エキサイトイズム エキサイト(シンプル版) | エキサイトイズム | サイトマップ
台湾 台中 高田唯展「形形色色」 その3 
ライター渡部のほうです。

今回はなぜ高田唯展「形形色色」を台湾で行ったのか、その背景となる台湾、近隣アジアのデザイン状況についても絡めて書きます。
ほぼ自分のメモ用です。
今回は「だ・である」調で、高田唯は敬称略です。

 今回、台湾台中で高田唯の個展企画(というか、言い出しっぺ)を手がけた私の順番からすると、以下のような理由がある。

 昨年の9月から10月に掛けて、銀座の G8で高田唯展「遊泳グラフィック」 http://rcc.recruit.co.jp/g8/exhibition/g8exh_201709/g8exh_201709.html が行われ、多くの近隣アジア圏の来場者がいたこと。急遽3カ国語(英語、中国語、韓国語)の追加解説文を作り、貼ったという。
 高田唯のグラフィックデザイン、特にここ数年のもの、は直感的に響く人にはすぐ響くのだが、一般的に分かりやすいデザインというわけではない。にも関わらず、外国人が楽しそうに見ていたのはなぜなのか疑問に思った事。

 高田唯が「海外で個展を開いてみたい」と言っていたのは、この前からずっと言っていたような気もするが、G8での展示を受け、より一層口に出していたような気がする。

 そのすぐ後、10月下旬から11月上旬に掛けて、台湾台中の綠光+marüte で田部井美名の展覧会があった。(参考 https://dezagen.exblog.jp/27455430/)ここでも多くの来場者があり、ギャラリートークではギャラリー内に人が収まらない程だった。

 2018年1月は家具デザイナー藤森泰司の展覧会が台北の田園城市生活風格書店内ギャラリーで行われ、ここでも多くの台湾人が訪れたのを目にした。

 私が実際に足を運んだのは数が少ないが、個人レベル、ギャラリー単位でかなり多くの日本人デザイナーの展覧会が台湾で行われている。アートブックフェアやデザインイベントなどの出展者もカウントすると、相当数の日本人デザイナーやイラストレーター、アーティストが頻繁に台湾で作品を発表している。

 2016年に遡れば『単位展』(2015年に21_21 DESIGN SIGHT で開催)が台北に巡回展を行っている。『単位展』は展覧会規模も大きく、台湾での会場(松山文創園區 五號倉庫)も有名スポットではある。とはいえ、大御所(もしくは超有名)デザイナーの海外展覧会のような「メディアでよく見るものの本物を見に行く」「お勉強のために」と言ったコンテクストとはやや離れたものではある。「美術館レベルのメジャーさではないけれど、好きな人は見に来る」という展示だ。

 今度は若干先走りして、会期中にギャラリーで取っているアンケートの中の質問「好きな日本人デザイナーは?」の回答は幅広い。
 現状集まったものから見ると、田中一光、原研哉、浅葉克己、仲條正義、長友啓典、佐藤可士和、葛西薫、KIGI、 色部義昭、水野学、立花文穂、田中義久、服部一成、祖父江慎、寄藤文平、脇阪克二、矢後直規、吉田ユニ、長嶋りかこ、中村至男、佐藤卓、大黒大悟など(順不同)。
 日本人の美術系大学の学生でもこんなに出て来るのかどうか。台湾人のデザイン好きな人々はかなり日本のデザインも勉強していることが伺える。

 受け入れ側である台湾がかなり大きく変化している。綠光+marüte のある台中は台湾の首都台北ではない場所で、主に日本人のアーティストを紹介しているギャラリー、とかなり珍しい場所ではある。
「ユニークな立ち位置が台湾で注目されることも事実で、毎回かなりの来場者があります。毎回の展示に足を運んでくれる方や作品を購入してくれる方が徐々に増えてきています」
と運営者の木村一心は言う。首都圏でなくとも受け入れる層があり、確実に増えている。

 少し話を変えて、近隣アジアの変化も考えてみる。
 例えば10年前であれば、近隣の東アジア圏で大御所とまではいかない日本のデザインを展示する場としては、香港が多かったように思う。デザイン文化のレベルが高く、かつ中国語と英語というメジャー言語を使用している事もあり、国際的にも通用するデザイン感覚を持ち合わせているため、香港=東アジア圏でのデザインハブ地という印象だった。
 日本や韓国もデザインの感度は高いが、固有文化と固有言語があり、他国には理解されずらい難点があった。
 
