仕事用デスクには木製台座の時計用Cリングが置いてあります。常に、そこに鎮座しているのが自分と家族の守り神のような存在である、ブライトリングのクロノグラフ(ストップウォッチ+積算計付きウォッチ)「ナビタイマー」です。この時計は精神的にも肉体的にも厳しかったころ、それを察してくれた漫画家の松本零士氏が譲ってくださった1960年代製のもの。
ブライトリングのクロノグラフは代々、航空パイロットのための計器として作り続けられてきています。闘うときのための時計ともいえるのです。ですから仕事でもなんでも、ここぞという時に装着すると気合が入ります。毎月のように西欧と往復する飛行機内、車で長距離を移動するとき、愛車である12気筒、6.000CCの大型メルセデスを駆るときなどもこの時計を付け、平均時速などを計測したりもします。ベゼルと連携する回転計算尺がすぐれもので、掛け算、割り算から各国通貨との円換算、燃費消費量、生産ラインにおける時間当たりの生産個数などを瞬時に割り出すことができます。同じく愛機であるロレックス「デイトナ」、オメガ「スピードマスター」と並び、普遍的なデザイン性も含めて大好きです。
使うごとに愛着がわき、傷の一つひとつから記憶がよみがえり、秀逸なダイヤルデザインは見飽きることがありません。いい時計とは、こういうものなのだと思います。
さて100%クロノメーター、スイスメイド、最高品質を標榜するブライトリングは、2010年のニューモデルも充実させています。ダイバーズモデルなども、コストをかけて、より魅力的な仕様としながらも価格面を抑えていたり、現在の経済環境下にあっても頼もしく思えます。
新社会人の方、婚約や結婚などのアニバーサリーなどで、一生もの、自分にとっても永世的な守り神として本格的な時計を探している人などはぜひ、注目してほしいスイスのメーカーです。ゴングロマリット化が進行したスイス時計界にあってブライトリングは、ロレックスやパテック フィリップなどと並び、数少ない独立系を貫く一大時計メーカーでもあります。


JAPAN LIMITED 50 pieces
NAVITIMER STRATOS
ナビタイマー・ストラトス
日本限定50本モデル
ケース: 18K Red Gold
防水機能: 3気圧
ストラップ: グレークロコダイル
価格: ¥1,380,000円(税抜)
日本入荷予定:2010年4月~
1952年、航空時代の本格的幕開けと同時に登場したナビタイマー。4つのサブダイヤル備えた、その特別仕様モデルが日本限定でリリースされます。
1952年に発売された初代ナビタイマーは、航空用回転計算尺を腕時計に世界で初めて採用した、画期的なクロノグラフ。
デビュー後すぐに世界的なパイロット協会であるAOPAの公式時計に選定。パイロットのための<腕に装備する計器>として、50年を超える年月にわたり継続して生産されてきました。
いまをさかのぼること30年前。ブライトリングの現会長アーネスト・シュナイダー氏は、1979年にブライトリング家3代目ウィリー・ブライトリングから、経営を託されています。
ブライトリングの歴史と伝統を受け継ぎ、未来に継承することを使命とした彼は、1984年にクロノマットを発表。その翌年、1985年にブランドの歴史を象徴するモデルとして「オールド・ナビタイマー」をリリースし、デビュー以来途切れることない命脈が守られています。
「ナビタイマー・ストラトス」は、その歴史ある「ナビタイマー」の中でも、異例の個性を備えた特別限定モデル。12時位置にカレンダー、3時位置にスモールセコンド、6時位置に3時間積算計、9時位置に10分間積算計を配置しています。
通常のクロノグラフでは見られないこの「10分計」は、フライト時に最も重要とされる離発着時の10分間を正確に把握するためのもの。パイロットのための実用性が、デザイン上の個性になるという、ブライトリングらしいモデルです。ダイヤルカラーには、通常モデルにはない、アンスレートブラックと、ブラックのサブダイヤルを採用。しかもストラップには、ダイヤルと同系色のグレークロコストラップを装着します。
「ナビタイマー・ストラトス」は、このナビタイマー58年の歴史において、これまでにないカラーリングを採用した、日本限定の特別モデル。「4つ目」のナビタイマーを求める日本国内の多くのファンの期待に応えるものとして、わずかに50本だけ製造されます。


