今回は椎名さんが食べに行かずにいられないというラーメンのお話。
「昨日、岩手県の宮古から戻ったんだけど、宮古に行くと必ず寄るラーメン屋があるんだ」
「それは聞き捨てなりませんね。なんというお店ですか」
「たらふく」
「いかにもやる気が出そう(笑)」
「麺が97パーセントくらいあるよ」
「? スープはないってこと?」
「スープはあるさ(笑)。でも、麺が多くて、
具はシナチクとのりと小さなチャーシューがちょこんと乗っているだけ。
お店のメニューはラーメンだけで大盛りもない。
だから、客は「1つ」とか「2つ」というふうに店に入るなり数を言って終わり。
たくさん食いたい人は「2つ」と注文するわけだね。値段は1杯480円」
「安いなあ。で、どれほどうまいんですか」
「それが、そんなにうまくない(笑)」
「???」
「東京で流行ってるラーメンなんかにくらべると、あっさりしすぎてて。
だから、週に1回は行かないだろうけど、年に1度くらいは不思議と行きたくなるんだな」
「それはどうして?」
「それが自分でも最大の謎(笑)。
いや、ひとつ言えるのは見た目がすごくうまそうなんだ。
具が少ないところも古代ラーメンみたいでいい。
このラーメンには時代を超えたような存在感があるね」
「つまり、麺の“キャラ”が立ってる、と」
「そう。実際、『たらふく』には地元の固定ファンが多くて、
昨日見かけた役人風の客なんかは週に3回来ると言っていた。
病みつきになるだけの魅力は確かにある」
優勝はできないだろうけど、麺の甲子園では、
味だけじゃなくて麺の個性とか全体のたたずまいも重要。
つまり、そういうことだそうです。
そんなお店や麺があったら、みなさんもぜひ教えてください。
椎名さんが食べに行きますよ。
(撮影:椎名誠)
(レポート:
海仁)