 ところが昨今、近隣アジア圏全体で優秀なデザインが一般レベルに普及してきている。また、個人規模での展覧会(個展やグループ展参加)は、東京、ソウル、台北、上海、北京、香港など、至る所に分散してきている。

 言語が通じなくとも、グラフィックデザインという視覚言語、プロダクトデザインなら体験(同時に視覚的な効果もある)と、日本語、韓国語、中国語などを完全に理解せずとも理解できる別の「言語/コミュニケーションツール」がある。これはデザインの強みでもある。

 このような近隣アジアのデザインを介しての交流は、デザイナーにとってチャンスとなりうる。行動範囲を広げる事で日本国内ではできなかった、思いつかなかったような仕事、考え方、作り方に出会える大きな機会になる。

 高田唯も「海外で個展を開きたい」と思っていた。展示オープニングを終えた時、改めてなぜ海外でやりたいと思っていたのか聞いてみた。
「自分は言語能力がなくて、英語も喋れないような状況なんですが、そんな自分のデザインがどこまで通用するのか、どう見られるのかが気になった事。少し自分を苦しめるという、アーロンさんの考えと近い。また、そういった場所に身を置くことで、自分が何を思うのか知りたかった」
という答えが返ってきた。続けて、
「また日本のグラフィックを見過ぎて、少し飽きてきているのも理由の一つ。もっと目に刺激が欲しい。SNS で海外のグラフィック事情が見れるようになって、外に出てもっと見たい、という欲が出てきた。同時に、オリンピックも近づいて来ている。大学でも中国人が大勢いる。抗えないグローバル化の状況が身近にあるというのも理由としてある」

 高田唯が言及したように、留学生に関する課題も今回の目的の一つだ。
 高田唯も私も現在東京造形大学教員という職務にも就いている。うちの大学に限らず、アジアからの留学生は年々増している。現状は主に中国本土、韓国、台湾が多い。
 それぞれの土地でデザイン精度が上がっているにもかかわらず、あえて日本で勉強したいと思う理由は何なのか。彼らは何を求めているのか。どのように指導すれば彼らの期待に応えられ、才能を伸ばす事が出来るのか。疑問は尽きない。

 高田唯と私の希望と疑問を解消させるのに、他力本願では進まない。ここは一つ自力でやってみよう、と考えたのが、今回の高田唯展「形形色色」という結果になった。
 自力とはいえ、全部自分たちの資金でやるには無理があり、今回は大学を通じて桑沢学事振興資金を使わせてもらった。このことで随分資金的には随分大きなサポートとなった。
 場所として台湾台中を選んだのは、上記したように台湾と日本のデザイン交流が増している背景があり、近隣アジア及び他諸外国の中でも親和性が高い土地であり、綠光+marüte が既知のギャラリーで日本人の運営というやりやすさから。また同時に中国語圏、世界に広がる華人の中国文化圏へのアピールにも繋がりやすいためである。
 
 展示はあと2週間ある。その間の反応も追い続けている。さらに高田唯は8月26日からは上海での個展も控え、ここでの反応も見てきたいと思っている。
 
 次回はオープニングとトークイベントを終えた後の高田唯取材をまとめたものをアップします。
 

# by dezagen | 2018-08-14 19:25 | 展覧会
台湾台中 高田唯展「形形色色」その2
ライター渡部のほうです。

台湾台中での高田唯展「形形色色」の続き。
8月5日(日)に行われた高田唯×アーロン・ニエトーク、自分用の記録ですが、自分だけではもったいない、来れなかった皆さんにも公開したい、ということでブログにアップします。
最初の5分ほど録音ができず若干切れているものの、全体で8千字近くあり、読み切れないと思いますが、記録そのまま掲載します。

