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15日(水)、渋谷のオーチャードホールで、サン・カルロ劇場の「ルイザ・ミラー」を観てきました。結論からいいますと素晴らしい公演で、久しぶりに深い感動を味わいました。
もちろんサン・カルロ劇場は、何度も行ったことのある劇場ですが、これほどの演奏は現地でも1度も聴いたことがありません。充実したソリストが揃ったこと、この公演のために何度もプローヴェを重ねたこと等々いろんな要素が考えられるでしょうが、最大の理由はオーケストラの充実であると思われます。確かに独特のリズム感やこの劇場にしか出せないような音というのはありました。しかし、いかんせん音が雑でアンサンブルが薄っぺらいのです。雰囲気はあって乗りは良くても、実がないという感じだったのです。 2001年から就任しているトマージ総裁、2002年から就任しているヴァッカーリ芸術監督の影響なのか、もしかするとオケのメンバーを大々的に入れ替えたのかも知れません。 それともちろん、今回指揮台に立つマウリツィオ・ベニーニの実力も大きいのでしょう。テンポもかなり緩急を付け、ディナミークも利いていました。このオペラはオケにかなりの技量が要求されますが、良く応えていたと思います。アンサンブルが薄っぺらい最大の原因であった金管、木管も1人1人の音が的確な聞こえ、かつ厚みのある美しいハーモニーを創っていました。 特に序曲は私の大好きな序曲の1つですが、フィナーレのアッチェルランドやトランペットが3度で上昇していく短いフレーズの見せ場のところなど痺れました。 3年前にロンドンのコヴェントガーデンでもこのオペラを観ましたが、序曲は今回のサン・カルロ劇場の方が良かったと思います。 さてオケとマエストロをさんざん褒めましたが、やはり最高だったのは、タイトルロールのバルバラ・フリットリです。彼女は初来日(オペラとしては)だったのですが、日本に来たことのない最後の大物ともいえるディーヴァということで、楽しみにしていたファンも多かったと思いますが、十分に期待に応えてくれました。 私は、スカラ座のシーズンオープニング公演の「トロヴァトーレ」のレオノーラ、「オテロ」のデズデモナや、「ドン・カルロ」のエリザベッタ、「フィガロの結婚」の伯爵夫人などを見たことがありますが、それらのいずれもが素晴らしく、今後10年~20年は彼女の時代だと思っていました。 このタイトルロール役は、リリコなのにアジリタのテクニックも要求されるかなりの難役ですが、彼女は完璧にやってくれました。 ソット・ヴォーチェからffまで、低音から高音まで、すべてが良くコントロールの利いた美声でヴィヴラートもちょうど良く、音程も良く、フレージングも美しく、まるでビロードのような滑らかな声で、これがベルカントというものか、と思ったほどです。 また、フレージングの長さも特筆すべきで、完璧なフォームで発声していなければ絶対に出来ない芸当です。そして、発声が完璧なだけでなく、表現力も十分で、彼女が歌うと単純なメロディーも美しい旋律線となります。 あえて難点を言うとすれば、あまりにテクニックが完璧で、発声に余裕がありすぎるためにややスリルが感じられないことくらいでしょうか。 ロドルフォ役のサッバティーニも良かったです。 やや鼻にかかる独特の甘い声、滑らかな旋律線、安定感のあるアクートなどは健在で、良く計算されたノーブルな歌を聞かせてくれました。 1幕はややセーブをしすぎた感がありましたが、2幕3場のアリア「穏やかな夜には」に備えていたものと思われます。実際に後半のカバレッタでは、聞いたことのないような旋律に変えて、余裕で高音を出しまくっていましたので。 ルイザのお父さん役ミラーはバリトンのステファノ・アントヌッチ。高音も楽勝で発声も悪くないが、やや声の厚みという点では弱く、もう少しブリランテな声であればと思いました。 ロドルフォのお父さん役ヴァルテル伯爵はジョルジョ・スーリアン。良く鳴る声で低音から高音まで満遍なく強い。やや歌い方が1本調子な感じが残念です。 悪代官ヴルムはフリットリの実生活のご主人でバス・バリトンのナターレ・デ・カローリス。声域が広く鳴りも悪くありません。ただ、彼の舞台は何度も見ていますが、コミカルな演技が抜群に上手いので、ベルカントオペラのブッファのバスかバリトン役をやらせたら右に出るものはいません。 フェデリーカ役のメッツォ・ソプラノ、アンナマリア・キウーリも及第点でしょうが、ちょっと高音がつまり気味になる箇所があって、気になりました。 とっても長くなってしまいましたが、この公演は絶対に見る価値があります。 最終日6月21日(火)のチケットはまだあるそうなので、行っていない方はぜひお勧めです!
by hikari-kozuki
| 2005-06-17 16:20
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Comments(3)
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その節は大変お世話になりました(苦笑)。
今回もお世話になったと思います。私も誘われたんですけど。 地元の新聞に写真付きで載ってました。でもそこはさすがに地元紙で、 「ご挨拶しました」ってことがメインでオペラのことはまったく書かれていなくて。ああ、当地でも見たかった。チャンスだったのに。余りにお金のない自治体なもので、ま、やむなしでしょう。
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daimiさん
この内容では、内容が分かる人なんてほとんどいませんよ。 一昨年の年末にあった鹿児島交響楽団ナポリ公演inサン・カルロ劇場のことですね?! そして、今回のサン・カルロの来日公演の取材を鹿児島の新聞がして、 しかし、肝心な公演内容よりも、鹿児島の方々がサン・カルロの方々に挨拶をしました、ってことがメインだったんですね? そして、出来たらサン・カルロの人たちにぜひ鹿児島への来てもらって、公演をして欲しかった!でも、自治体にお金がないから、実現しなかったということですね。 ここまで通訳しないと誰も分からないでしょう。ははは。でも、もしかしたら、そこまで具体的にいうのはまずかったですか? ![]()
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![]() 【筆者のプロフィール】 上月光 (KOZUKI,Hikari) 株式会社ラテーザ代表取締役社長。音楽評論家。青山女声合唱団団長、指導者。六本木男声合唱団倶楽部バリトンメンバー。ロイヤルチェンバーオーケストラ相談役、評議員。武蔵野音楽大学声楽科卒業。バリトン。趣味ゴルフ、スポーツ観戦等。熱狂的なACミランのファン(ミラニスタ) 【リンク】 六本木男声合唱団倶楽部 株式会社ラテーザ ピアニスト一世オフィシャルサイト 加圧トレーニングジムスイートアズ カテゴリ
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