2011年 06月 30日
A4一枚の法則
ファイナンシャルプランナーの杉山 明です。
私が最初に就職した組織は陸上自衛隊でした。防衛大学校という特殊な学校を卒業した関係上、就職先は、陸・海・空のいずれかの自衛隊と決まっていたのです。さて、防衛大学校を卒業すると、私たちは、福岡県の久留米にある陸上自衛隊の幹部候補生学校というところに赴任しました。
防衛大学校がいくら特殊といっても、防衛大学校は、自衛隊の部隊というより、一般の大学により似通っています。選考も、電気工学や国際関係論など一般の大学に設置されているものと変わりありません。だから、実戦部隊に配属される前に、いずれの自衛隊でも、実戦部隊でやっていけるように教育されるわけです。
さて、この幹部候補生学校で、私たちの区隊を担当してくれた教官は、いわゆるたたき上げの教官でした。一般の資格で自衛隊に入隊し、そして、勤務を行いながら内部の選抜試験に合格して幹部になったという苦労人です。この教官に私はたくさんのことを教えていただきました。幹部候補生学校を卒業するとき、教官は自分の教えをまとめたものを私たち一人ひとりに渡してくれました。きっと、長年かけて培ってきたノウハウを私たちに分け与えてくれたのだと思います。
その教えの中に、「言いたいことはA4一枚にまとめろ」というものがありました。部隊に行って小隊長になったとき、中隊長や大隊長に何か伝えたいときはA4一枚でなければ読んでもらえないというのです。部下から見て何か伝えたいと思っても、あなたの上司のところには、あなたと同じような部下から同じような要望が上がってくる。そのため、忙しい上司は、どんなに分厚い企画書を用意しても、一番上の一枚しか見てくれない。だから、何か通したいと思う企画があるときは、A4一枚、つまり、企画書のカバーだけで十分ということを説明してくれました。
その教えは、数十年経った、いまでも守っています。陸上自衛隊は遠い過去に退職し、保険会社、投資信託委託会社、そして、独立と就業の形態は変わりましたが、A4一枚の法則はどの世界においても通用するものでした。