登壇者:高田唯、アーロン・ニエ(聶永真)
司会:渡部千春
通訳:楊曇硯

会場:台虎精釀 啜飲室台中

b0141474_09225070.jpg
ギャラリー前に立つ高田唯(左)とアーロン・ニエ
撮影 後藤洋平

b0141474_01052168.jpg
トーク会場。開場前から行列。

渡部千春(以下、渡部)「まずはアーロンさんに今回の展覧会の感想をお聞きしたいと思います」
アーロン・ニエ(以下、アーロン)「以前の展覧会の様子を(ネット上などで)見たものは少し遠い感じがして、それに比べると、今回の展示は近く感じる。ストレートな感じがしました」
高田唯(以下、高田)「展示はキャプションがないので、僕の方から簡単に説明をさせてもらいますね。綠光+matüre のギャラリー会場は僕が独立してからの仕事を、なんとなくですが時系列に並べていて、入ってすぐのものが初期作品、ギャラリー奥の部屋がよりより最近の作品になっています。
さらに最新作は同じ綠光計画エリア内ガラス張りの部屋で、台湾で見つけたものからインスピレーションを受けた作品です」
b0141474_09470276.jpg
撮影 後藤洋平
b0141474_01072750.jpg

高田「皆さんご存じですか?台湾の新聞の求人広告は日本にはないスタイルなので、衝撃を受けました。皆さんには当たり前すぎてあんまり美しくないと思うんですが、でも僕は美しいと思ったんですね。
そうはいってもそのまま大きくしてもつまらないので、文字をズバっと排除しちゃうとどうなるのか試みてみたものが展示されています。
アーロンさんが言っていた、近く感じる、というのは、もしかしたらこういうところかもしれません。台湾の人達はカラフルなのが好みで、ちょっと心がウキウキするとか。そのせいもありますかね」

b0141474_09295891.jpg
撮影 後藤洋平

渡部「新聞広告の文字内容は分からないで作ったんですか?」
高田「漢字圏なのでなんとなく理解はしたけれど、全部を把握できていないです」
渡部「文字内容が分からないから色面が目立って見えるということもある?」
高田「そうだと思います。内容に気持ちが行かない分、色とか形とかに行くので、そういうところをピックアップしたんだとは思います」
アーロン「さっき見に行った時まだ会場が開いてなくて、ガラス越しに下に敷いてある新聞は日本のじゃないだろうとは思いました。さっき高田さんが言ったように、文字内容が分からないから、色使いや配置を直接的に見たんだろうと。一般的な台湾人は新聞広告って文字だけに目が行く。ものを見て、何を吸収して何を吸収しないか、その視線の微妙なところがデザイナーにとって1番重要なところかもしれない」
渡部「アーロンさんはこの広告をダサいと思います?」
アーロン「多分10年前に見たらダサいと思ったと思うんですけど、デザイナーとしては見え方が違って来ている」
高田「理解力が上がっているって事ですよね」
アーロン「見る時の揺らぎはありますね」

渡部「今度は少し話を変えまして、高田唯×アーロン・ニエコラボレーションステッカーのお話を聞きたいと思います。どうやって作って行ったか説明していただけますか?」

b0141474_01075826.jpg
b0141474_01081852.jpg


高田「最初に、せっかくアーロンさんが対談を引き受けてくれたので、一緒にコラボレーションして何かを作りたいと、前回下見に台湾に来た時に、アーロンさんと打ち合わせをしたんです。その時にステッカーを作ろうという話になりました。
A4くらい大きいほうがいいんじゃない?という話になったら、アーロンさんが「縦にしちゃったらいいんじゃない?」と。まさか縦に!って驚きましたけど。
お互いにシールの形を決めて、それを交換して、それぞれの形の上にそれぞれのグラフィックを乗せる、ということにしたんです。この画像の赤いラインが僕からアーロンさんへ出した型抜きのデザインです」

b0141474_01083971.jpg

高田「(画像を変えて)デザインが変わったのが分かります?なんと、この黒い線がアーロンさんのデザイン(笑)」

b0141474_01085863.jpg

アーロン「実はプレッシャーが大きかったんですよ。一か八かで、先に先手で打つ、みたいな」
高田「それは僕も同じで、僕もずらして返そうかなと思ったんですけど、(会場笑い)それはさすがにやめて、展覧会情報を載せました(笑)」

