ご当地と呼ぶほど広い地域ではない、より限られた狭い地域に根付いているラーメンを「地ラーメン」と呼びますが、八王子にも「八王子ラーメン」と呼ばれる独自のスタイルをもった地ラーメンがあります。甘めの醤油スープに中細麺、薬味は長ネギでなく玉ネギなのが特徴で、シンプルな構成ながら穏やかな味わいのラーメンです。

　まずご紹介するのは、老舗が幅を利かせる八王子ラーメンでは比較的新参店ながら、健闘が光る「吾衛門」です。こちらのスープは豚骨を主体に煮干し、節類、香味野菜などを使い、豚の腹脂を浮かべて適度なコッテリ感を演出。どの素材も表に出ずタレの甘みが前面に出ていますが、嫌味に感じず後を引く味わいです。麺も小気味良い歯応えで、手抜きのない一杯といえるでしょう。基本の「中華そば」が450円という、比類なきコストパフォーマンスも魅力です。
　もう一軒は、飲むほどにじんわりと美味しさが広がる、貴重な癒し系八王子ラーメンの店「千人同心」です。こちらのスープは八王子ラーメンの特徴である玉ネギに合うよう開発されたスープで、背脂が溶け込んだまろやかな甘さが印象的です。麺をたぐり、スープを啜り、チャーシューを頬張るサイクルが無意識に行われ、すべて同じペースでなくなっていくのは、バランスがとれている何よりの証拠といえるでしょう。八王子ラーメンの店としては珍しく塩味や味噌味も用意しており、スープも調理法もまったく変えるなど手が込んでいます。
　東京都内にありながら、独自のラーメン文化を育んできた八王子。この冬、日帰りで小さなラーメン旅行を楽しみたい方にお薦めです。

【中華そば吾衛門】
住所　東京都八王子市千人町3-3-3
営業　11:30～20:00（スープ切れ終了あり）
定休　日曜、祝日
メニュー　中華そば450円（写真）、チャーシューメン700円

【らーめん食堂　千人同心】
住所　東京都八王子市堀之内2-29-3
営業　11:30～15:00（土日祝～16:00）
定休　月曜
メニュー　醤油らーめん600円（写真）、塩らーめん700円　ほか