・Mgr 菊池
楽器などと一緒にツアー車に積み込まれる衣装ケースです。

ステージのデザイン画が出来上がった時点で葉加瀬本人とスタイリストの広瀬さんとで打合せが始まります。
葉加瀬本人の衣装は、日頃から「お洒落」と言われているだけあって打合せが始まった時点で本人の中では「あのメーカーの銀座店に有るシャツ」とか「青山には無かったけど有楽町店には有るらしいジャケット」とか具体的に明確なイメージが見えています。
メンバー全員分の衣装も葉加瀬本人のイメージからスタートします。
「マチェックはネクタイ有りのカッチリ」とか「とーるはベストと帽子ね」とか「マサは着崩した感じ」とか結構、具体的なイメージを早い段階でもっています。
だとすれば、スタイリストさんの必要性は?
と思うかも知れませんが、トンでもなく重要です。居ないと困ります。
ステージ衣装は基本的に同じ物を2着ずつ用意します。
クリーニングが連日続く公演に間に合わない、特殊加工素材は受けてくれない、など44公演もあれば、洗えない、型が崩れる、縮んでしまう、なんて事も当たり前のように起こります。
葉加瀬本人のシャツは終演時には軽く絞れば汗が滴り落ちる状態です。
着続ける事で傷み、洗って傷み、照明の熱で傷み、汗でぬれて傷み、、、、
ツアー中は「明日の公演地はあのホテルが有るから洗おう」とか「次ぎの公演まで4日有るから宅急便で先に送って」とか「裏返して濡れたオシボリで叩いて乾いたタオルで拭き取って」とか、同じ吊しの既製服の場合でも一般の人に買われるのとステージ衣装になるのとでは全く違う運命を歩んでしまうワケで、寿命がとても短い消耗品扱いとなってしまうワケです。

去年の葉加瀬ツアー衣装です。スタートは全く同じサイズだったのに、、、
スタイリストさんは葉加瀬のイメージの枠から外れる事無く丈夫でステキなコストパフォーマンスの高い衣装を探さなくてはいけないワケで、なにより大変なのは2着探すのが至難の業です。
コレだ!ってのが見つかっても「全く同じ物がもう一着」がルールなので、シャツが見つからず襟の形が合わないのでジャケットを探し直す、なんて事もあり時には葉加瀬のイメージを覆しつつも「なるほどね」と言わせる提案をしなければならないワケです。スタイリストさんはホント、居ないと困ります。
そんな衣装にまつわるとんでもない出来事。
先日の長崎公演、1部の途中からステージに登場する柏木さんは何故かいつもより「のんびりゆっくり」いつまで経っても準備しません。やっと着替え始めたと思ったら出番前の曲の後奏が聞こえてきました。
衣装ケースに掛かった黒いジャケットを片手に舞台袖に猛ダッシュ!!ギリギリ間一髪セーフでしたが、、、、、、、
すました顔で登場した柏木さんが着ていたのは葉加瀬の予備ジャケット。
ステージに出て直ぐ気付いた葉加瀬は必死に笑いを堪えながらシリアスな曲を演奏するのでした。袖は掌まで隠れ、裾はフレアスカートのように広がって、動きに合わせて衣装が「ぶるんブルン」と踊ります。
楽屋に戻った葉加瀬は開口一番「柏木!一世風靡セピアに入ったの?」柏木さんは全く気付いておらず「あっ、チーフがいつもと違う!」ですって。
もー!広瀬さんの苦労が台無しです。

今日も本番前に「柏木!今日もオレのジャケット貸そうか?」って言われてました。