表参道ヒルズに隣接する世界最大規模を誇るラルフローレンブティック。その広大な地階にある高級時計専門店「ISHIDA青山表参道」で今夜(2010年3月26日)、「青山表参道グランプリ前夜祭」と題されたイベントが大々的に催されました。



高級時計ブランド「オーデマ・ピゲ」、「グラハム」の新作が展示されるフェアにちなむ「青山表参道グランプリ」(同3月27日〜4月24日)を記念するもので、F1レーサーが練習のために所有する本格的なドライビング・シュミレーターが複数台設置され、参加者らはリアルなレースシーンを体感。現役レースクイーン(D1 GOODYEAR Team)相沢やすかと アンによるDJユニット「DJ Byron BayB」、ダンスの本場ニューヨークのストリートで鍛えられ 映画イケガミやCrystal Kayのミュージックビデオ にも出演し、AKB48の振り付けもしているEmmaと ミュージックステーション(テレビ朝日)/ イツザイ(テレビ東京) / 流派Rテレビ朝日)/ 笑っていいとも(フジTV)などに出演し、ダンス イベントのプロデューサーとしても活躍中の Ryocoが組むホットなダンス・ユニット「Dolly Dot’s」、パーティーオーガナイザーである ecco85を中心としたコスプレDJ 5人組「DJ Ochazuke」らが会場をガンガン盛り上げていきました。参加したのは同店のVIP顧客や、スイスで開催された世界時計博こと「バーゼル・ワールド2010」会場から帰国したばかりのジャーナリストら約500人。




フィンガーフードと共に、パーティーのサポーターでもある、ヴランケン・ジャパンのワイン、サンペレグリノのスパークリングウォーターなどが振る舞われ、招待客たちは音楽やダンスに興じました。同店の経営母体のCEOである石田憲孝氏も、各顧客らと談笑していました。
開始から2時間。夜9時を回るころからピークを迎え、入口からバーカウンター前、ドライビング・シュミレーター前ほか、前に進むことが困難な状況に。時間の経過とともに、仕事を終えドレスアップしてきたアッパー層や外国人たちが集まってきました。
ISHIDA青山表参道
http://media.excite.co.jp/ism/watchshop/10258/



