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新国立劇場の「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」
昨日、4月9日(日)は新国でオペラを観てきました。
最近は、空席が目立つ公演もあったりして、運営の難しさなどが指摘されたりしていますが、昨日は日曜日のマチネということで、ほぼ満席という状況でした。いつもこうだといいのですが、なかなか難しいこともあるのでしょうね。もちろん新国もいろいろな努力はしているでしょうが、世界に冠たるクラシック消費都市の東京ではあまりにもクラシックのコンサートが多すぎるのも一因かと思います。特にオペラに関しては、二期会、日本オペラ振興会(藤原歌劇団)の他、先週は東京オペラの森の「オテロ」とサントリーホールオペラの「トゥーランドット」がバッティングしたりしていました。6月は一流歌劇場の来日公演も目白押しで「ボローニャ歌劇場」と「MET」と「ベッリーニ大劇場」が続けざまに公演を行います。
しかし、業界関係者の1人として公演数の多さを嘆いていることは許されません。1にも2にもクラシック音楽ファンの裾野を広げることが必要でしょう。子供だけでなく、大人にも、そして団塊の世代の方々にも。せっかくトリノオリンピックで「トゥーランドット」がこれだけの話題になっているのですから、今はチャンスだと思います。もっと気楽の雰囲気で、もっと気楽の料金で、一見さんでも行き安いようなコンサート、オペラをどんどんプロデュースして行きたいと思っています。

さて前置きが長くなりましたが昨日のオペラです。
これは一昨年に新演出されたものですので演出に関しては多くは触れません。ウィーン、チューリヒなどではお馴染みのこのグリシャ・アサガロフの演出は、「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」を同じ舞台装置で上演するのです。カヴァレリアの舞台に道化師のためのセットをプラスするような形になりますが、違和感はほとんどありません。衣装も合唱団のメンバーは両作品ともほとんど共通で同じ服装で登場します。賛否両論あるでしょうが、アイディア次第で経費削減も可能だという1つのテストケースとして、貴重なサンプルだと思います。場合によっては、他のオペラとの舞台セットの共用も可能かも知れません。
指揮はファビオ・ルイージですが、意外にも新国初登場とのこと、。ウィーンやミュンヘンではあまりに何度も観ているので、日本人の指揮者よりも身近に感じるほどです。何を振らせても確実に上手く仕上げてくる堅実なマエストロとしてヨーロッパでも貴重な存在です。
まず、「カヴァレリア・ルスティカーナ」。サントゥッツァにガブリエーレ・シュナウトというビッグネームを配してきました。バイロイトでもすっかりお馴染みのワグナー歌いのソプラノ・ドラマティコですが、さすがに少々落ちてきたでしょうか。声はもちろん強い声で鳴り響くのですが、ヴィブラートがかかりすぎですし、音程もやや安定しません。
相手役のトゥリッドゥにはアルベルト・クピード。日本にもファンがたくさんいますが、本格派のテノーレ・スピントらしく、強く良く嵌った声を会場狭ましと鳴らしまくっていました。1幕冒頭のローラの家からの朝帰りのシーンのシチリアーナ「おお、ローラ」ではFやGの音が上ずっていてやや気になりましたが、この歌は通常舞台裏で歌うのを、舞台の上方で堂々と歌わないとならないので、その影響かも知れません。最後まで声の威力は落ちることなく、さすがでした。ただ、すべての声がfかffという音楽は幾らなんでも1本調子でどうかと思います。
ローラの夫アルフィオは小林由樹。あまり聞いたことがないバリトンなのですが、声はとてもいいと思います。しかし、テクニック的にはちょっと残念な点もありました。例えば登場シーンの「駒は勇んで」のシーンは、何度も上のFの音が跳躍音として出てくるバリトンの見せ場なのですが、このFの声が他の声に比べて明らかに浅いのです。音程も悪くないし、安定もしているのですが、全部のFが浅く細くなってしまっていました。次回に期待したいです。
ローラの山下牧子、ルチアの三輪陽子も悪くなかったと思います。

次に「道化師」。まずトニオはバリトンの河野克典。ドイツ・リートや宗教曲、各種コンサートのソリストとしても活躍中ですが、少し甘い感じの声で低音から高音まで安定感のある発声は安心して聞くことが出来ます。
カニオはヘルデン・テノールのクリスティアン・フランツ。全体的には良く鳴っていて及第点だと思いますが、変に抜きすぎて歌うところがあったり、アクートがやや明るく浅いのは、やや気になります。「衣装をつけろ」も何だか流して歌っている感じもしました。
ネッダの大村博美はTicket Classic4月号の”十人十色”のコーナーで、私がインタビュー記事を書きました。演技的にはやや硬い感じもしましたが、健闘していたと思います。”鳥の歌”も鳥に憧れて自由を求める女性の雰囲気が良く出ていました。
ペッペの樋口達哉はこのブログでも何度も触れていますが、最近とても良くなってきています。もともと声の威力でだけ勝負する方ではありませんが、持ち味である透明感のある美しい声に磨きがかかってきました。今後の活躍にますます期待しています。
シルヴィオの星野淳もまずまずでした。
by hikari-kozuki | 2006-04-10 19:36 | Comments(0)
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