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11月10日&11日 日生オペラ「カプレーティとモンテッキ」
先週末は日生オペラがありました。ダブル・キャストが組まれていたため、土、日と両日見に行きました。同じ演目をまったく別のキャストで続けて見るというのも、特徴や個性が良く分かって面白かったです。

キャストは次の通りでした。

11月10日(土)
指揮:城谷 正博
演出:田尾下 哲
カペッリオ:長谷川 顯
ジュリエッタ:砂川 涼子
ロメオ:林 美智子
テバルド:小原 啓楼
ロレンツォ:黒田 博
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11月11日(日)
指揮:城谷 正博
演出:田尾下 哲
カペッリオ:鹿野 由之
ジュリエッタ:津山 恵
ロメオ:加賀 ひとみ
テバルド:樋口 達哉
ロレンツォ:須藤 慎吾
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まずはジュリエッタ役の2人。
砂川涼子に関しては、今まではモーツァルトの諸役、アントニア、リュー、ミカエラ、ミミなどで着実にステップアップしてきましたが、ベッリーニはおそらく初めてだと思います。しかし、結論から言うと、とても合っています。細すぎず太すぎず、しかし豊かな声量と美声を持ち、非常に滑らかなフレージングを持ち、アジリタのテクニックもあるわけですから、ベルカントオペラが合わないはずがありません。しかし、私は以前から彼女の歌唱スタイルがバルバラ・フリットリに似ていると思っていましたので、ベル・カントという枠にはこだわらず、ぜひヴェルディの諸役等にも挑戦して欲しいと思っています。
もう1人の津山恵も良かったです。前半はやや硬さが見られましたが、ドンドン良くなっていったと思います。砂川涼子と比較するとどうしても細かいフレージングの処理や高音と低音のつなぎなど、完成度という点では少し劣ってしまいますが、声は素晴らしい。とても大きな将来性を感じました。よりいっそうの飛躍を期待します。

次にロメオの2人。「カプレーティとモンテッキ」のロメオは通常メッツォ・ソプラノがズボン役で演じますが、この公演でもそうでした。
まず林美智子。最近は新国や二期会の重要なメッツォの役をほとんど任されているほどの売れっ子です。確かに華はありますし、演技力もあります。新国の「運命の力」のプリツィオシッラ役などはとても良かったので、かなり期待していましたが、やはり海外の一流歌劇場で活躍をしているズボン役に比べると全体的にまだまだ弱いですね。中低音がやや奥にこもり、アクートがやや怒鳴ってしまうのも気になりました。ただ、まだまだ成長していける器を持っていると思います。
もう1人の加賀ひとみは、声も強く透明感があって、さらにノーブルで、演技も上手く、とても良いと思いました。しかし彼女の声は少しリリコなソプラノではないでしょうか?低音も無理に押さえつけることなくキレイに歌ってはいましたが、いかんせん鳴りが弱く、あれでは大きな劇場では聞こえません。たまたま低音が調子悪かったのかも知れませんが、ソプラノとしてあまり日本にはいないようなタイプの素晴らしい逸材だと思います。

次にテノール役のテバルド。
まず小原啓楼は、初めて聞くテノールでした。声は良く出ていますし、アクートも強く、歌自体も良かったのですが、1幕冒頭のアリアで最後のアクートを少し失敗してしまったので、それが残念でした。
もう1人の樋口達哉は、このブログでも度々触れてきましたが、先日の「仮面舞踏会」のリッカルドよりもさらに良かったと思います。太いものから細いものまでどんな役も器用にこなしますが、このベルカント・オペラのテノールはとても合っていると思います。オペラに対する真摯な気持ちを持っていて、ここ2、3年でもっとも伸びた歌手の1人でしょうね。NHKのニューイヤーオペラコンサートにも出演するそうですが、更なる高みを目指して頑張って欲しいものです。

カッペリオ役のバスは、長谷川顯と鹿野由之は悪くはありませんが、ちょっと鳴りが弱い感じがしました。一方、ロレンツォ役のバリトン、黒田博と須藤慎吾は、とても良く鳴る声で、舞台を引き締めていました。

指揮は城谷正博。ベッリーニの美しい旋律のラインを大切にし、オケ、合唱、ソリストのバランスの取り方も上手い。テンポやディナミークもかなり動かしていましたが、意欲的な感じがして、とても良かったと思います。
田尾下哲の演出もとても良かったと思います。1幕の前奏曲(シンフォニア)、2幕の序曲に映像を使って、舞台で展開しない隠れたストーリーの部分を上手く説明していた。「純愛」というテーマを大きな軸にして、奇を衒うことなく直球勝負の演出でした。また一方で、このオペラには本来ないはずのバルコニーも登場させたりして、そのあたりのファンサーヴィスも心得ています。いずれにしても、とてもセンスのある方だと思います。
また、合唱も特に男性陣は出番も多く、剣闘シーンも大変だったと思いますが、大健闘していました(しゃれではありません)。

この「カプレーティとモンテッキ」に関しては私が連載しているブログ「男の隠れ家」で詳しく書いていますので、ぜひそちらもお読みください。

http://otokonokakurega.net/blog/entertainment/70/page1.html
by hikari-kozuki | 2007-11-15 14:55 | Opera | Comments(4)
Commented by ポポロ at 2007-11-15 17:08
クラシック・ニュースにゲネプロの舞台写真があります。
ロメオ役の大立ち回りはスボン役には可哀そうで、歌唱に響くのではとヒヤヒヤでした。
Commented by hikari-kozuki at 2007-11-16 16:25
ポオロさん、ありがとうございました。
アクションという点では、ロメオ役の2人は本当に頑張っていたと思います。いずれにしても日生オペラは非常に意欲的な演目を選んでやっていらっしゃるし、キャスティングも名前よりも実力でされているようなので、今後がますます楽しみです。
Commented at 2007-11-17 20:28
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by hikari-kozuki at 2007-11-22 15:42
一部のオペラファンの間で評判が悪いのですか。。。
確かに”うーん、どうしてだろう?”と思う箇所は数箇所ありました。でも本文でも言いましたが、センスはある方だと思いますよ。粟国Jr.たち若手と一緒にぜひこれからも活躍して欲しいものです。
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