2015年 11月 16日
成年後見制度を安心して使うためには?
マイアドバイザー®jp登録ファイナンシャルプランナーの浅川陽子です。
認知症や知的障害などで判断能力が不十分な場合に、家族や弁護士等が後見人として本人に代わって財産を管理したり、契約などを行う制度が「成年後見制度」です。「成年後見制度」には、下の表のように、「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。法定後見の最近の利用状況を見てみると、平成26年1~12月の1年間で、家庭裁判所への後見人の申立ては34,373件あり、申し立て理由の1位は、「預貯金の管理」(28,358件)、2位が「介護保険契約・施設入居契約」(12,237件)、その他には「身上監護」(7,499件)、「不動産の処分」(6,387件)、「相続手続き」(5,490件)、「保険金の受取」(2,735件)があります。
※ 財産管理・・・日常生活・医療・介護等にかかったお金を本人の財産から支払い、定期的に裁判所へ報告
身上監護・・・生活状況を見守り、住居又は施設の確保(そのための契約)や診療・介護・福祉サービス等の利用契約を
結ぶ
<後見人の着服問題>
弁護士が、後見人として管理していた認知症の方の預金を着服していたという事件がよく報道されていますが、平成26年に弁護士、司法書士、行政書士の専門職による着服の被害額は5億6,000万円に上り、この10年間で最悪だったそうです。
後見人の着服を防止するための方法として、平成24年2月には、「後見制度支援信託」という制度もスタートしています。当面必要としない大口資金を家庭裁判所の指示により、信託銀行が管理、低リスクな資産で運用し、まとまった資金を必要に応じて引き出す場合はその都度、家庭裁判所の指示を受けるというものです。平成25年の1年間で、契約を締結した人は532人(平均信託財産額は約3,700万円)、平成26年では2,754人(未成年後見を含む)で、平均信託金額は約3,600万円と、利用者は着実に増えています。
別の策としては、後見人を監督する「監督人」の選任があります。もともと、専門職以外の人が後見人となった場合など、必要に応じて「監督人」をつけることがあったそうですが、弁護士等の専門家が後見人になった場合でも、管理する財産額が多い場合は、この「監督人」を選任することがあるようで、最近、東京の家庭裁判所では、被後見人の金融資産額がある一定以上の場合、「後見制度支援信託」を使うか、「後見監督人」を選任することになっているそうです。
2012年の厚生労働省の調査で、65歳以上の認知症の方は約462万人、2025年には、65歳以上の認知症の方は700万人に上ると推定されています。本来、認知症の方が安心して生活を送るための制度が「成年後見制度」ですが、この制度を安心して利用できる環境を整えていかなければ、「成年後見制度」の普及にも大きく影響するといえるでしょう。