LT12:00 UTC16:00 日本時間:2月18日01:00
緯度:46-54,1S 経度:52-01,2W
天候:C 風:南西5,7kt 気圧:1004hp 気温:15℃ コース:11度 艇速:7,1kt
昨夜から午前中まで、良い風が吹いていたが、昼になって風が無くなって来た。
何とかスピードを維持しようと必死の攻防である。
久しぶりにC5を揚げ奮闘中。
風は斜め後ろからだが、実際は(見た目の風)は船の横少し前から吹いている。
自分で風を作り出して進んでいるわけだ。
よって、風速より若干艇速を上げることができる。
軽い船だとかなり速く走れるが、ユーコーさんはそんなに軽くないので、必死だ。
海は緑色にも戻った。
昨日は光の具合で蒼に見えたが、まだ緑の海が広がっている。
ひとつ良い事。
少し暖かくなってきた。
これから少しづつ過ごしやすくなるだろう。
今後の見込みだが、非常に悪い。
7日先までの気象予報が取れる。
それをマキシー(セーリングソフト)にかけてみると。
艇速が10ktを越える時間は20パーセント以下である。
ほとんどが5~8ktの予想だ。
私の行く手に、気圧の尾根(等圧線の尾根で風が弱い)がベルリンの壁のように横たわる。
またまた、高気圧が襲ってくるもよう。
なんで!
とても難しいナビゲーションだ。
マキシの予想コースも毎回変わってくる。
そして、予報と実際の風の吹き方も結構違うのだ。
まだまだ苦戦が強いられそうである。
後続の船は安定して走っている。
ずいぶん差が縮まってきている。
そんな時、船内で本を読んでいると、しおりに、こんなことが書いてあった。
時を待つ心
悪い時がすぎれば、よい時が必ず来る。
おしなべて、事を成す人は、必ず時の来るのを待つ。
あせらず、あわてず、静かに
時の来るのを待つ。
松下幸之助
まさに、私に当てたような言葉である。
すばらしいタイミングだ。
しかし、南氷洋以来、ひと月近く時を待っているのだが、いまだに来ない。
んー。
そこで、とっておき!
私のカバンにいつも入っている本がある。
これを読むと心が落ち着くのだ。
心持の事
兵法の道において、心の持ちやうは、常の心に替わる事なかれ。
常にも、兵法のときにも、少しもかわらずして、心を広く直にして、
きつくひっぱらず、少しもたるまず、心のたかよらぬやうに、心をまん中におきて、
心を静かにゆるがせて、其のゆるきのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。
静かなる時も心は静かならず、何とはやき時も心は少しもはやからず、心は躰につれず、
躰は心につれず、心に用心して、身には用心せず、心のたらぬ事なくして、
心を少しもあまらせず、うえの心はよわくとも、そこの心をつよく、心を人に見わけられざるやうにして、
少身なるものは心に大きなる事を残らずしり、大身なるものは心にちいさき事を能くしりて、
大身も小身も、心を直にして、我身のひいきをせざるやうに心を持つ事肝要也。
心の内にごらず、広くして、ひろき所へ智恵を置くべき也。智恵も心もひたとみがく事専也。
智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、物毎の良悪をしり、よろず芸能、其道をわたり、
世間の人にすこしもだまされざるやうにして後、兵法の智恵となる心也。
兵法の智恵において、とりわけちがふ事有るもの也。
戦の場万事せはしき時なりとも、兵法の道理をきはめ、うごきなき心、能々吟味すべし。
五輪書 水之巻 新免武蔵
参考文献 講談社「五輪書」鎌田茂雄
ご存知、宮本武蔵の五輪書である。
彼は師匠を持たず、すべて現場で学んでいった。
武蔵は本当の真剣勝負である。
このシングルハンドレースも同じ。
一つ間違えれば、死を意味する。
そこで、真剣勝負の達人である。武蔵によく学んでいる。
この五輪書のなかで、一番役立つものはここである。
これは、どんな分野にも精通するものだろう。
これを読むと、いつも気持ちが調う。
あと、2~30年でこの境地になれたらと思う。
今、この修行がきっと役立ってくれるだろうと、信じる。
康次郎
写真:白石康次郎(撮影:CANON EOS KISS デジタルX)