b0141474_01091854.jpg

渡部「ただ文字を載っけただけのように見えるんだけれど、切り取ってみたら違った形に見えて面白かったです。鏡面のような銀色ベースにした理由も教えてもらえますか」
高田「特別感を出したかったし、普通のシールよりちょっと豪華なものにしたかったので、ユポというビニール素材で水に濡れても大丈夫な素材を選んだんです。ユポは白もあるんですけど、なんかつまらない。ユポの見本の中に鏡面のステッカーがあるのを見つけて、なかなか使わない素材だしせっかくだからこれを使おうと。
僕が紙を決めて印刷も日本でやったんで、アーロンさん自身も今日初めて見る。仕上がりを見てどうでしょう?」
アーロン「(ちょっとためらいの時間)……(笑)きれいだと思います。1番気に入ったのは、説明の紙を違った色で入れているところです」
高田「嬉しいです。ステッカーには全く触れてないですけど(笑)」

b0141474_01093916.jpg

渡部「では次に、それぞれに質問を聞いていただこうと思います。まずはアーロンさんから高田唯さんへの質問を聞いていただけますでしょうか?」
アーロン「高田さんの昔の作品はもちろんきれいなんですが、最近の作品はわざとダサくも見えるような、揺らぎ感が以前より増したように思いました。台湾のデザイナーはきれいなものを作り続けようとする傾向がある。高田さんがあえてずらしているのは度胸がありますよね。そこはどうしてなんでしょう」
高田「学生の頃から基礎的なグラフィックデザインを勉強し始めて、先輩達のデザインとはこういうもの、というのを視覚的に吸収して、美しく整理整頓させる事を勉強してきました。ただ、きれいなデザインが増えて整いすぎてしまい、ちょっとつまらないな、と思い始めた時に、ヒントを与えてくれたのが、街中のデザイン。デザイナーじゃない人達が作ったデザインだったんです。
職員さんや駅員さんが、ただ伝えたいという気持ちだけで作ったもの。情報を伝えるのが第一で、きれいに整えるというのは考えられていないと思うんですよね。きれいな視覚的なところではなくて、人が困らないように誘導しようと考えている事、その姿勢が美しいと思ったんです。
世の中をよくしたいという姿勢のほうに惹かれたのと同時に、ルールのないところにグッと来てしまった。僕たちはデザインのルールを知っちゃってるんだけど、そういうものを知らずになんとなくこうしたほうがいいかな、というものはデザイナーが作ったものより、よっぽど活き活きしていて、僕には魅力的に見えたわけです」
渡部「東京造形大学のグラフィックデザイン専攻紹介冊子。今回興味のある方には持って行って下さいと置いていたんで、会場の方も持ってらっしゃる方がいますが、この中にも「あれもこれもデザイン」というページでそうした街中のデザインを紹介してますよね。普通はうちの大学ってこんな事をしてますよ、って紹介する冊子なんだけど、突然こういうものも入れてしまってる」

b0141474_01095979.jpg

高田「「あれもこれもデザイン」は、ふざけているわけではなくて、情報を伝えるという意味では、立派なグラフィックデザインだと思っているんですよ」
アーロン「あのパンフレットで言うと、表紙を破る、っていう発想がいい」
高田「白い表紙のものはまだ未完成なんです。最初の4ページ分を破って、人それぞれに破り方が違うので、同じものはできない。持ってらっしゃる方は、是非破って完成させて下さい」

b0141474_01103472.jpg

アーロン「学校の同僚から文句はないんですか?」
(会場笑い)
高田「文句はないんですけど、ニコニコしながら、高田君のデザインはヘタクソだよねー、と言われたりしてます。渡部先生はどう思ってるんですか?」
渡部「大学の同僚になる前に自分はジャーナリスト、と高田先生はデザイナー、として知っていたわけですが、この人壊れてるな、と思ってました」
高田「お褒め頂きありがとうございます」

