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ジャコミーニ・テノール・リサイタル
5月22日(月)は池袋の東京芸術劇場でジュゼッペ・ジャコミーニのリサイタルがありました。デビュー40周年の記念コンサートですが、バリトンからテノールに転向して40周年ということで、御齢65歳。本格的なテノーレ・ドラマティコとして一世を風靡し、モナコ、コレッリの後継者と言われたこともありましたが、私も大好きなテノールの1人です。ロブストな声のテノールにはありがちなケースで好不調の波が大きく、調子の良い時はとても人間の声とは思えないような凄まじい迫力のアクートを鳴り響かせ、不調の時にはスカスカの声ということもありました。それらをすべて含めて彼の持ち味であり、真に愛すべきテノーレだったのです。

さて当夜のプログラムは、アクートはBまで、そして短いアリアが多く、彼の魅力が全開とはいきませんでしたが、随所に彼の素晴らしさは見せてくれました。
確かな体の支えに基づいた発声、ffと同じ体の支えから出されるpp、たとえ声が太くても、正しく聞こえる美しいイタリア語、非常に密度が濃く血沸き肉踊るような中音域からFやGあたりの音。そして驚いたのはフレージングの長さです。特にアリアの最初のフレーズは普通のテノールの倍くらい伸ばしていました。”フェドーラ”や”蝶々夫人”などは本当に驚かされました。冒頭、ブレッシングをしないことによって喉の調整をしているのでしょうか?”ルイザ・ミラー”の「穏やかな夜には」は本来、彼のような太いテノールの歌う曲ではありませんが、深く太い声で押しまくり、とても良かったです。一方”ジョコンダの「空と海」は途中でかなり疲れてしまい、最後は相当危なかったです。そしてアンコールで歌われたイナバウアー、いえ”トゥーランドット”の「誰も寝てはならぬ」(この曲が唯一アクートのHがある曲でした)も熱いパッションは十分に感じられましたが、Hがかすれてしまい、本人も歌ったあと相当に怒っている様子でした。
さて、1番残念だったのは指揮のアルベルト・メオーリです。ジャコミーニの揺れるテンポに全然合わせられず、指揮ぶりも硬く、オケを統率する力もないようでした。HPやGPはちゃんとやったのでしょうか?,また、オケの東京ニューシティー管弦楽団は本来もオペラに強いはずなのに、一向に盛り上がらない演奏で、演奏者たちからの情熱ややる気もほとんど感じられませんでした。

それにしても当夜は業界関係者、もっと言うと男声歌手たちの多かったこと。観客の1/5から1/4はテノールかバリトンかバスだったのでは。それだけジャコミーニという歌手が玄人受けするテノールだという証明になりました。

なお、Ticket Classic4月号のp98にジャコミーニと私のインタビュー記事が掲載されていますので、興味のある方はぜひお読み下さい。と言ってももうどこにもないかも知れません...。もし読んでみたい方はクラシック・ジャパンに問い合わせをしてみては。(03-5304-7125)
by hikari-kozuki | 2006-05-24 20:57 | Comments(0)
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