バーゼル・ワールドのメインホールを入り、少し進んだ左手に巨大なブースを構えているのが、「進取の気象」を哲学とし、世界最高の売上高、最高峰の知名度を誇るROLEX(ロレックス)。プレスもリテーラーも引き寄せられ、ブースの入り口付近や広大な周囲に展開されるショーケースには開催期間中、常に人垣ができているほど。
今年、個人的に注目したのは、前作の36mm径から31mmへとサイズダウンした、ダイヤルにフラワーモチーフの入った「オイスターパーペチュアル デイトジャスト」のニューモデル。フラワーモチーフがプリントではなく立体化しており、一般的な日本人女性にも抵抗のないサイズ。前作の36mm径モデルを狙っていて、けれども入荷数が少なく購入できていない、知人のキャリアウーマンたちに現地から電話やメールで伝えたところ、両方ほしいという猛者もおりました。過酷なビジネスシーンを共に闘うことができ、なおかつフローラルデザインのダイヤルに癒されるはずだから、とのこと。昼間、仕事で着けて、そのまま時計を変えずにパーティにも出られるし、ハワイやグアムで過ごすオフタイムで着けることを想像するとワクワクする、そうです。
ほかにも、わずかな光しかない海底では、ルミネッセンス夜光塗料でコーティングされたインデックスと針により、優れた視認性を発揮するダイバーズウォッチ、新星「サブマリーナー」も魅力的。新しい回転ベゼルは、目盛りがプラチナで特殊コーティングされ、傷に強いブラックセラクロム、グリーンダイアルにはグリーンセラクロムが採用されています。そのグリーンダイヤルですが、一般的なPVDとは異なり、真空状態に電気を流して一瞬で蒸着させるロレックス独自の技術が使用されているそうで、澄み切っており、それでいて深みがあり見飽きることがなく、まさにため息もの。ローンチ後にぜひとも、ismで紹介しているような正規時計専門店で実物を見てください。個人的にはこの、ロレックスのコーポレッドカラーでもあるグリーンのダイヤルの新星「サブマリーナー」を狙っています。ホテルの間接照明、リゾート地での太陽光のもと、各種条件下で表情を変えるグリーンダイヤルを眺めてみたいのです。
あらゆるロレックスの時計についてもいえることですが、普遍的なデザイン性は変わらずとも、メカニカル、外層は常に進化してきています。自動車でいうと、愛車でもあるメルセデス・ベンツのSクラスのように。ロレックスのニューモデルのSS(ステンレススティール)製ケースやブレス素材はSUS316Lから、海水はもとより強い薬品などによる浸食を防ぐ904L素材へ。時計の心臓部である、テンプ素材なども進化しています。創業者であるハンス・ウィルスドルフ氏の哲学、「沈黙こそが金」を継承し、派手に喧伝しない点も好感が持てます。
本年もきちんと取材対応を頂いておりますので、順を追って各アイテムを紹介します。まずは新星「エクスプローラー」から。なお国内発売時期、価格は確認でき次第、補足させて頂きます。
TO EACH HIS EVEREST
人類がエベレスト登頂を達成するまでには、多くの試みが成されました。1953 年5 月29 日、初登頂を達成した英雄、エドモンド・ヒラリー卿とテンジン・ノルゲイはロレックス オイスター パーペチュアルを装備していました。多くの探検隊が叶わぬ夢とされながらも達成を追い求め、挑戦への純粋な欲望が原動力となり、数多くの遠征が行われました。
In praise of perseverance
人類の探検における偉業に立ち会ったエクスプローラーは、人々の達成への求めてやまない欲求を反映します。そして、忍耐力、経験、創造力を正確に体現し続け、技術的発展と経験から得た教訓、思考と行動の結びつきを称讃し続けるのです。
The world as a test laboratory
エクスプローラーは、ロレックスと外界との間に常に存在する特別な関係を具体化したものと言えるでしょう。1920 年代後半から、ロレックスは時計を実際の厳しい状況下でテストするため、世界中のさまざまな場所で研究を行っています。このパイオニア精神は、製品開発に大きな影響を与えた数多くのヒマラヤ探検に注がれました。
A 39 mm case
その歴史と独自のアイデンティティに基づき、新しいオイスターパーペチュアルエクスプ
ローラーは、現代においてもその強靭さを体現しています。長年にわたりアイコンとして
築いてきた、均衡のとれたエレガントなラインに新しい躍動感が加わりました。
耐蝕性に優れた904L スチールの塊から造られ、ケースは39 mm に拡大し、印象的な
デザインと快適な着け心地を提供します。
New heights in precision
パーペチュアルローター、パラクロムヒゲゼンマイとパラフレックスショックアブソーバを搭載した機械式自動巻きムーブメントを装備し、また信頼性があり堅固な時計として、さらなる高精度、厳しい状況下での耐久性を誇ります。
【SPEC】
・REFERENCE (CASE / BRACELET): 214270 / 77200
・Case
直径: 39 mm
素材: 904L スチール
ベゼル: スムース
リューズ: トゥインロック
クリスタル: サファイア
防水性能: 100 m(330 フィート)
・Movement
キャリバー: 3132
自動巻: パーペチュアルローター
振動子: 振動数:4 Hz(28,800 振動/ 時)
パラクロムヒゲゼンマイ
パラフレックスショックアブソーバ
精度: スイス公認クロノメーター検査協会(COSC)認定
パワーリザーブ: 約48 時間
・Dial
インデックス: ルミネッセンス夜光塗料
針: ルミネッセンス夜光塗料
Bracelet
素材: 904L スチール
タイプ: オイスター
クラスプ: エクステンションリンク付オイスターロック
(問)
日本ロレックス広報課
電話03-3216-5671
URL:http://www.rolex.com/ja