b0141474_09311302.jpg
撮影 後藤洋平

高田「僕からアーロンさんに質問です。グラフィックの価値観を壊すことが大事なんじゃないか、と言っていましたが、なぜそういう風に思ったのか。台湾の事情も絡めながら教えてもらえますか」
アーロン「多分、高田さんと同じような考えで、世間にはいいデザイナーは沢山いて、きちんと整理整頓された美しいデザインを作り出している。でも段々区別できなくなってきて、個々のデザイナーの違いがなくなる流れはいやだなあと思って。
やっぱりデザイナーの重要なところは、他人とは違う、自分の存在意義。最終的には他の人が満足したということではなくて、自分の楽しみや満足が大事なんです。
クライアントのための仕事でも、自分の理論から少しズレてみる。そういう事も自分にとって意味がある」
高田「すごくよく分かります。昔は人のために作る事が多かったし、それが当たり前だった。世界同時多発的な時代性だと思うんですが、みんなが自分に興味を持ち始めて、自分を主張してもいい時代に入ってきたと僕も思います。
これからは人に合わせるというより自分に合わせて行くほうが、もっと世界が面白くなるんじゃないかと思います。だから僕も覚悟を決めて、こういうデザインがあってもいいんじゃないかなと、あまり見た事がないところへ冒険をしている、というところと繋がりますかね」

b0141474_09313917.jpg
撮影 後藤洋平

高田「アーロンさんにはいっぱい聞きたいことがあるんです。これからチャレンジしていきたいことを聞かせてもらえますか」
アーロン「チャレンジとかあんまり考えてないんですけど、自分に対して優しい環境を離れる。優しいところにいたら安定してしまうから、そういう場所をあえて離れて厳しいところに行く。これはこれからというよりずっとやっていることですね」
高田「じゃあ、これからはどういうところに身を投げるんでしょうか?」
アーロン「1,2年くらいベルギーに行ってやってみたい。台湾の仕事も続けますが、海外で自分を試してみようと思ってます。
ずっとやりたいと思っている事は、名前を変えて作品を出す事。自分の名前が知られている事に縛られ過ぎることがあるので、他の名前で勝負してみたいです。
高田さんは将来チャレンジしたいことは?」
高田「全然ないんですよ(会場笑い)。むしろ今が未来なのかもしれないです。綠光+matüre で初の海外個展を開くという目標が叶ったので。
特にこうしていこうとか、10年後はこうありたいとか明確になくて、その時々に思ったことをちょっと口にすると反応してくれる人がいるので、波に乗る感じ。そういう生き方でいいかなあと(笑)」

アーロン「星座はなんですか?」(会場笑い)
(通訳の楊さん「日本は性格判断に血液型をよく引き合いに出しますが、台湾は星座が重要なんですよ」
高田「乙女座です」
アーロン「獅子座です」
高田「まさか星座を聞かれるとは思ってなかったです」

b0141474_09315764.jpg
撮影 後藤洋平

高田「アーロンさんが、最近の台湾のグローバル化に疑問を感じるという記事を読んだ気がするんです。台湾の国際化、海外の文化を取り入れて行くことに不安や疑問はありますか?」
アーロン「国際化は必ずしも悪いともいいとも限らないんですが、国際化することで、むしろ自分のセンスや思考というのと向き合える機会になるし、新しいものをプラスにできるかもしれない。台湾としては悪い事ではなくて、新しい事のインスピレーションになっていますから、今の台湾の状況はいい方向に進んでいると思います。高田さんはどう思います?」
高田「自分で質問しておきながら、難しい質問…(笑)。
日本もやっぱり国際化している。オリンピックが2020年にあるというのもあって、色んな国の人がいるのが当たり前になってきていて、脅かされている感じもしてドキドキするんだけど、別の文化を知るきっかけにもなるので、悪い事ばかりではない。
世界的に携帯で繋がれる時代というものに対して、活かす活かさない、をみんなが調整していけばいいと思います。国と国の関係って、10年20年前は他人事というか大きい話だったと思うんですが、今は国と国の関わりが、それこそこういう展示やイベントができるような個人的な繋がりになってきているというところは、すごく興味深い。それをプラスの方向に持って行けば、国の性格を保持したままお付き合いができるんだと思います」

b0141474_09334316.jpg
撮影 後藤洋平

会場から「今のデザインはシンプルに見えますが、下書きやスケッチをしますか?それとも直接コンピューターでデザインするのでしょうか?」
高田「最近はあまり下書きをしていません。昔は自分が忘れないように書いたりとか、デザインのレイアウトを描いてはいました。今は身体の中にストックしたものがあるので、パソコン上でいきなり作ることもよくあります。いいと思ったものは紙に書くより、モニター上で作ったほうが早くなったんでそうしています。
ただ、僕自身経験を踏んでのことなので、若い人には身体で形を覚えて欲しい。紙に描いておくことをお薦めしています。グラフィックデザインで覚えたことを手で出現させる行為はグラフィックデザインの根っこの部分だと思うので、それは是非やって下さい」

