雨を見たかい?

今年の立秋は8月7日。
「暦の上では」もうそこまで秋が来ています。

みなさんお元気ですか?
編集長Kです。

今日は音楽のよもやま話。



僕の好きな斉藤和義のデビュー曲は
『僕の見たビートルズはTVの中』という。

斉藤和義は僕よりひと世代若いけれど、
ビートルズが解散したのは僕が小学生の頃で、
僕も本当の意味でのビートルズ体験をしていない。

ともだちとLP(古いなぁ…)を貸し合って
むさぼるように彼らの音楽を聴いたのは、
中学生になってからだ。

ちょうどその頃、
中高生の間では、世界中のラジオの短波放送をエアチェックする
BCLブームというのがあって(なんのことだか、ですよね?)、
僕はこづかいを貯めて買った
ソニーの「スカイセンサー」というラジオを
勉強机に置いて大事にしていた。

が、ロシア語はおろか英語だってろくにわからないので、
結局は日本の深夜放送を聴きながら、
中間テストや期末テストの「一夜漬け」をしていたのだけれども、
その時代にラジオから流れていた全米や全英のヒットチャート曲は、
今でも耳にしみついている。

たとえば、僕が中学2年生、
1975年はこんな年だ。

カーペンターズのカレン・カーペンターが、
『オンリー・イエスタデイ』を歌い、
イーグルスの『デスペラード』をカバーしていた。

フェイセズを解散してソロになったロッド・スチュワートが
『セイリング』をヒットさせ、
カントリーガールだったオリビア・ニュートンジョンが、
『そよ風の誘惑』で一躍メジャーになった。
(その後日本でも流行った「メロウ」という言葉を
僕はこの曲で初めて知った。)

アルバム『バンド・オン・ザ・ラン』の大ヒットの勢いのまま、
ポール・マッカートニー&ウイングスが
12ヵ国64公演という空前の世界ツアーに出ていた。
(このときかなわなかった日本公演が再度セッティングされ、
ようやく来日したポールが、麻薬不法所持で逮捕されて11日間拘留、
公演キャンセルの憂き目に合うのは、それから5年後の1980年のことだ。)

まだティーンエイジャーだったマイケルのいたジャクソン5は、
デビュー当時の人気に翳りが見えはじめ、
この年モータウンからCBSに移籍したがヒット曲に恵まれず、
代わりに全英・全米のヒットチャートを席捲していたのは、
タータンチェックの衣装に身を包んだ
イギリスの可愛い男の子のグループ、ベイシティ・ローラズ(!)だった。

僕の同級生の女の子たち、ビートルズを知らない彼女たちを熱狂させていた大ヒット曲
『サタデー・ナイト』のサビはこんなだ。

S・A・T・U・R・D・A・Y Night !
S・A・T・U・R・D・A・Y Night !
エス・エー・ティー・ユー・アール・ディー・エー・ワイ、ナイト!

英単語のテストで、「月曜日」から「金曜日」まで全部間違うような子も
この曲のおかげで「土曜日」だけは正解が書けた。
嘘のような本当の話だ。



i-TuneやYou Tubeが普及して、
こんな40年近くも前の曲が、
あっけなくダウンロードできたり、
当時のライブ映像やPVに、
(それなりに画質の悪いものもあるけれど)
思いがけず出合ったりするようになった。

そういうものを見聞きしていると、
やはり心のどこかが波立つことがある。

あの頃に戻りたいとは思わない。

けれど、スガシカオの歌詞のように、
ふと、「あの頃の未来に 僕らは立っているのかな」と
思うことがある。



『Have You Ever Seen The Rain ?』は、
CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイバル)のヒット曲のひとつで
邦題を『雨を見たかい?』という。

リード・ボーカルのジョン・フォガティが、
言葉を放り出すように歌うこの曲は、
1971年に発表され、カバーバージョンもいろいろある。

最近では(といっても数年前ですが)、
日本でもラブ・サイケデリコがアルバムに収めていたし、
アメリカの有名なオーディション番組
『アメリカン・アイドル』の前々シーズンでは、
優勝したフィリップ・フィリップスが、
年老いたジョン・フォガティといっしょに
この曲を歌っているのを観た。

I Want To Know , Have You Ever Seen The Rain Comin' down On a Sunny Day ?

「晴れた空から降ってくる雨を見たことがあるかい?」とリフレインする
この歌詞は、発表当時もっぱら、
泥沼化するベトナム戦争への反戦メッセージと目された。

この「雨」は、米軍の爆撃機から大量投下される「ナパーム弾」のことだ、
というのがその読解の根拠だった。

後年、かつてのバンドメンバーによって俗説は否定され、
この曲は、当時すでに不協和音が高まっていたバンドの、
避けがたい解散の危機を歌ったものだったことが語られている。

先日、やはりYou Tubeで、
さっきも名前を挙げたロッド・スチュワートが
この曲をカバーしたライブ仕立てのPVを見つけた。

アコースティック・ギターのストロークを前面に立てたアレンジには、
オリジナルへのリスペクトが感じられたし、
すっかり中年太り(老年、かな?)になったロッドの歌いまわしは、
どこかあっけらかんとしていて、
それはそれで心地よかった。
(カバーアルバム『グレイト・ロック・クラシックス』2006年)

この曲の歌詞を、かなり乱暴にだけれど、
僕が訳すと、こうなる。

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『雨を見たかい?』

 いつか誰かが言ってたっけ
 嵐の前の静けさには
 時に嵐のことを忘れそうになるって

 やがて穏やかなふりをした青空から
 思いがけない雨は落ちてくるんだ
 切ないほどキラキラ輝きながらね

 君は 見たことがあるかな?
 あるなら 聞いときたかったよ
 晴れた空から降ってくる
 この雨の話をさ

 今に始まったことじゃない
 ここんとこの僕ときたら
 ずっと土砂降りにあってたみたいなもんさ

 もうなんにも言わないよ
 流されるように往く毎日を
 結局僕は止められないから

 君は 見たことがあるかな?
 あるなら 聞いときたかったよ
 晴れた空から降ってくる
 この雨の話をさ

 ねぇ……

 君は 見たことがあったんだろ?
 だから 僕に言わずにいたんだ
 それがひとりぼっちで浴びる雨なんだってことを



さて、この編集部ブログに、
編集長Kとして好きなことを書くのは
今日が最後です。

私ごと、会社ごとですが、
明日の辞令をもって、編集長職を離れることになりました。

またあらためてご案内もしますが、
このGrazia公式サイトも、
立秋を待たず、来週8月6日をもってクローズとなります。

長い間ありがとうございました。

みなさん、お元気で。
by grazia_t_edit | 2013-07-31 15:47