モーザーは今季、1.000年にわたって動き続けた場合に生じる誤差が、わずか1日というという驚愕ムーンフェイズ(月の干満表示機能)を搭載するニューモデルを発表。18k製のアンクルやガンギ車を装備するモーザー独自の交換可能なエスケープメントはもちろん、ダブルスプリング香箱による最低7日間のパワーリザーブも継承されています。
なお一般的なムーブフェイズ機能付きウォッチは、ベースムーブメントにモジュールを搭載して実現されていますが、本作はムーブメント自体にムーンフェイズ機能が組み込まれるという世界初とされる快挙を成し遂げています。
また、時計を止めてしまった場合の調整も簡単。ご覧のように9時位置のピンボタンで調整します。月相に対応する正確な時刻合わせは通常のようにリュウズで行います。
パテックのも手掛けてきたフルツキガ社製の気品あるダイヤル、パネライほか一流どころを手掛けてきているドンツェヴォーム社製のケースも極美。2010年9月入荷予定。いつ順番が回ってくるか未定ですが、個人的にもオーダーさせてもらおうと考えています。
RG(ローズゴールド)ケース:262万5000円(税込、予価)
PT(プラチナ)ケース:367万5000円(税込、予価)
なおモーザーに関しては、TOPリテーラーリポートと題して、BEST新宿、ISHIDA青山表参道の統括CEO、石田憲孝氏の商談風景も日を改めて取材してきています。石田氏も同作に魅了され、強気の発注をされておられたので、店頭で見られる日を楽しみにしています。
また、モーザーの魅力については、紙媒体では超富裕層向けの「PAVONE」(4月発売号)ほかでも紹介させて頂きます。
世界的な金融不安の渦中にあっても、今季のバーゼル・ワールド2010(SIHH2010も)は、モーザーも含めて魅力的な作品が数多く発表されました。メーカーの威信をかけてニューカマーを開発し、良心価格を提示するといった傾向が多々見られます。

カシオ計算機は、耐衝撃腕時計ことG-SHOCKの最上級シリーズMR-Gの特別仕様モデル「MRG-8100R」(50個限定)を発表。2010年7月に発売される予定。予価57万7.500円。赤のさし色にはルビーが使用されているとのこと。
G-SHOCKと音楽やアートなどとコラボレートして世界各地を回るワールドツアーは今年も開催地を拡大して続行されるという。また、レッドブル・エアレースチーム、F1との提携などもあり、今年もG-SHOCKから目が離せません。

1970年代、ハミルトンは、発光ダイオードにより時刻などを赤色でデジタル表示する画期的な時計「パルサー」を発表。ステータスウォッチとして、各国の権力者や一流ミュージシャンら文化人をも魅了しました。
そして今年、オートマティック・ムーブメントによって発電して、時刻などをデジタル表示する新星「パルサー」を発表しました。
クールなデザイン性の面からも注目を集めると思います。
日本のトップリテーラーでは、BEST新宿、ISHIDA青山表参道の経営母体のCEO、石田憲孝氏も絶賛しており、「国内ローンチ後、すぐに買って着けたい」という点も合致しました。


