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ザルツブルク音楽祭2009 第3回
今日は「フィガロの結婚」を。
この公演も祝祭大劇場ではなく、モーツァルトハウスで上演されました。
このプロダクションは、2006年のモーツァルト生誕250年のモーツァルト・イヤーの目玉として、祝祭小劇場がモーツァルトハウスとして全面改装され、そのこけら落とし公演され、絶賛を博したものの再演です。しかもその時のスザンナがアンナ・ネトレプコだったため、凄いプレミアのチケットになったことを良く覚えています。

演出は前回書いた「コジ・ファン・トゥッテ」と同じクラウス・グート。本来は登場人物にない愛のキューピット、天使のケルビムが舞台狭しと飛び回り、登場人物を操っているのです。もちろんセリフや歌は1つもありませんが、初めてこのオペラを見た人はこの天使が主役と思ったはずです。4幕のフィナーレでケルビムが死んでしまうとケルビーノも倒れてしまうことや名前から判断しても、ケルビムはケルビーノの分身なのでしょう。このアイディア自体は悪くはないと思いますが、彼が歌手たちの邪魔をするような演出はやはり許せません。特に2幕の伯爵のアリア「訴訟は勝ちと!」では、歌っている最中に後ろから羽交い絞めにしたり体当たりするなどとにかく歌を妨害し、良く最後まで歌いきったものだと感心するほどでした。

登場人物の人間関係は原作以上にドロドロしています。伯爵とスザンナは熱い接吻を何度も交わす仲ですし、フィガロとマルチェリーナも何だか怪しい関係で、伯爵夫人はケルビーノに激しいキスをしてしまい、スザンナまでがそれに加わってしまうというものです。

歌手は2006年に比べるとビッグネームは少なく、見る前は小粒な感じもしましたが、ほぼ全員が素晴らしかったと思います。まず伯爵はカナダ人バリトンのジェラルド・フィンリー。前述のように「訴訟は勝ちと!」のアリアはケルビムの妨害にも負けず見事最後まで歌いきって万雷の拍手を受けていました。伯爵夫人のドロテア・レシュマンは主役クラスの中では唯一2006年と同じキャストでしたが、現在ドイツ人最高のソプラノ歌手としての貫禄充分でした。スザンナのドイツ人ソプラノ、マリス・ペテルセン、ケルビーノのスウェーデン人メッツォ、カティヤ・ドラゴエヴィッチもとても良かったと思います。

そして、フィガロ役のイタリア人バス・バリトン、ルカ・ピサローニですが、彼の声にはもう完全にノックアウトされました。こんなに好きなタイプの声にはちょっと出会ったことがないほどで、はっきり言って惚れてしまいました。2002年や2006年の「ドン・ジョヴァンニ」にもマゼット役で出演していて、ずいぶん美声のマゼットで将来有望だな!とは思っていましたが、まさかここまでなろうとは。
簡単に言うと低音が良く鳴る美声なのですが、低音から高音までポジションがまったく変わらず、無理に鳴らしている感じがまったくなく、力が良く抜けていて、非常に密度が濃く、色気があり、耳に実に心地よいヴィブラートがかかり、アクートも非常に強く、とまあとにかく素晴らしいのです。生まれ変わったら彼のような声になりないものだと本気で思いました。これを読んだ方は、一体どんな声なんだ?と思われるでしょうが、バスティアニーニにやカップッチッリやヌッチなどヴェルディ・バリトンの鳴り方とはちょっと違い、ヘルマン・プライの音程が良くなってもう一ランク鳴るようになったという感じでしょうか。まだ34歳の若さですから、バリトン歌手としてはまだまだこれから円熟期を迎えることでしょう。

オケはウィーンフィル、もちろん素晴らしかったです。指揮はダニエル・ハーディングで2006年の「ドン・ジョヴァンニ」の時にはこんなに音がズレるウィーンフィルは聞いたことがないというほど酷かったのですが、今回は見事にオケと歌手を統率し、とても良かったと思います。彼もピサローニと同じまだ34歳、まだまだこれから成長してくのでしょう。
by hikari-kozuki | 2009-10-30 17:56 | Opera | Comments(0)
ザルツブルク音楽祭2009 第2回
13日間にも渡って六男パリ&ボルドー公演で留守をしておりまして、またも間が開いてしまいました。こんなペースで書いていると来年のザルツブルク音楽祭のスケジュールが発表になってしまいますので、頑張って思い出し、書いていこうと思います。

まずは、8月15日新演出の「コジ・ファン・トゥッテ」です。会場はモーツァルトハウス(旧祝祭小劇場)。
演出はザルツブルクのエース演出家とも言うべきクラウス・グートで、「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」に続き、これで彼の”ダ・ポンテ三部作”は完結したことになりました。

