エキサイトブログ ホーム | ブログトップ | サイトマップ
ミラノ・スカラ座4月30日「ランスへの旅」<後編>
当日のキャストはもちろん名だたるロッシーニ歌手ばかり。
まずソプラノは、主役クラスのコロラトゥーラ・ソプラノが3人も必要になりますが、即興詩人のコリンナにパトリツィア・チオーフィ、若い未亡人のフォルヴィルにアニック・マッシス、舞台となる金の百合亭の女将コルテーゼ夫人にカルメラ・レミージョ。特にコリンナ役のチオーフィの充実振りには目を見張りました。広い広いスカラ座の舞台のかなり後ろで高いところから歌う時間が長く、しかもそこからppを会場中に響かせないとならないという難易度の高さでしたが、見事に応え、テクニックと演技力と美声と美貌を兼ね備えているプリマドンナぶりでした。このコリンナ役は、今でも世界最高のベルカント歌手と言われるジュディッタ・パスタが初演を歌ったという伝説の役なので、そのプレッシャーは計り知れないものがあるでしょう。マッシスとレミージョもチオーフィに引けを取らない見事なテクニックと演技力を披露してくれました。

また重要なメッツォ・ソプラノ役で、メリベーア侯爵夫人は、世界最高のロッシーニ・メッツォと言われるダニエラ・バルチェッローナ。ここ4、5年あまり良いステージを見ることがなかったので、人気先行の感がぬぐえず、私にとってはあまり評価の高い歌手ではありませんでしたが、当夜は完全復活と言っても良いような朗々とした美声を響かせ、アジリタのテクニックも完璧でした。

男声陣も芸達者でテクニックを持った歌手が目白押しでした。イギリスの軍人シドニー役、バリトンののアラステア・ミルズ、骨董品マニアのドン・プロフィンド役、バスのニコラ・ウリヴィエーリ、ドイツの軍人、トロムボノクの男爵役、バスのブルーの・プラティコ、スペインの提督ドン・アルヴァーロ役のファビオ・カピタブッチ、他の歌手たちも、アンサンブルもソロも何をやらせても上手い歌手ばかり。

その中でも私が驚いたのは、ロシアの将軍リーベンスコフの伯爵役のディミトリー・コルチャク。彼自身が本当のロシア人ですが、まだ29歳の若き超新星です。現代最高のロッシーニ・テノールといえば、ファン・ディエゴ・フローレスですが、その美声、アクートの強さ、アジリタのテクニック、豊かで響く声、低音から高音まで無理なく滑らかで自然なフレージング、どれを取っても引けを取りません。しかもルックスもなかなかのハンサムぶりですので、今後必ず世界のトップに出てくる歌手だと思います。このリーベンスコフ役だけでここまで言い切ってしまうのはどうかと思いますが、ぜひ別の役を聞いてみたいものです。

指揮のオッターヴィオ・ダントーネはバロック、古楽器のジャンルでの第1人者ですが、リッカルド・ムーティが自分の後継者に指名してラヴェンナ、スカラを振ったことでも知られています。当夜は、バロックだけでなく、ベルカントオペラのジャンルでも充分に実力を発揮できることを証明してくれました。これだけの1流歌手たちを使ったアンサンブルとなると、さぞ大変だったと思いますが、オケも見事に統率していました。
by hikari-kozuki | 2009-05-18 15:58 | Opera | Comments(0)
<< フィレンツェ・テアトロ・コムナ... ミラノ・スカラ座4月30日「ラ... >>






Copyright © 1997-2004 Excite Japan Co., Ltd. All Rights Reserved.
免責事項 - ヘルプ - エキサイトをスタ-トペ-ジに | BB.excite | Woman.excite | エキサイト ホーム