時間調整 LT11:00を12:00にする。
LT12:00 UTC 23:00 日本時間30日08:00
緯度51-17,4S 経度:162-33,4W
天候:O 風:北5kt 気圧:1027hp 気温:13℃ コース:101度 艇速:6kt
昨夜、まったく風が無くなった。
寝ないで操船に当たる。
よく、風がなくなると、休めるのではないかと思う人がいるが、それはまったく違います。
艇速が無く、舵が取れないので、オートパイロットが「ピーピー」とエラーを出す。
たまに吹く微妙な風にあわせなければならない。
とても神経を使う走りだ。
風がなくなると「ジリジリジリジリ・・・・」と、音がしてくる。
これは船内、船外に取り付けてある、風向計の針の音である。
普段は波の音でまったく聞こえない。
風がまったく無くなると、「ジリジリジリジリ・・・」と鳴り出す。
皆さんでたとえるなら、寝たときに時計の針の音が聞こえるようなものだ。
この音が、聞こえてくると、がっくりする。
あまり聞きたくない音だ。
いまだ、風が安定せず、船は走らない。
毎回、主催者から送られてくる、リーダーズボードを開くのが怖い。
そこには各艇のポジションや走りのデータが書いてある。
昨日、ついにベルナールとの差が1000マイルを越した。
前に1000マイルひらき後ろにも1000マイル開いている。
すごいレースになってきた。
まだしばらく、ベルナールとの差は開くだろう。
もう何も言うことは無い。
ごらんの通りでございます。
皆さんに分かり安くたとえるなら、
道がひどく渋滞していて、自分の斜線は一向に進まないのに、隣の斜線はスイスイ車が走っているようだ。
考えてみると、この高気圧は僕にとって完璧なブロックになった。
もう、見事というしかない。
高気圧が南から現れ、最初は30ktを越す向かい風で襲撃し、次は南北に大きく壁のように無風帯を広げる。
しかも、ゆっくりと僕と同じ方向に移動する。
これには、こてんぱんにやられた!
完璧なブロックだった。
感心するしかない。
トニーに、風がなくなったと、連絡すると
「それはいい知らせだ。中心に入ったから、これからは風が吹くよ」
その時、はたと、気づかされた。
「前向き!」
トニーは僕よりも前向きである。
それにいつも冷静な判断をしている。
さすがである。
今は気持ちを整えるのが僕の仕事のようだ。
朝から、バケツとスポンジをもって船のビルジ(水あか)掃除を一所懸命にやる。
これをやると、初心に帰れる。
外で軽く座禅をする。
気持が少し落ち着いた。
康次郎
写真:白石康次郎(撮影:CANON EOS KISS デジタルX)