【オメガより/バーゼル・ワールド2010~はじめに】
バーゼルワールド2010に出展するにあたりオメガは、「伝統の継承」と「クオリティ」という2つのテーマを掲げます。
【オメガからの意思表明】
世界最大規模の時計・宝飾品の見本市であるバーゼルワールドは今年、オメガが24回目のオフィシャルタイムキーパーの責務を果たした2010年バンクーバー冬季オリンピック大会の閉幕とともに開催されます。国際オリンピック委員会(IOC)との提携関係は、オメガの輝かしい歴史の一端であり、昨年9月、IOCとの契約期間が2020年まで延長されるという栄誉をいただきました。
オメガは昨年、アポロ11号のミッションで人類初の月着陸に同行してから40周年を祝いました。今年は、その政治的、技術的、歴史的重要性によって人々の記憶に刻まれているアポロ・ソユーズ・テスト計画から35周年を迎えます。1975年7月17日、スタッフォードとレオーノフの両船長がドッキングハッチで握手を交わし、宇宙開発における国際協力時代が到来しました。このとき二人の腕にはスピードマスターが着けられていました。その後、恒久的な有人宇宙ステーションの建設活動が続けられています。そして、オメガ スピードマスターは今もなお、国際有人宇宙ステーションで任務に就く宇宙飛行士の標準装備品となっています。
オメガとNASAとの関係は、約45年の歴史があります。オメガが初めてオリンピックの公式計時を担当したのは、1932年のことでした。こうした関係は、「クオリティ」と「伝統の継承」に象徴されます。IOCとNASAは、オメガに高度な精度と技術力を求めてきました。そしてオメガは常にそれを上回る製品とサービスを提供してきたのです。
オメガは2010年も引き続き、ブランド不変の特徴である革新的な時計作りに取り組みます。昨年は、オメガ コーアクシャル誕生10周年を迎えることができました。今年もオメガは、独自のコーアクシャル キャリバーを軸に商品展開をしてまいります。

世界一多忙を極める、超人気インダストリデザイナーのマーク・ニューソン。こうした氏がデザインする時計が「アイクポッド」。個人的にも大好きです。
そんな「アイクポッド」がバーゼル・ワールド2010のブースで展示したのが、ご覧のアワーグラス(1時間を計測する砂時計)。熟練職人が1個ずつ、吹いて作るという点もさることながら、本気で欲しいと思えるアイテムです。価格は200万円を超すと予想されます。なんたってマーク・ニューソンのアートですから。
極小のボールベアリングがサラサラと流れ落ちて舞い、さだらかな曲線を描きながら山を作る様子は見飽きることがありません。極上のアート・インテリアとしての価値は計り知れません。関心のない人からは絶句されるでしょうが、このような究極の無駄ともいえるようなものがきっと、大切なのではないでしょうか。
ところが「アイクポッド」の国内代理店であるアイクポッド・ジャパンが、メンテナンスなどの責任を果たしながらも休眠中であり、国内入荷を危ぶんでいたところにビッグニュースが。
アイクポッド・ジャパンを経営してきたノーブル・スタリングの葛西代表と昨夜、バーゼル市のイタリアンレストランで夕食をご一緒させて頂いていた最中に氏が突如、このアワーグラスの取り扱いを決断され、「アイクポッド」の代理店復活を口にしたのです。
ご本人は酔ってましたし、一夜明けて確認したのですが、やはり男に二言はないとのこと。条件面の摘めなど問題は諸々山積でしょうが、万難を排して「アイクポッド」の流通に取り組んで頂きたいと思いました。



前回のシガー繋がりでスモーキングパイプの話を。以前、エキサイトismで、ヨーン・ミッケという独立孤高のスモーキングパイプを製作するアーティストについて書かせて頂きました。
http://media.excite.co.jp/ism/095/04.html
昨日、その作家とボ・ノルド、ラルス・イヴァルソン、イエス・コーノウィッチの4人の作品に絞って販売、欧州の領主ら特別な顧客を抱えるチューリッヒのリテーラーさんと会ってきました。ファミリー経営のブティックはチューリッヒにあるので、ドイツのバンホフ(バーゼル)駅からチンチン電車でスイスのバーゼル国鉄駅に出て、そこからチューリッヒまで、フランスが誇るTVGで往復してきました。西欧諸国にはイギリス、ドイツ、フランス、スイスなどの特急が乗り入れていて、スイス国鉄の窓口でバーゼル/チューリッヒ間のチケットを買った場合、スイス国鉄はもとよりドイツの特急にもTGVにも乗車することができるのです。


