格闘ゲームの金字塔を打ち立てた『キング・オブ・ファイターズ』。多くの格闘ゲーマーを虜にし、ファイティングゲームは国境を問わず、世界中にファンがいる。その世界をまたにかけ、奇跡の実写映画化となった。 今回、映画「ザ・キング・オブ・ファイターズ」の吹き替えを担当した杉田智和と、ゲームから続投の小清水亜美が本作の魅力を語ってくれた。 ――まずは、今回ふたりが演じられたキャラクターの映画版ならではの魅力や特徴をお願いします。 杉田:格闘ゲームの映画化ということで、古きは「ストリート・ファイター」「鉄拳」「レジェンド・オブ・ジュンリー」と、色々ありましたが、どうやってもゲームと実写を切り離して楽しむということはできません。なので、いかに融合した部分を楽しむかというところですね。 演じる側としては、今回、原作付きの吹き替えという形で参加しますので、芝居の答えは草薙京演じた「ショーンファリス」さんの芝居にある程度、答えが出ているので、そこを基に吹き替えとして組み立てる、という形になると思います。自分のできることと言えば、海外音声として完成した芝居をどうやって日本語に置き換えて伝えるか、というところにあると思います。 あとはいかに「King of Fighters」らしさを失わずに内容に臨むか。何気ない挨拶から掛け声ひとつに至るまで基となった格闘ゲームの良さっていうのを無くさないようにするにはそこへの努力だと思います。野中政宏さんが演じるゲーム版の草薙京のしゃべり癖を意識したり、ドラマCDを聞き返したりして、あまりアニメやゲームの芝居ではやらないような努力をあえてしました。 小清水:今回実写ということで、二次元のキャラクターを演じる中で“もしもそういう世界がリアルであったとしたら”というところでは、とてもよく出来ているなと思いました。マギーさんが演じているのもあるせいか、ゲーム版よりよりアダルトな魅力が増えていると感じました。ゲーム版のキャストと同じだということで私がお呼ばれしたんですけど、アフレコの際も、不知火舞というキャラクターの声も気にしつつ、芝居の面ではマギーさんに合わせて大人っぽくできる所はちょっとアダルティにセクシーに、意識しながら演じさせていただきました。ストーリーとしては、各所にコメディシーンみたいなものが盛り込まれているんですが、そういったところで、すごく見やすくなっている気がします。もちろんゲームとは違う所も多々あるんですけど、そういったところもこういうコメディシーンのおかげでより観やすさが増しているんじゃないかな、と思います。「King of Fighters」というタイトルは付いているものの、共通点を探しても良いし、全くの別物として見ても楽しめる作品だと感じています。 ――実写の吹き替えならではの苦労ややりがい、特徴などはありますか? 杉田:台本の日本語訳の解釈だと思います。自分でも原音を聞きながら演じる形になるので、元の英語と、脚本家の方の書いた翻訳の日本語のニュアンスが個人的には合う・合わないがありました。自分でも英語を聞きながら「何でここでこれをいうんだろう?」とか「直訳過ぎるからもうちょっといった方が良いのかな?」「いや、でも直訳じゃないと逆に意味が無いのか?」と、リアルタイムでそういったせめぎ合いが常にあります。 ――アニメやテレビ番組のナレーションの仕事に比べて難しい? 杉田:原本があるってことですもんね。そこを聞きながら演じるので、そこは通常のアニメーションとは違う所ですよね。でも映画の吹きかえって基本的に直訳じゃないですか、だから吹き替えと言うのはそういうもので、変に解釈しすぎちゃうと良くないのかな、とか。 ――アフレコの現場で台詞についていろいろと音響監督さんと相談して、アレンジしていくこともあるんですか? 杉田:かなりあると思いますよ。あとは「KOF」の原作に準拠した訳にしたほうが、意味が通ることもあるんです。「ルガールが目指しているものはKing of Fightersだ」というセリフの中の“King of Fighters”っていうのは大会名なので「ルガールが目指しているものはKing of Fightersの頂点に立つことだ」って言う方が合う。でもルガールは主催者だから、主催者が頂点に立つって変じゃない?みたいに、日本語にすると少しおかしい所があるんです。 ――お二人ともゲームが好きだったり、他のタイトルを演じられたりしていることが良く作用したってことはありますよね。 杉田:だから難しいんですよ。向こう(英語)の音声で完成しているから。そこを曲げることが出来ないんですよね。あっちが公用語で言っているわけだから、こっちがどんなに正しいこと言っても覆らないんですよ。やれることといったら、役の範囲内での修正くらいしかできないんです。 ――小清水さんは?小清水:杉田さんのお話していた以外だと、アニメでも洋画でも家でVチェックを行なうんですけど、アニメと違って洋画の場合は音声がもう入っているわけじゃないですか。そこで問題なのが、女性が何人かいて、いっぺんにしゃべっているんですけど、顔は映って無い、みたいなことがあるんです。自分の役の人のセリフを拾う作業が難しかったりして、そういう部分で手間取ることは多いですね。アニメの場合は「この人がここで喋ってください」みたいな指示が出たりするので、そういった難しさはあるな、と感じています。