僕らのアルバム「桜咲く街物語」の発売日、3月7日。
その同日に、ゆずさんが「春風」というシングルをリリースされます。
FM山陰にお邪魔していたとき、収録前の楽屋のラジオから突然流れたこの「春風」という曲に、いきものがかりの3人は、それはそれはびっくりしました。
こ、こ、この曲は…!?
もしかしてあの「春風」…!!!
というのも、この「春風」という楽曲。
いきものがかりは高校時代に、地元の駅前の路上ライブで何度となくコピーして、演奏していたのです。
ゆずさんが彗星のごとく音楽シーンに登場したことで、ちまたに路上ミュージシャンがあふれかえっていた1999年。
まさに路上ブーム。
ギターさえ持っていれば、ライブハウスじゃなくても、お金がなくても、路上で演奏していいんだ!
僕らも、まぎれもなく最初は、そんなブームに乗って路上に飛び出した、無邪気な高校生の一組でしかありませんでした。
当時は、オリジナル曲が1曲、2曲しかありませんでした。
だから演奏する曲のほとんどがコピー。
もちろん、ゆずさんの曲もたくさん演奏していました。
そのうちの1曲が「春風」。
実はこの曲、当時は音源化されていなくて、ゆずさんが彼らのラジオ番組のなかで、生演奏だけで披露していたまさに隠れた名曲的な存在でした。
当時の路上ライブに来てくれるお客さんにはゆずファンも多く、そんななかのひとりの女の子が、どこで手に入れたのか、その春風の歌詞カードとコード譜をもってきてぜひ歌って!と頼んできてくれました。
まだ、いきものがかりが山下と水野だけだった頃の話です。
山下がラジオ番組のテープでも聴いたのか、ちょっと記憶が定かではありませんが、なんとか耳コピをして、それを口伝えで水野に教え、路上ライブで演奏しました。
吉岡が加入してからも、彼女にこの歌を教え、3人で演奏しました。
強いメロディと、切ない歌詞が印象的なこの楽曲は、高校時代の僕らの路上ライブのなかではキーマン的な楽曲で、お客さんを集めたいここぞというときには必ず演奏していました。
音源化されていなかったこともあって、ゆずファンの子たちのなかでも知っている人が少なく、当時の僕らは、あたかも自分たちの楽曲かのごとく、堂々と演奏していたような気がします(笑)
とにかく高校時代の路上ライブの思い出のなかでは、欠かせない1曲でした。
そんなゆずさんの隠れた名曲「春風」が、ラジオから流れてきたものだから、本当にびっくりしました。
「も、もしかして、春風をついに音源化したのか!?ど、どういうことなんだろう!」
いろめきたつ3人に、ラジオのDJさんが伝えます。
「お送りしましたのは、ゆずが3月7日にリリースするニューシングル”春風”」
いきもの「うぉーーーっニューシングルってか!!!」
不意によみがえる高校時代の記憶。
無邪気に憧れのアーティストの好きな歌をコピーして、なんにも考えずただ楽しく路上で歌っていたあの頃が浮かびます。
音源化された本物の「春風」は、僕らが歌っていたものとはちょっとメロディが違ったけど(笑)
たぶん、耳コピする際に、間違えて僕らが覚えてしまったのでしょう(笑)
そんなゆずさんの名曲「春風」のリリース日と、僕らの初めてのアルバムのリリース日が重なるというのも、ほんとに恥ずかしいくらい勝手な思い込みだけど、なんだか不思議な縁を感じます。
当時、コピーさせてもらっていた、そして自分たちの音楽心を育ててくれていた、憧れのアーティストさんたちに、胸を張れるように、頑張らなくてはなりません。