高田「アーロンさんも学生にデザインを教えていると思うんですけど、教えている時はどういうことを大切にして教えているんでしょう?どういったことを伝えていますか?」
アーロン「デザインで大事なのは学校の教育ではなくて、自分は何が欲しいかが一番重要なんですよね。学校の良さは、自分のセンスと違う教育の中でも自分の中で変わらないところに気付くことかな。
先生とは違うと思うこともあるし、自分が嫌いなものを作る機会もあるけれど、それも大事だと思うし、それが学校の良さだと思います。高田さんは?」
高田「自分と違う人がいることを受け入れたり受け入れなかったりというのがあって教育って成り立っているんじゃないでしょうか。
僕が学生に向き合って教えているのは、あなたは何者なの?ということを問い続ける事。細かいグラフィックの技術はもちろん言うんだけれど、そもそもあなた何したいの?何のために生まれてきているの?というのを、明らかにさせることをしています」

アーロン「2人は大学で何の教科を担当しているんですか?」
渡部「私は講義ではデザイン史とデザイン論。実技では情報整理を担当しています」
高田「僕はビジュアルコミュニケーションとグラフィックアート。ビジュアルコミュニケーションは広告とかブランディングとか、どうやって工夫をしているかというもの。グラフィックアートは、さっき言ったようなそれぞれの能力を引き出せるためのアート的な表現を出させていくものです」

アーロン「今この場所には将来デザイナーを目指している人、日本の大学を受けたいという人もいると思うんですけど、日本の大学のいいところや特徴って何でしょう」
渡部「日本の美術デザイン教育は、50年代60年代に流行ったモダンデザインというのをまだちょっと引きずっているというのが一つの傾向。もう一つの傾向としては、アニメーションや漫画に対しての理解がある」
b0141474_09384585.jpg
撮影 後藤洋平

高田「台湾はどうですか?」
アーロン「大学のことは分からないですね(笑)。大事なのは人の本質。嫌いなのは作品のコンセプトを書かないといけないこと。作品のコンセプトを無理矢理書き足しているようなものはいやですね。例えば、赤はパッション、青は冷静、とか。自分が何をやりたいか、というのが一番大事だと思っています。
今日来ている人達は高田さんのズレ感が好きで来てると思うので、そのコンセプトを理解していると思うんですよ。でも、例えば学校で生徒達が自分の感覚を理解してないとか、高田先生の作品は意味分からない、と言われたらどうしますか?」
高田「どう思う?って聞きます。学生にこれはどういう意味か教えてくれって言われたら、君はどう見えるの?って聞きます。答えは教えない。
僕もアーロンさんと同じで、コンセプトを語るのが苦手で、それ言っちゃったらそれが正解すぎて、考える余白がなくなっちゃうから。
デザインコンセプトを説明されるとその場で済んじゃって、心に残らない。僕はそれがイヤだなあと。フライヤーは8月ですし太陽です、と言われても面白くないですし、違います(笑)。だからもう少し放ったらかしてもいいんじゃないかな、と思う。日本のデザイン全体が。」
アーロン「問う事が答えなのかと。形形色色(日本語で色々の意味)というのがその答えなんじゃないかな」
高田「展示タイトルが、そうですね。ありがとうございます(笑)。僕がいろんな学校に行って、僕がいつも気にして生活しているのはこういうところだよ、というのを配っているんですけど」

b0141474_01110577.jpg
□いろんなものを観察すること
□自分の考え、感情、反応を観察すること
□疑ってみること、受け入れてみること
□感動すること
□工夫すること
□グラフィックデザイン以外に武器をもつこと
□口にする(文字にする)こと
□自分という存在を理解し、活かすこと
□季節を感じること

