味本位で殺到する報道陣に向かって、騎手の妻は気丈に、こう答えた。
『お金は無くなってしまいましたが、主人は私と子供に笑顔を残してくれましたから』
立場は違えど、同じ不慮の事故死…武器商人の家族たちの心境を考えれば
私自身の悔しさなど、グダグダ言っても始まらないのかもしれない。
これで、海外での武器商人取材の道は断たれてしまった。
別れ際、そんな私を心配し、これからの協力も惜しまないと言ってくれたO氏の背中は
いつにもまして大きく見えた。