先日のそちたちの公開録音の後に、乙女企画クロジ☆さんの「きんとと」を見に行ってきました。
いつも、設定やセットが細かく作り込まれて、つい息をするのも忘れてしまうほど夢中になってしまう舞台。
昨日無事に千秋楽を迎えられたそうなので、ネタバレも含みつつ感想を書かせていただきたいと思います。
舞台は昭和初期の娼館。
男性も女性も関係なく、異性はもちろん、同性にも体を売る「いづみ亭」で起こる愛や憎しみのドラマを描いています。
ある日、上司に連れられていづみ亭を訪れた日下は、新婚である事と軍人である事を盾に、店を出ようとします。
しかし帰る際に、萩泉という一番人気の男娼から、プライドを傷つけられる一言を投げつけられます。
怒りながら帰った日下ですが、自分が彼以上に失礼な発言をしたことを反省し、後日お詫びをしに行くことに―――。
ここから、バタバタ・ドロドロの愛憎劇が始まります。
登場人物は全部で13人。
娼館で働く人たち、それを買う人たち、それを嫌う人たち……。
艶やかで少しアダルトなお話ですが、それ以上に一人一人の相手との関わり合い方が切なくなります。
見に行かれた方は、それぞれ好きなキャラクターがいると思いますが…。
私はですね。
泰介です。
いづみ亭の番頭で、にこにことお客様をお迎えし、様々な仕事を担当する彼。
その笑顔の裏には、睦という娼婦を過去傷付けてしまった後ろめたさや、周りへの怯えが含まれていて…。
はっきり言って、目立つポジションではなかったと思います。
それこそ、みんなのサポートという感じで。
でも、睦に対しての不器用で複雑な想いは、偽善であり…純粋であり…きっと本心。
彼は彼なりに、守りたかったんだと思います。
そんな彼の最期は…悲しい。
悲しいままでした。
何も「よかったね」という部分がなかった。
でも、それがよかった。
あのお話で、全員が幸せになるなんて、それこそ嘘。
だから、泰介はあれでよかった。
と、思います。
たくさんの方が見に行った4日間。
たくさんの感想が観劇したみなさんの中にあると思います。
だから、これは私の感想だと思ってください。
たった一人の。
個人的な。
福圓美里さん、松崎亜希子さんを始めとする出演者の皆さん。
素晴らしい舞台を作り上げたスタッフの皆さん。
本当に本当にお疲れさまでした。
次回も、楽しみにしています。
井ノ上奈々