もちろんそれは家で消化するものなので、現場では見せないようにするんですけどね。 ただ、よりやっていて楽しいと思えるところもたくさんあります。中でも作品が出来上がった状態で声を当てることが出来るので、今回の場合だと不知火舞を演じられたマギー・Qさんがとても表情豊かに芝居をしてくださっていて、背景や奥行きなんかがわかっている状態でお芝居が出来るっていうのは本当に楽しいなって思います。アニメだと絵が無い状態で声を当てることも多いので、そういう意味では洋画の映像がリアル見えてる状態で声をつけるっていうのはまた違ったやりがいがあるなっていうのはありますね。 あとはマギーさんが喋ってらっしゃる芝居を耳で聞きながらやっていたときに、マギーさんの持っている芝居とかニュアンスっていうのも日本語のセリフにうまいことのせられるといいです。吹き替えるという作業は自分にしか出来ない作業なのでそこはなるべく汲んでいけたらいいな、というのをいつも心がけながら洋画のアフレコにはのぞませていただいています。今回はより特殊だったので迷ったところもありましたが、ゲームの「不知火舞」があっての私がキャスティングされたということで、遠くなりすぎても良くないんだろうしっていうところで、私のアフレコに取り組む形としてはちょっと新しかったなって思います。 ――今回自身がプレイしたこともって思い入れもあると思いますし、世界的に有名なタイトルということでプレッシャーは感じましたか? 杉田:ゲームのボイスキャストである草薙京役・野中政宏さんへの強い尊敬の意があるので、そこは崩してはいけないという想いはありました。あとは仕事として関わる時にいつも自分がやっているのは「好きだ」という気持ちや「お客さんとしての楽しみ」という見かたは封印するということです。吹き替えをする立場として芝居をして、それが終わってから楽しむ場に戻ろうと思っています。自分の中ではまだ「仕事をしている最中」なので、楽しむことはもう少し後になると思います。 ――楽しむのはこれから?杉田:近年声優に求められるものとしては、吹き替えをしてそれで終わりじゃないんですよ。このように舞台挨拶に出て「作品の魅力は? 見所は? 伝えたいことは?」と聞かれたときに「何故ショーンさんが来ないんでしょうか?」という答えは、当然、誰も求めていないと思います。そのあたりの「芝居はしているけど本人ではない」というせめぎ合いをどう表現するのか。本来ならここに作品の魅力とか概要について説明する宣伝の方がいるはずなんですけど、たいていの作品ではいないので、全部役者の口を通して何かを伝えるっていうのが当たり前になってきている。だったら、そこも含めての芝居、演技プランというところも考えなくてはいけないのかな。そうなると楽しむことも出来ないはずですから。 ――なるほど。では小清水さん。現場で杉田さんからアドバイスをいただいたりすることはありました? 小清水:実はアフレコのとき私は抜き録りだったので、現場で顔を合わせたことは無かったんですけど、ただ、杉田さんたちが収録を終えたあとの収録だったので、吹き替えたものを聞かせていただきながらアフレコさせていただき、とっても楽しかったし、やりやすかったです。 ――最後に、今回の作品でお二人が一番印象に残ったシーンをお願いします。 杉田:Mr.ビックが丸刈りのサングラスじゃないところです。ゲームの絵を参考にして見てみると、ずいぶん格好良くなったねって言う感じ(笑)。一応「毛皮のコート」を羽織って、アイデンティティは守っているんですが(笑)。あと、吹き替えが僕の後輩の小野友樹くんで、とても格好良いので、みなさん小野君の素敵な声を楽しんでください。「きれいだろ、俺Mr.ビックなんだぜ」とか(笑)。 小清水:それでいうと、冒頭のシーンで舞がビックと戦ってる時に「それお母さんのコート借りてきたの?」っていうシーンがあり……。 杉田:そうそう! アメリカンジョークを直訳すると大変。アメリカ人ってそういうのを入れてくるじゃないですか。「お前の運転はウチの婆ちゃんみてぇだな……、ウチの婆ちゃんは盲目なんだけどな」とか。それを日本語訳にすると変じゃないですか。 「AHAHA」と英語の音声は入っているんですけど。日本語で言うと「うーん……?」って感じですよね。あとは僕らが空気を読まないといけないんですよね。アメリカンジョークは日本語に訳せないんです、基本的に。 小清水:わたしは、台本でそこを読んだときに、すごく面白くて「どうやって言おう?」と思って、ある種そこも印象に残りました。あと、私はテリーさんと会話しているシーンがあり、それまでは真面目に会話をしていたのに、急に「何で私たち、魚の缶詰工場の事務所で話してるの?」「なんかくさくない?」というような話になるシーンがすごく印象的で面白いです。 杉田:今作の癒しはテリーおじさんと、横にいる太ったおじさん。その二人が場を温かくしてくれています。 映画『ザ・キング・オブ・ファイターズ』公式サイト http://kof-movie.net/movie.html 小清水亜美Official BLOG -amisketch- http://blog.excite.co.jp/amisketch
by ex_anime
| 2011-08-07 10:21
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