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日本でも新聞各誌に取り上げられたのでご存知の方も多いでしょうが、リッカルド・ムーティがスカラ座の音楽監督を辞任しました。
数年前からムーティとカルロ・フォンターナ総裁との確執は取りざたされていましたが、2月の理事会で総裁を解任し、ムーティと親しい劇場部門のマウロ・メリを新総裁に任命しました。しかし、オーケストラのメンバーやスタッフで構成される組合は、フォンターナ擁護に廻り、ムーティ、メリの解任動議を提出していました。 それを受け、対立に嫌気をさしたムーティが辞任をしたのです。 1986年クラウディオ・アッバードのあとを受けて以来、ムーティの長期政権に入っていて磐石に思えましたが、これほど組合のメンバーのパッシングを受けるとは意外な感じがしました。 フォンターナ総裁に人望があったことも理由でしょうが、彼の音楽に対する妥協のない厳しい姿勢、絶対君主制による支配は、メンバーたちと良好な関係を築けていなかったのでしょう。 スカラ座は、3年間の大修復工事を経て、昨年12月7日に開場したばかりで、新しく生まれ変わった素晴らしい舞台でさまざまなプロダクションが予定されていただけに残念でなりません。 しかし、ムーティがスカラ座の発展に絶大なる貢献をし、輝ける伝統と歴史を守ってきたことはまぎれもない事実です。 ムーティ政権下のスカラ座はイタリアのみならず世界のオペラの殿堂として世界中のオペラハウスのトップとして君臨してきました。さまざまな名演が何よりの証拠です。 彼は厳格な原点主義として知られますが、最近はやや柔軟な解釈も見せたり、円熟味を増していました。彼のタクトのもと、オケ、合唱、歌手を一糸乱れぬほど統制し、自在なカンタービレ、アッチェルランド等を駆使、ディナミークの真髄を聞かせてくれました。 ここ数年でも数多くの名演を目の当たりにしてきました。「マノン・レスコー」「運命の力」「トスカ」「マクベス」「トロヴァトーレ」「ファルスタッフ」「仮面舞踏会」「2人のフォスカリ」「リゴレット」「椿姫」「オテロ」等々、そして昨年末オープニングのサリエリの「認められたヨーロッパ」、忘れられないものばかりです。 個人的には残念でなりませんが、ムーティにとってまったく新しい展開を見せるというのは楽しみな面もあります。ウィーンフィルを始め世界中のオケ、歌劇場からオファーが殺到することでしょう。 さて、気になるのはやはり後任人事です。私のところへも多数の意見や質問が寄せられています。圧倒的に多いのは、やはりリッカルド・シャイーで、やはり本命ではないかと思います。 ミラノ生まれでムーティよりも一回りほど若く、血筋も良く、スカラとの関係も深く、地元ミラノのヴェルディ交響楽団の音楽監督もやっていますので、すべてのベクトルは彼の方向を向いているような気がします。 しかし、他にも候補と目される人はたくさんいます。アットランダムに挙げてみます。 まずは、さらに一世代若いダニエーレ・ガッティ。シャイーの後任としてボローニャの音楽監督に就任し、素晴らしい成果を挙げています。彼もミラノ生まれです。 次にロンドン生まれのイタリア人、アントニオ・パッパーノ。ロンドン・ロイヤルオペラの音楽総監督をしていますが、地元でも絶大な人気を博し、ガッティと同世代の彼は、次世代のホープと目されています。 カルロ・リッツィ。スカラでも「トゥーランドット」「蝶々夫人」を振ったりしていますが、つい先日、ヴィオッティの急逝を受け、今年のザルツブルクの「椿姫」を振ることに決まり、強烈なフォローが吹いています。彼も40代前半の同世代で、ミラノ生まれです。 彼も同世代ですが、ジェノヴァ生まれのファビオ・ルイージ。彼はイタリアよりもドイツ語圏で活躍中で、ウィーン、ミュンヘン、ベルリンなどではすっかりレギュラー指揮者として定着し、イタリアものには定評があります。 ゲルギエフの片腕で、キーロフの主席指揮者として活躍中のジャナンドレア・ノセダ。彼もミラノ生まれですが、地元ヴェルディ交響楽団の指揮者などとして、このところメキメキ力をつけ、評価の高い指揮者です。 このあたりまでが対抗でしょうか。 シノーポリが生きていれば彼が本命だったかもしれません。 あとは実現の可能性は低いと思われますが、列記します。 ミラノ生まれでスカラ座でもお馴染みステファノ・ランザーニ。 スカラ座の前音楽監督クラウディオ・アッバードの甥に当たるロベルト・アッバード。 ビッグネームの中で可能性がゼロとは言えないのは、チョン・ミョン・フン、ズビン・メータあたりでしょうか、まあないでしょうけど。 すっかり長くなってしまいました。 私はこの人だと思う!、というようなご意見のある方は、コメントをお待ちしています。
