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ザルツブルク音楽祭「魔笛」
さて、いよいよ最後の作品になりましたが「魔笛」です。
これもとにかく豪華なキャストで注目を浴びていた作品です。

もともと昨年の音楽祭で新演出された巨匠グレアム・ヴィックのプロダクションで今年も上演される予定でしたが、ザラストロの教団は老人ホーム、ザラストロはそこの院長、タミーノは半ズボンにスニーカーの若者というもので、音楽を壊していると酷評されたため、今年も新演出となりました。今回の舞台はベイルート生まれの英国人ピエール・アウディによるもの。彼はアムステルダムのネーデルランド・オペラの芸術監督を務めるなど、意欲的な舞台で評判の高い演出家です。カラフルな原色をふんだんに使った不気味な動物や草木の置物が舞台にたくさん登場し、まあ、おとぎ話の世界と言えないこともありません。2幕は長方形を重ねたピラミッドのようなものが登場し、その中で物語が進んでいきます。
まあ、演出としては、可もなく不可もなくという印象で、私個人としては、フェルゼンライトシューレをサーカス小屋に見立て、出演者はピエロや大道芸人という、ヴィックの前のアヒム・フライアーの舞台の方が良かったような気がします。

指揮は昨年に引き続きリッカルド・ムーティ、オケはウィーン・フィルでしたが、昨年よりも更にパワーアップした感じで、とても安定した音楽を聞かせてくれました。特に前夜のハーディング&ウィーン・フィルの「ドン・ジョヴァンニ」がバラバラになってしまったので、やはりムーティの貫禄なのでしょうか。

歌手陣もさすがにスター歌手が大集合だったので、穴がなく、それぞれに素晴らしかったと思います。まずザラストロは昨年と同じルネ・パーペ。期待通り、強く甘く美しい低音を会場中に響かせてくれました。ザルツブルク音楽祭でも毎年エースのバス歌手として大活躍を続けています。
タミーノは昨年のミヒャエル・シャーデに代わり、アメリカ人のポール・グローヴスでした。声も良く通る美声で、動きも敏捷で、決して悪くはないのですが、ちょっとインパクトが弱かった感じもしました。
夜の女王は若きドイツ人のコロラトゥーラ・ソプラノ、ディアナ・ダムラウ。ザルツブルク音楽祭へは2001年の同役でデビューして以来、すっかりレギュラーとなっており、とても人気もあります。彼女は単に超高音が良く転がるコロラトゥーラというだけでなく、中低音も豊かで魅力のある声を響かせてくれます。もちろん2つのアリアを素晴らしい声で歌っていましたが、超高音が転がる箇所では少しだけ音程がふらついていました。
パミーナは、ザルツブルク出身でモーツァルテウム音楽院卒業という地元の星、ゲニア・キューマイヤー。キャリアはまだ3年ほどですが、ミラノ、ウィーン、ロンドンなど世界中の一流歌劇場からオファーが止まない超新星です。当夜も若く瑞々しいパミーナぶりで、テクニックも抜群でした。
パパゲーノは、昨年同様同じ2人によりダブルキャストでしたが、当夜はハンサムなオーストリア人バリトンのマルクス・ウェルバ。今年の6月にスカラ座で「ナクソス島のアリアドネ」のハレルキン役を見た時にとても良い印象がありましたが、パパゲーノもとても良かったです。ただ、ちょっと残念だったのは、1幕でGAHCD(ソラシドレ)の横笛のDの部分が故障してしまっていたようで音が上がりきらず、何とも締まらない笛になってしまいました。

以上でザルツブルク音楽祭のレポートを終了させて頂きます。長々とお付き合い頂きありがとうございました。モーツァルトイヤーの明ける来年2007年はどんなことになるのでしょうか。ちなみに2008年は地元が生んだ大指揮者、ヘルベルト・フォン・カラヤンの生誕100周年。生家を改修工事するなど、再来年に備えて準備をしていました。
by hikari-kozuki | 2006-09-13 17:43 | Comments(1)
Commented by ギュンター・ネッツァー at 2006-09-13 20:12 x
お忙しい中、《魔笛》の様子を詳しくお知らせくださって、ありがとうございました。
ダムラウは、インターネットで聴くだけでも鳥肌が立つほどでした。
DVDが待ち遠しいです。
マエストロ・ムーティのニュース・ブログでも紹介させてください。

2008年は、カラヤン以来の《オテロ》をマエストロ・ムーティが振る予定なので、音楽ファンがまた殺到することでしょう。上月さんもますますご活躍することになりそうですね!
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