舞台は現代。森の中の白い別荘風の豪邸で、幕を追うごとに樹木が育って行き、2幕になると家の中にまで樹が生えてきてしまいます。「ドン・ジョヴァンニ」も森の中の出来事だったので、一貫性も持たせたのかも知れません。

アルフォンゾは老哲学者ではなく、悪魔の役で、登場人物を操ります。デスピーナは女中というよりもフィオルディリージとドラベッラの家に住む若い娘の役で、金髪のロッカーになったり、ダンスを踊ったり飛び跳ねたりと舞台狭しと大活躍。フェッランドとグリエルモは、ほとんど変装などせず、壁にかけてあるアフリカ風の仮面をちょっと付けたりする程度で、変装などしなくてもこの男女の愛は脆く弱いもの、という演出だったのでしょうか。

歌手陣は女性3名が素晴らしかったです。フィオルディリージが人気急上昇中のスウェーデン人ミア・パーソン、ドラベッラがNY生まれのメッツォ・ソプラノイザベル・レオナルド、デスピーナには、フランス人のパトリシア・プティボンというメンバー。パーソンとレオナルドの姉妹は、声や歌唱力が抜群なだけでなく、容姿端麗で演技も上手く、特にレオナルドの方は女優と言ってもおかしくないほどの美しさです。一方、フェッランドはフィンランド人テノールのトピ・レティプー、グリエルモは地元オーストリア人バリトンのフロリアン・ベーシュで、この2人も良かったと思います。レティプーは1幕のアリアで高音が少しだけこすれてしまったので、軽いブーイングを浴びてしまいましたが、充分にザルツブルク音楽祭でモーツァルトを歌う資格のある歌手でした。唯一不満だったのが、アルフォンゾ役のボー・スコウフス。この6人のソリストの中では圧倒的なビッグネームですが、声がまったく響いてこないのです。私の席(前から5列目の左サイド)の問題かとも思いましたが、他の5人の声は充分に良く聞こえるので席の問題ではないでしょう。1幕冒頭1~3番の男声3人による掛け合いでは、もしかしたら風邪をひいているのか音声障害かと思ったくらいですが、最後までそのままで歌いきってしまいました。私はブーイングが出ないのが不思議なくらいでしたが、きっとあれが今のスコウフスなのでしょう。だとすれば、これからはリート歌手としての活躍を期待するしかありません。歌は上手いし、長身に甘いマスクで表現力や演技力もあるので、実に惜しいです。

オケのウィーンフィルはもちろん素晴らしく、世界最高峰のモーツァルトが存分に楽しめました。指揮のアダム・フィッシャーもなかなか良かったと思います。
by hikari-kozuki | 2009-10-28 19:06 | Opera | Comments(0)
ザルツブルク音楽祭2009 第1回
ちょっと油断をすると、あっという間に10日間が経ってしまいます。ローマの「カルメン」を書いてからまた期間が空いてしまい申し訳ありませんでした。

さて今日からはザルツブルク音楽祭編です。

まず最初に見たのは到着翌日のマチネ、8月15日(土)のウィーン・フィルの演奏会でした。指揮は、リッカルド・ムーティ。
曲目はヴァレーズの「アルカナ」とリストの「ファウスト交響曲」でした。共に大編成のオーケストラを必要とするです。エドガー・ヴァレーズは、1883年生まれのフランス人で、20世紀に活躍した現代作曲家です。ストラヴィンスキーの1歳年下にあたりますが、現代ではほとんど知られていません。この「アルカナ」は、数多くのパーカッションが活躍するダイナミックな曲ですが、さすがのウィーン・フィルもあまり演奏したことがないようで、一生懸命楽譜を見ているような印象でした。「アルカナ」とはラテン語で神秘的というような意味です。
もう1曲はリストの最高傑作の1つに数えられる「ファウスト交響曲」。正式名称を「3つの人物描写によるファウスト交響曲」と言いますが、言うまでもなくゲーテの「ファウスト」をテーマにした作品です。ファウストのストーリーとは関係なく、ファウスト、グレートヒェン、メフィストフェレスという3人の人物描写がそれぞれの楽章を構成するという壮大な曲です。特に3楽章後半、「神秘の合唱」の呼ばれる男声合唱に、テノール・ソロとオルガンが加わり大円団を迎えます。一見このまったく関係ないように見えるこのプログラムですが、テーマは”神秘”だったのでしょうか。

ムーティ&ウィーンフィルの演奏は、いよいよ円熟期を迎えたようで、パッションを感じさせる素晴らしいものでした。テノールのソロは、ザルツブルク音楽祭のエース・テノールのミヒャエル・シャーデでしたが、彼もとても良かったと思います。
by hikari-kozuki | 2009-10-07 13:55 | Concert | Comments(0)






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