椎名さんは数日前、チベットへ旅立ちました。
帰国予定は数週間後です。そのため、今回は少し趣向を変えて、
海外の麺にまつわるインタビューをお送りいたします。
(以下、談・写真:椎名誠)
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海外の麺ということで、
チベットとモンゴルのうどんの話をしようと思うんだけど、
その前にこの2つの国を混同している人がけっこう多いみたいなので、
まずは誤解を解いておきます。
チベットは中国の自治区のひとつ。
だから、国ではなくて、「チベット族」と呼ぶのが普通。
ちなみに、ブータン、ネパール、インドにもチベット語を話すチベット民族がいて、
チベット自治区の場所もこうした国のすぐ北にある。面積は日本の約3倍。
一方、モンゴルは中国とロシアに挟まれた独立国で、
ほとんどが遊牧民で公用語はモンゴル語。面積は日本の約4倍です。
中国の西のほうの南部にあるのがチベット、
その北のほうにある隣の国がモンゴルといえばわかりやすいかな。
そして、あまり知られていないんだけど、どっちの国にもうどんがあります。
チベットの主食はツァンパといって、
バター茶で溶いたハダカオオムギの粉を粘土みたいに手で丸めて食べる。
どの家でも1日3回たいていツァンパなんだけど、
ぼくはこれが大の苦手で、家庭にお世話になるときはうどんを注文することが多い。
中国の影響で、チベットの小麦粉と麺は実にしっかりしています。
うどんのダシは中華風。といっても、ラーメンとは違って、
日本のうどんに驚くほどよく似ています。
面白いのは結婚式や祝い事などの慶事にうどんを食べること。
そんなときは、直径3センチくらいのうどん玉を作って、
その中に丸めた糸や、ものを書いた紙、チベットのお菓子なんかを入れる。
食べていて邪魔になるから、ぼくはこれがとても面倒臭い(笑)。
糸が入っていたら、「新しい恋人ができます」という意味で、
紙には「お金持ちになります」とか、「いいことがある」とか書いてあったりする。
つまり、いわゆるおみくじですね。
(つづく)