そのチューリッヒの喫煙具店は湖畔の時計塔の裏手にあり、このあたりの煙草専門店と同様に、好みの煙草各種を配合まで指定して量り売りしてもらうことができます。ハウスブランドもあり、バージニア単体の銘柄も各種揃い、そのどれもが極上の味わいです。
今回は店主であるサー・ワグナー氏の提案で、エロティック(ヨーン・ミッケ作)というシェイプを吸いながら、100年後も200年後も変わることのない、この西欧の風景、街並みなどについて沈思黙考しよう、ということになりました。小振りで柄の長いものはワグナー氏の愛用品。現代のインダストリアルデザイナー、マーク・ニューソンに通じるかのような、深く豪快かつ繊細さもあり、色気、華、哲学のある、この唯一無の存在であるミッケという作家の世界観を共有できる友人は、世界広といえどもそうはいません。「Mickeか、それ以外か」--。至福の一時を過ごさせて頂きました。


で、バーゼル市に戻り、18歳から現在まで、スモーキングパイプだけの喫煙を楽しんでこられた、独立時計師であるフィリップ・デュフォー氏を訪ねました。氏からは今回、フランスのサンクロードという地で、親子二代にわたってパイプを作り続ける、写真の「ジェノ」を贈って頂きました。「大切に末永く、毎日のように使います」と伝えると、「たくさん使うとパイプは、おいしくなるから」という言葉をもらいました。同じ写真に写っているシガーは、先にお伝えしたパーティで巻いてもらったもの。「ガリバルディ」というスイスの伝統的なパイプ用シャグ煙草は、スイス滞在中の愛飲銘柄でF.デュフォー氏の大好物。


建物から立ち働く人、気温・湿度まで、そっくりそのままキューバのクラブシーンを再現したパーティに参加しました。広大な敷地に、巨大テーマパークを再現してしまうような、いったい何億円かけてくれたのだろうと感じた大規模なパーティの一環です。聞けば1年がかりで用意してくれたとのこと。主催ブランド名や全体像は追ってご紹介します。

建物は古い木造で、天井にはハバナリーフ(葉巻用の超一級葉煙草)が吊され、キューバンビートががんがん流れる中、ダンサーたちによるセクシャルなダンスが展開。カジノもあります。キューバの一級トルセドール(葉巻職人)もきて、くゆらすシガーを目の前で巻いてくれます。
「CUBA(クバ)のシガーは、巻き立ての味が最高。天国の香り」---。
その彼女、モヒートを飲みながら、時にサウンドの波に身をくねらせながらも、正確無比に指先を運んでいきます。休憩時間には、自ら巻いたシガーとモヒートを楽しんでいたのが印象的でした。



初老のアメリカ人男性が、その彼女に、「これだけ
暑いんだ、君は太ももに汗をかいているだろう、葉巻は女性の太ももで巻くんだろう、見せてくれないか」みたいなことをいうと、「そんなことはないわ」と彼女。デスクの上で淡々と指先を動かし続けました。
「高級シガーは女性の太ももで巻かれる」という迷信は、日本だけでなく北米にもあるようです。北米から日本に伝わったのかも知れません。
しかし一級職人の巻き立てシガー。高温多湿の中、キューバのバーテンダーが日常的に現地の人たちのために提供するモヒートを飲みながらくゆらすと、ベルガモットだとかリンデンだとかのフレーバーが幾重にも複雑に立ち上がってきて本当においしかった。