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2月10日、15日 二期会「ラ・トラヴィアータ」東京文化会館(1)
2月12日から15日まで4日連続で二期会の「ラ・トラヴィアータ」が行われました。「ラ・トラヴィアータ」とは、言うまでもなく「椿姫」のことで、ヴェルディが付けた原題が「ラ・トラヴィアータ」なのです。A組、B組のダブルキャストでしたが、私が観たのは、A組のGP、2月10日とB組の本番、2月15日の2回。

今回の最大の話題は、すっかり二期会ではお馴染みとなった宮本亜門演出ですが、モーツァルトのダ・ポンテ3部作に続く第4作目としてこの「ラ・トラヴィアータ」を持ってきたのです。この名作は、世界中であらゆる角度から解釈が試みられ、時代の読み替えや舞台の読み替えも行われてきた作品なので、きっとそのプレッシャーは大変だったことでしょう。しかも二期会の「椿姫」といえば栗山昌良のオーソドックスな名舞台が20年間も繰り返し上演されてきたわけですから。

さて今回の舞台だが、一言で言うとシンプルで暗いもの。視覚に華やかさを訴えることを拒否したような舞台で、賛否両論が分かれるところでしょう。私は、1幕や2幕2番のパーティーシーンが華やかであればあるほど3幕のヴィオレッタの死とのコントラストが強く出て、このオペラが引き締まると思うのですが。舞台は、下手から上手にかけて床がかなりの角度で上がっていき、逆に天井は下がっていくので、要するに左から右にかけて斜めに狭くなっていくのです。舞台はひたすらにシンプルで、テーブル、机、ベッド兼用となる四角い箱のようなものが置いてあり、そこにパイプ椅子が何度か付けられるだけ。時代は現代か、もしくは20~30年前のイメージでしょうか。1幕の前奏曲と3幕のシーンでは、舞台下手の方に動かないエレヴェーターが設置していて、そこを出演者たちが昇り降りします。おそらく天国と地上を繋げている導線の役割を果たしている、というような意味だと思いますが、そんなところにお金をかけるなら他のかけかたがあると思うのですが。壁や天井は白と黒のモノトーン、照明もその壁の模様を歪めたりします。また、1幕の前奏曲では、3幕の死ぬ直前のヴィオレッタが登場し、アルフレードと絡みつつアルフレードは黙って去って行くという演技をさせ、これから始まる物語はヴィオレッタの回想録、という何度か繰り返されてきたパターンで特に有名なものはゼッフィレッリのものです。
合唱のメンバーは、全員顔を真っ黒に塗っているのです。歌手たちとの絡みもほとんどなく、よどんだ死を感じさせる空気を表しているのでしょうか?とにかく不気味でそれなりの演出効果は上げていたと思います。歌手たちに細かく動きを指示し、舞台を走り回るのも宮本演出の特徴で、歌手たちは大変そうでしたが、ドゥフォールやドビニー、フローラ等、普通の演出ではあまりどこにいるかも分からない登場人物たちがそれぞれの個性を持って引き立っていました。

その他の普通の舞台と明らかに違う箇所を列記します。
1幕のパーティーシーンでアルフレードがドゥフォールを殴り倒してしまう。これは、2幕2場の決闘への伏線なのでしょう。2幕のアルフレードのアリアでヴィオレッタがなぜか舞台をうろうろしているところ。その後の2重唱でジェルモンがお金をちらつかせヴィオレッタに別れを強要するシーン。2幕2番で激高したアルフレードがヴィオレッタにお札を投げつけるシーンでは、暴力的にスカートまで破ってしまいます。3幕の前奏曲では、2幕2場フィナーレで床に倒れたヴィオレッタの周りを黒く塗った合唱のメンバーたちが取り囲み、1人、また1人と去っていき幕があくのです。そして、3幕冒頭、ヴィオレッタはベッドに寝ているのではなく、そのまま床にうつ伏せているのです。また、アルフレードがヴィオレッタの部屋に駆けつけシーンでは、2人は一切抱き合ったりせず、淡々と歌うのです。3幕途中でヴィオレッタに突然スポットライトが当てられ、神から呼ばれているような演出は美しく感じました。このオペラは最近の傾向では、1幕と2幕1場はそのまま続けて上演され、2幕1場と2場の間で休憩、そして2幕2場と3幕は続けて上演されるのが普通ですが、この演出では、1幕と2幕の間、2幕2場と3幕の間の2回休憩が入ります。これによって、2幕1番のパリ郊外のヴィオレッタの家と2幕2場のフローラのサロンが続くことになりましたが、いきなりダンサーたちが飛び出してくる演出は最初驚きましたが、それなりの効果はあったと思います。このようにまったく意味不明なところと、これは良く考えているな!というところが混在しているのですが、数多くの同オペラを見てきた自分としては、残念ながら良い演出の部類には入らないと思いました。途中までは宮本演出の意図や真意などを一生懸命考えていましたが、あまり意味はないのかな?というところもあったので、音楽を集中して聞くようにしました。

長くなってしまったので、音楽的なところは明日に。
by hikari-kozuki | 2009-02-25 16:28 | Opera | Comments(0)
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