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ザルツブルク音楽祭2009 第5回
ザルツブルク音楽祭の最終回は、ロッシーニの「モーゼとファラオ」を。
このオペラ、原題を、「Moïse et Pharaon ou La passage de la Mer Rouge」と言い、正確には「モイーズとファラオン、または紅海の横断」と言うフランス語のオペラです。もともと1818年にナポリのサン・カルロ劇場で初演された「エジプトのモーゼ」という作品を1827年にイタリア語からフランス語へ、3幕を4幕へ、そしてストーリーや音楽も改編したのがこのオペラです。タイトルが長すぎるのと、イタリア語で言う方が一般的なので、ここでは「モーゼとファラオ」ということにしておきます。

話は言うまでもなく、映画「十戒」でも有名なモーゼの話で、旧約聖書のハイライトとも呼ぶべき「出エジプト記」のイスラエル人たちをエジプトから救出するために紅海を2つに割って道を作るという奇跡がオペラのラストシーンになります。

指揮はリッカルド・ムーティ。昨年の音楽祭では「オテロ」「魔笛」と大活躍でしたが、今年のオペラはこの作品1つだけでした。2003年12月にスカラ座のシーズン・オープニングに選んだのがこの作品。スカラ座が3年間の改修工事中だったので、アルチンボルディ劇場で上演され、絶賛を博しました。この時のキャストが、タイトルロールのイルダール・アブドラザコフに始まり、アーヴィン・シュロット、ジュゼッペ・フィリアノーティ、ソニア・ガナッシ、バルバラ・フリットリ他という豪華なものでした。DVDとして発売されているので、見た方も多いことでしょう。

今回のキャストは、その時と主役のアブドラザコフだけが同じで、あとはまったく違いました。今回のキャスティングは、2003年スカラ座の裏キャストに出ていた若手が中心で、ネームヴァリューという点では、スカラ座よりかなり劣る地味なキャストだったのですが、実際には素晴らしい公演となりました。
ファラオにシチリア島出身の新星、バリトンのニコラ・アライモ。エリエゼルにアルゼンチン人テノールのファン・フランシスコ・ガテル。アメノフィスにアメリカ人の若いテノール、エリック・カトラー。シナイードに美しきグルジア人メッツォ・ソプラノのニーノ。スルグラーゼ、アナイに超新星のロッシーニ・ソプラノとして注目されているラトヴィア人のマリーナ・レベカというキャストでした。ほとんどが若手でしたが、ロッシーニ歌手として赤丸急上昇中の歌手ばかりなので、歌手のレヴェルは非常に高かった印象です。
また、このオペラでは合唱が重要な果たしますが、ウィーン国立歌劇場の合唱団、そしてもちろんウィーンフィルの演奏も素晴らしいものでした。

このオペラ、音楽は素晴らしいのですが、何と言ってもラストシーンで紅海を2つに割るという凄いシーンがあるので、オペラハウスでの上演は非常に難しいため、上演回数が非常に少ないのです。
実際に2003年のスカラ座・オープニングのルカ・ロンコーニの舞台も決して成功したとは言えず、今回のユルゲン・フリムの演出には非常に期待していました。フリムは2006年からザルツブルク音楽祭の総監督に就任していますが、それ以来、自分は演出をしなくなっていたので、これが最初の作品となりました。また、2010年シーズンからはバレンボイムの依頼を受け、ベルリン国立歌劇場の芸術監督に就任することが決まっているので、彼の集大成のような作品になると思っていたのです。

しかし、実際には期待は激しく裏切られたというしかありません。
まず舞台は高い半円形のパネルを組み合わせた壁に囲まれ、他にはほとんど何もありません。そして、すべての幕はこの中で進行していきます。時々その壁に旧約聖書の一節と思われる文章がドイツ語で投影されるだけで、あとは何もないのです。クライマックスの紅海を割るシーンでは、パネルが少し開いてそこから逃げるだけ。しかも追ってくるエジプト軍の兵士もその同じパネルの隙間から入ってくるというもので、意味がまったく分かりません。初日はフリムに対して激しいブーイングが浴びせられたらしいですが、当然でしょう。時代の読み替えや超現代的な舞台や過激な演出に浴びせられるブーイングならまだしも、フリムの演出は何もしなかった、と言われても仕方のないような舞台でした。
by hikari-kozuki | 2009-11-04 14:43 | Opera | Comments(0)
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