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千葉のラーメン

 あまり知られていませんが、千葉県にはとても個性的なご当地ラーメンがあります。南房総の富津市を中心に数多く点在する“竹岡式”と呼ばれるラーメンで、元祖は「梅乃家」という店だと言われています。なんとこのラーメンは豚骨や鶏ガラなどを煮込んだスープは一切使わず、チャーシューを煮た醤油をお湯で割る“お湯割りラーメン”なのです。スープはまるで醤油そのままのような真っ黒な色合いですが、見た目ほどしょっぱさはなく、薬味の玉ネギの甘みも加わって意外に食べやすい味わいです。さらに驚くべき事に麺は乾麺で、小鍋で乾麺を茹でたら、その茹で汁ごとタレの入った丼に注ぐという、まるでインスタントラーメンのような作り方なのです。最近の人気ラーメンなどと比べるとやはり古さを感じてしまいますが、漁港の近くの飾り気のない店内で地元の漁師さん達に囲まれながら食べると、この素朴な味が何ともたまらない味に感じられるのです。やはり食べ物というのは味だけでなく、食べる場所、誰と一緒に食べるのかなどメンタルな部分も大きく影響するのだとつくづく思います。
 こうした歴史のあるご当地ラーメンがある一方、ニューウェーブ系のラーメン店が数多く存在するのも千葉の魅力です。松戸市にある「嘉夢蔵」は幅3センチ近くもある平麺を圧力鍋で茹でる個性溢れるお店。無添加にこだわったスープは蕎麦やうどんを想起させる和風の味わいで、飲むほどに旨みがじんわりと広がってきます。市川市の「菜」は豚骨ラーメンがメインのお店ですが、丸鶏と魚介を使った澄んだ塩ラーメンも定評があります。鶏の円い旨味と上品なカツオ風味が重なり合ったスープは実に奥行きのある味わいです。
千葉のラーメン_f0040088_206650.jpg
↑嘉夢蔵「太平麺」800円

 こうした個性的なニューウェーブ系のラーメン店の中で、欠かすことの出来ない存在が「奥村屋」です。2000年に松戸駅の近くにオープンしたこのお店は、開店当初は中野の名店「青葉」のラーメンに似た味で、現在全国に増えている青葉のラーメンを意識した“青葉インスパイア系”の先駆け的なお店でした。しかし日が経つにつれて独自の方向性に進み、青葉とは全く異なるオリジナルの味を完成させました。ご主人の奥村氏は妥協を知らない職人で、常により美味しいラーメンを作ろうと励んでおり、一年も間を空けて行くと全く違う味に変わっていたりして? 評論家という立場の僕としては、調査・研究・取材を怠ってはいけないと、ヒヤリとさせられるお店でもありました。
 ところがご主人が大病を患って04年に閉店を余儀なくされます。このとき、ご主人は生死の間をさまようほどの病状でしたが、奇跡的に回復し05年に柏の自宅の一部を店舗に改築して復活を果たしました。病み上がりの身体に無理がない程度に、細々と営業するのが通常だと思うのですが、こちらのご主人は復活を待っていてくれたお客さんの思いに応えようと、自分の身体を削るようにしてラーメン作りに打ち込みました。スープの味を向上すべく研究するのはもちろん、以前は製麺所から仕入れていた麺も、自家製に切り替えて理想の麺を追い求めました。麺を自家製するのがどれくらい労力がかかって、病み上がりの身体に負担がかかるかは、想像に難くないでしょう。こうしてラーメンに全て注ぎ込んできたご主人ですが、再び医師から余命わずかとの宣告を受け、現在は自宅で療養されているそうです。ご主人は残りわずかな時間を、これまでラーメンを通じて知り合った人達と会って過ごしたいと願っています。本当に心の底からラーメンが好きだったのでしょう。奥村屋のラーメンが好きだった人、奥村屋のご主人と親睦があった方、是非奥村さんを励ましに行って下さい。

★6月6日追記
たいへん残念ながら、奥村さんは6月3日に永眠されました。ラーメンにささげたその人生は、多くの人にたいへんな感動と勇気を与えてくださいました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。

奥村さんの現在の心情、連絡方法などは、かつて奥村屋さんと取り引きのあった製麺所「浅草開化楼」の営業の方のブログに詳細に記されています。
【浅草開化楼営業・不死鳥カラスのブログ】
http://w960.blog13.fc2.com/
ここには奥村さんの現在の写真も載っていますが、余命わずかと宣告された方とは思えない、晴れやかな笑顔を見せてくれています。ラーメンを愛し、千葉のラーメンを牽引し、病と闘って最後までラーメンと向き合った凄い方です。一度は病に打ち勝ったのですから、きっとまた復活してくれるはずです。再び奥村さんがラーメンを作れるよう、足を運ぶのでも、手紙を送るのでも構いません。奥村さんに励ましの声をかけて下さい。どうかよろしくお願いします。
千葉のラーメン_f0040088_2064962.jpg
↑奥村さんのラーメン

【梅乃家】 (うめのや)
住所:千葉県富津市竹岡401
営業:8:30頃~19:00頃
定休:火休、ほか月1回不定休

【麺屋 嘉夢蔵】 (かむぞう)
住所:千葉県松戸市捻台63-19
営業:17:30~20:30(夜のみ)、土日祝11:45~15:30(昼のみ)
定休:火水休
メニュー 太平つけ麺900円、太つけ麺900円、太平卵麺800円、太平麺800円ほか

【菜】
住所:千葉県市川市南八幡2-4-17
営業:11:00~17:00、18:00~20:00(スープ切れまで)
定休:月、第1・3火休
メニュー:濃口醤油、塩、醤油、豚骨(濃口醤油)、豚骨(塩)、豚骨(醤油) 各650円、潮菜めん(つけめん)850円

【中華そば 奥村屋】 (千葉県柏市豊住)
by ism-ramen | 2006-05-23 20:09
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