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竹澤哲のWorld Cup Report 04 : シューマンの生まれた街

 原稿書きのためにホテルに籠もっている。そのために選んだ場所は、ツヴィッカウという、ライプツィヒから70キロほど離れたところ。Zwickauと書くが、普段ラテン系の言葉ばかりに接している人間にしてみると、どうしても読めない。恥ずかしい話だが、ホテルに着いたとき、フロントのお兄さんに、「どのように発音するのですか」と尋ねてしまった。親切にゆっくりと言ってくれたけど、僕の耳にはどうしても「ツゥイコウ」としか聞こえなかった。
 原稿の合間に街を散歩してみて驚いた。小さな街だとはわかっていたが、人が明らかに少ない。そう感じるのも、これまでケルン、フランクフルトといった都会ばかりを、しかもワールドカップで盛り上がる人々の中を回ってきたせいだろうか。
 それにしても静かだ。多少にぎやかな商店街を歩いても、それなりに人とは行き交うのだが、やはりとても静かなのだ。車はシャットアウトされているが、それだけのせいではないようだ。音楽もなく、大声を出してしゃべる人もいない。雑音が一切聞こえてこない。この地が旧東独であったということが、やはり関係しているのだろうか。歩いている人々の服装にしても、着飾った人も、派手な色の服を着た人もまず見かけない。街並みは整然として落ち着いている。ドイツ風の家屋が建ち並ぶ中心から少し外れたところには社会主義国家でよく見られる団地もあった。
 市庁舎の側にはシューマンの銅像があった。シューマンの生誕地であるということも、その時初めて気がついた。シューマンの楽譜をショーウインドに飾ったCD屋さんなどもその後で目にした。
 町中でおもしろいものを見つけた。東独時代に盛んに生産されていたトラバントという車のオブジェだった。あとで調べて分かったのだが、第二次世界大戦前にはホルヒという高級車を生産していたメーカーがツヴィッカウにあった。大戦後にはその会社はなくなり、代わりに小型乗用車トラバントがこの地で生産されるようになった。しかしベルリンの壁崩壊後には、性能的にも前時代的なこの車は消え去った。現在、ドイツ国内では見かけることはない。
 東独時代の40年間に思いを馳せた。秘密警察が存在し、人々は常に監視されていた。そんな抑圧された時代はすでにひと昔前の話であるはずだ。しかし、この街にはワールドカップの盛り上がりがほとんど感じられない。よく言えば、お祭り騒ぎに染まらず落ち着きを保っているともいえるかもしれない。それにしてもドイツが統一されてからすでに15年以上も経っているのに、まさか冷戦時代を想像させられるとは思ってもいなかった。ツヴィッカウにいるとワールドカップの熱気は別世界のことのようである。
(6月14日ツヴィッカウ)

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by ginga-movie | 2006-06-17 08:35 | 竹澤哲のワールドカップコラム | Trackback
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[GINGA / ジンガ]とは?

ポルトガル語で揺れるという意味があり、狭義では、フットボールにおけるフェイント時の足さばきのこと。あるいはカポエイラの基本動作を言います。広義では、ブラジル人特有のしなやかでリズム感のある身体性そのものから、心の拠り所としての象徴的な言葉として、ブラジルではごく一般的に使用されています。
「遊び心のあるサッカーは、プレイを楽しまないと出来ない」ロビーニョは映画『GiNGA』の中で、そう語ります。それは彼のみならず、ロナウジーニョのあの楽しく創造性豊かなプレイからも容易に感じることができるでしょう。そのすべての源は、ブラジル人は「GINGA」を持っている、という事実に尽きるのです。

映画『GiNGA』公式サイト
www.ginga-cinema.jp
表参道ヒルズに、今話題のポッドキャストを自由に楽しめる『Podcast STUDIO』オープン(3/13〜3/26)
KTa★brasil(ケイタブラジル)
STUDIO APARTMENT、KALEIDOSCOPIOをはじめ数々のレコーディングにパーカッションで参加。サンバの本場、ブラジル仕込の打楽器奏者/MC/DJ。渋谷Organ barのLa Verdad、渋谷rootsでのSAMBA NOVAでのレギュラーをはじめ、日本各地でのライブ・DJ、一度そのGINGAを体験すべし!
●毎日更新! KTa☆brasilブログ


出演:ロビーニョ、ファルカン、ウェスクレイ、ロマリーニョ、他
監督・脚本:ハンク・レヴィン、マルセロ・マシャード、トシャ・アルヴェス プロデューサー:フェルナンド・メイレレス(『シティ・オブ・ゴッド』)、ハンク・レヴィン
音楽:EDSON X、BLACK GERO グラフィティアート:オス・ジェミオス 製作: Nike Production and Widen + Kennedy Entertainment 制作: O2 Films
配給:レントラックジャパン、キネティック、コムストック オーガニゼーション
宣伝協力:プチグラパブリッシング 協力:ナイキジャパン 後援:ブラジル大使館

原題: GiNGA The soul of brasilian football
2005年 / ビスタ / 78分43秒 / ブラジル / カラー / 35ミリ
Copyright 2005 by Nike Inc, All rights reserved.

映画『GiNGA』公式ブログ
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