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「愛怨」 in ハイデルベルク 第2回
「愛怨」の話をする前に三木先生のライフワークになった「日本史オペラ連作」について説明をしなければならないでしょう。全部で9作品にもなりますので、少し時間がかかってしまいますが、三木先生の偉業を知って頂くためにもぜひお付き合い下さい。6月2日にハイデルブルク大学音楽学部の講堂で行われた三木先生ご本人による「日本史オペラ連作」のレクチャー及びその時に配られたレジュメを元に、時代順ではなく、作曲された順にご説明します。

1.「春琴抄」。原作は谷崎潤一郎の小説で、時代は幕末、舞台は大阪。美しい盲目の筝の奏者、春琴と子供のころから彼女の世話をしてきた丁稚の佐助の耽美主義の物語です。最後には佐助が自分も針で目を突いてしまうという一種異常な愛を描いています。当時、三木先生は歌を作る際に日本の東西におけるピッチアクセントに悩んでいたそうですが、ご自身の徳島弁に近い関西弁で作れたので作曲を引き受けた、とおっしゃっていました。1975年に完成、初演されましたが、この作品が三木先生の記念すべき第1作目のオペラとなり、ジローオペラ賞を受賞しました。さらにこの作品は二期会によってフィンランドのサヴォンリンナ・オペラ・フェスティヴァルでも上演されました。

2.「あだ」。当時、イングリッシュ音楽劇場の芸術監督だった演出家のコリン・グレアムから委嘱された作品で、英語にて作曲されました。グレアムは20世紀のイギリスにおけるもっとも偉大な作曲家ベンジャミン・ブリテンの片腕として、後期の6作品の初演を演出したことでも有名な人物です。1979年にロンドンで、英語名「An Actor's Revenge」として初演され、アメリカでも1981年に初演されました。その後日本語版は1984年、ドイツ語版が1987年に次々と初演されました。物語の舞台は18世紀の江戸。歌舞伎女形のスター雪之丞が自分の両親を殺した3悪人に次々に復讐を遂げるものの、彼を純真無垢に愛した浪路も巻き添いを食い、狂って死んでしまい、最後は雪之丞が出家するするという悲劇です。
「春琴抄」が19世紀で地歌筝曲、「あだ」が18世紀で歌舞伎という日本の伝統芸能が関連していたこともあったので、時代精神を探るオペラ連作を自分のライフワークにしようと決めたそうです。また、民族楽器によるソロが、オケピットのオーケストラと協奏曲を奏でるような役割をするという三木先生の独特の様式もこの2作品から定着しました。

3.「じょうるり」。三木先生が3作目に選んだ題材は、浄瑠璃でした。アメリカでの「あだ」の成功によって、作曲三木稔、台本と演出コリン・グレアムというコンビでセントルイス・オペラから委嘱されました。1985年に英語の台本にて「JORURI」というタイトルでセントルイスで初演され、1988年にはセントルイス・オペラが日生劇場で日本初演を行い、日本語版は、2005年に初演されました。17世紀の大阪の人形浄瑠璃一座を舞台に盲目の老いた太夫、その若い妻お種、一座でお種を愛する若い人形師の与助という3人のお互いを愛し合う葛藤を描いています。最後は熊野の滝でお種と与助が心中してしまいますが、まさに近松門左衛門の死への道行(みちゆき)の世界です。
この作品によって17~19世紀の近世三部作が完成しました。また作曲技法的には、主役を器楽上で特定するIDセリー(Identity Series)という三木先生独特の技法を確立したとおっしゃっていました。セリーとは、現代音楽の通常、12音階における音列のことですが、三木先生は、主役の呼び名のピッチアクセントをセリー化して音列とするという画期的なものです。


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講演の行われたハイデルベルク大学の音楽学部の講堂のある建物
by hikari-kozuki | 2010-06-14 14:38 | Opera | Comments(0)
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