麺甲の取材から戻ったばかりにもかかわらず
またまたラーメン屋に入った椎名さんは、
空きっ腹をまぎらわすかのように熱く語り始めた。
「1年以上、毎月麺甲の取材をするうちに
また気がついたことがあるんだけど」
「うまい店の見つけ方の続きですね」
「麺甲では下調べをしてから取材に行くんだけど、
すると、たいていの資料や情報には
タレとかダシとか麺なんかのウンチクが書いてある。
ラーメンなら加水率、ソバならつなぎといった具合にさ。
そういう記事を読むたびに、よくわかるなあと感心する一方で
靴の上から足を掻いているというか、
実は違うんじゃないか、という思いがずっとあったんだ」
↑湯島天神下「大喜」の「無化調ラーメン」(イメージ)
「もっと大事なことがおありだと?」
「だって、普通そこまで考えないだろ。
要はうまいかうまくないか。となると、
イキオイがすごく重要なんじゃないか。
注文したら、サッと出てきて、ガッと食えるっていう」
「麺は早く出してほしいですよね。ホント……」
「そこに触れている情報がほとんどないんだよ。
ラーメンが国民食になったのも、
結局、ファーストフードという点が大きいと思う。
注文して5分10分で出てくる
これほどうまい料理って、実は世界的にも珍しい。
イタリアのパスタはそんなに早くできないし、
中国のラーメンは、実はスープのバリエーションだから
純粋な麺とは言い難い。ここはラーメン屋だから
ついラーメンの話になっちゃったけど、簡便性というか、速効性というか、
「作ったらすぐ食う」という
食の基本に忠実なところが麺のすごくいいところ。
だから、麺の店って、目の前に厨房のあるところが多い」
↑永福町の「大勝軒」
「確かにラーメン屋はカウンターが基本ですものね」
「作っている現場が見えることも重要で、
これは過去に高得点を叩き出した店の共通点でもある。
麺甲ももう終盤だから、いろいろ振り返ってみて発見したんだよ」
「なるほど。作る現場を見られれば
早く出せるだけじゃなくて、ごまかしもきかない」
「そう考えて、世界大会が行われると仮定して海外を見渡してみると、
実は麺の強豪はイタリアでも中国でもなくて
東南アジアが一躍のしあがってくるんだろうな。
フーやホーは、屋台で食えて、
ラーメンと同じくらい早くできるし、おまけに安くてうまい。
日本のラーメンは早くてうまいけど高いから、彼らは強敵だぞ。
日本でも「うまい」ばかりじゃなくて
「早い」をもっと追求するべきだ!」
と、椎名さんがますますヒートアップしたところで
やっとラーメンが出てきました……。
(レポート:
海仁)