by hikari-kozuki
| 2005-04-05 16:33
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Comments(4)
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待ってました!上月さん。専門家のご意見を伺いたかったところです。
後任予測は世間一般の妥当な予想、私の個人的意見を含め、全て上月さんが網羅したと思います。そして、98%これらの人たちの中から選ばれると思います。順当にシャイーじゃないかと思います。 でも、わたしも上月師匠の教え子の一人、可能性は限りなく低いけど「ひょっとしてあり?」の意見を挙げてみようと思います。じゃないと面白くありませんからね。 それは、いわゆる「つなぎ」として短期政権で、ネッロ・サンティが掌握するというものです!どうでしょう!あり得ませんか!? それから、本命にも対抗にも上がらない穴として、近年日本での登場が増えつつあるニコラ・ルイゾッティなどいかがでしょう?(まあ、ないな。) 私はリッカルド・ムーティのファンです。なのに彼の今後の心配より、スカラ座の後任に関心が行ってしまうのが我ながらやばいと思う今日この頃です。でも、上月さんの言うとおり、ムーティ氏なら、どこに行っても引く手あまたですよね。 それにしても、上月さん、ホントスカラでいい演目見てますねー。うらやましすぎる。
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今回の件(事件)は本当に残念です。20年かけて鍛えに鍛え、磨きに磨きあげたオーケストラが、いよいよ輝き始め、さあ、2009年の任期満了に向け、最後の総仕上げを、という時期だっただけに。オハコ=十八番の「アイーダ」、フローレスとの「清教徒」、そして超難関の「メディア」や「ノルマ」といった演目(←どれも、ムーティ=スカラでこそ!というものばかり!!)が、満を持して上演される予定だったとのことで、さぞ、マエストロも無念だったと思います。。。。(今回のオーケストラ側の態度、もちろん全員一致ではなかったとはいえ、全然納得できません。恩をあだで返すとはこのことです!)
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今後、ウィーンはもちろん、ベルリン、パリ、ニューヨーク、ザルツブルク、
と、世界中がマエストロを放ってはおかないでしょうが、その活動・活躍の中心が「イタリア」でなくなるであろうことを、なんだかとても寂しく思います。(あれほどイタリアの文化について、いつも熱く語っていたマエストロが・・・) 今後のスカラ座は、色々な意味で難しいですね。これだけ後味悪く終わってしまった「その次」なんて、ましてや「ムーティの20年」の次なんて、相当な自信家でないと。ヴェルディ響はともかく、ゲヴァントハウスのオペラを含む音楽総監督と掛け持ちできるようなポジションではないことくらい、シャイーも心得ているとは思いますが。。。。(でも、やっぱり彼かな) しかし、マエストロの任期が2009年までだった、ということは、スカラ座は既にその次の目星をつけていたのでしょうか。。。。(ちょうどその頃、ガッティとボローニャの契約が満了するとか)
TB打たせていただきました。私はパッパーノの大ファンなので、もしロンドンから彼が引っこ抜かれるようなことがあれば、代わりにムーティに来てもらわなければ割に合いませんよ。
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![]() 【筆者のプロフィール】 上月光 (KOZUKI,Hikari) 株式会社ラテーザ代表取締役社長。音楽評論家。青山女声合唱団団長、指導者。六本木男声合唱団倶楽部バリトンメンバー。ロイヤルチェンバーオーケストラ相談役、評議員。武蔵野音楽大学声楽科卒業。バリトン。趣味ゴルフ、スポーツ観戦等。熱狂的なACミランのファン(ミラニスタ) 【リンク】 六本木男声合唱団倶楽部 株式会社ラテーザ ピアニスト一世オフィシャルサイト 加圧トレーニングジムスイートアズ カテゴリ
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