テニス親父、化けて出る
2024年 11月 01日
父が亡くなって
世話をする相手が
いなくなった母は
寂しそう
ちなみに駄々に可愛がってくれる
爺やをなくした
ワンコも寂しそうで
主のいない父の部屋を
覗いては
クーンクーンと
鼻を鳴らしています
以前の父の部屋には
テニスのトロフィーと
ラケットがぎっしりと
並べられていましたが
気が付けば
それらはすべて
片付けられ
さっぱりとした部屋には
お気に入りの衣類と
繰り返し見るのが
好きだったアルバムだけが
残されている
いつの間にか父は
終活を完了させていました
片付けるものを
残さなかった父は
娘にとっては
〝あっぱれ!”
でありますが
母にとっては余計に
寂しさを募らさせるようです
早朝、散歩に出かける
母とワンコですが
先日は嬉しそうに
帰ってきました
散歩の途中で
〝父が出た!”
そうで
足を痛めていた父は
最近は母と一緒に歩くことが
出来ませんでしたが
「これからは毎朝一緒に
散歩しようね」
って約束したそうです
どう出たのは
わからないけれど
私の前にも出てきてほしい
と思いながらその日
職場へ向かいました
アンジェリーナで仕事をしていると
ショーウインドウの外に
茶色い蝶がとまっていることに
気づきました
「亡くなった人は蝶々に
姿を変えて会いに来るの」
と以前、お兄様を亡くされた
お客様から聞いたことがありましたから
外に出てその蝶々を
しげしげと見ると
地味な茶色い羽根ではありますが
逃げることなく
丸い瞳で私を見返しているようです
思わず〝パパ?”
と聞いて手を出すと
その蝶々はそっと手の平に
とまってから
飛んでいきました
その出来事は私にとっては
小さな奇跡のようで
テニス親父は私にも
私がそうとわかる姿で
会いに来てくれたのでした