高田「想像しながら文字にするとか、口にするとか、言葉にするといつも叶ってきたんですね。海外で個展できないかな、と、言っていたらできたように、こうしたいな、と思った事を自分の中に留めておかないで、出力すると動きが変わると言うことが多い。
四季は、僕はここ結構大事だと思ってて。生き物なので、気候を感じたり、風の匂いを嗅いだり、この季節はこの花が咲くのかとか気付いたり、季節の食べ物を食べたりとか。そういうのを気にして他の事もやってる。なにげにここは大事です。」



b0141474_09332101.jpg
撮影 後藤洋平

アーロン「グラフィックデザイン以外に武器を持つこと。高田さんの武器は何ですか?」
高田「クライアントからもらった仕事を答えるのがグラフィックデザイナーですよね。それ以外に、絵を描いたりとか、教員も武器かもしれないし。あと活版印刷とかも。グラフィックデザイナー=グラフィックデザインだけをやればいい、というものでもないと思っています」

渡部「ではそろそろお時間となりました。皆さん、アーロンさん、ありがとうございました」




# by dezagen | 2018-08-09 01:11 | イベント
台湾 台中 高田唯展「形形色色」 その1
ライター渡部のほうです。

台湾、台中での高田唯さん(大学では同僚なんで、「さん」付けは慣れてないが、さておき)の展示が、8月4日から始まった。

b0141474_08561551.jpg


ギャラリー「緑光+marute」と 同じ敷地内の別スペースも使い、2カ所で展示。
ギャラリー内ではこれまでの作品を入口から奥の部屋に行くに従い、過去から現在へと時系列で並べていく方式。

こちらは入口付近

b0141474_08563983.jpg

入口から入って右横の奥部分。
b0141474_08571411.jpg


さらに奥の部屋。
b0141474_08582329.jpg



高田さんの作品の中に、真ん中のオレンジのバケツや青い手袋のようにちょいちょい現地の日用品や印刷物が入っているところがミソ。
斜めリングノートの横にあるのは、台湾の蚊取り線香。
b0141474_19365962.jpg
(※)


普段見過ごしがちな身の回りの中の形や色の面白さに気付いてもらえるといい、あるいは日用品だと全然気がつかないで作品として見てしまってもらってもいい、という高田さんの意向。

こちらは第2会場のガラス張りのお部屋。

b0141474_08593877.jpg

現地の新聞の求人欄からインスピレーションを得た新作グラフィックが上に吊られ、下にはその元となった新聞が並べられている。
下の写真は、普段からあるものなのに、台湾現地の人が下に敷いてある新聞も写真に撮っていたのが印象的だった。これまで見えていなかった魅力に気付く瞬間。

b0141474_19380741.jpg
(※)

今日はまずはここまで。

写真撮影:後藤洋平
(※)は渡部千春撮影

# by dezagen | 2018-08-05 19:38 | 展覧会
「イラストレーターになりたい」について思うこと
ライター渡部のほうです。

大学の先生を始めて8年目。
大学説明会にも慣れてきたけれど、常に相談者(受験生)と一緒に悩んでしまうのが
「イラストレーターになりたい」ので、どの専攻で勉強するのがいいのか、
という相談。

「イラストレーターになりたい」という美術系大学や教育機関受験者は昔から多いし、おそらくこれは永遠に続くのだろうなあ、と思う。
今年も新潟市だったり学校内だったり、一昨日は名古屋で説明会と、何度か説明会をやっていて、やはり今年もイラストレーターになりたいという相談者が多かった。

思うところが理路整然とまとまっていないので、箇条書きに。

1)美術教育機関で学ばなくてもイラストレーターにはなれる。
 実際、数多くのイラストレーターがいる中、かならずしも美術教育を受けている人ばかりではない。絵は紙と鉛筆でも、パソコンでもスマホでも、どこでも描ける。描けば描くほど上達はする。
 昨今はネットでの発表媒体も多いので、アマチュアでもイラストを人に見てもらう機会もある。

2)プロのイラストレーターの仕事は厳しい
 美術教育がなくても、絵を上達させる方法はある。人に見てもらう機会もある。無料で仕事をするのであれば難しくはない。
 イラストでお金をもらいます、つまりプロになる、という場合は事情が異なる。クライアントの仕事内容を理解し、適切なイラストレーションを適切なサイズで、締め切りに間に合うように書き、都度やってくる修正にすぐに対応できるようにしなければならない。
 スピード勝負でもあり、体力勝負でもあり、特に仕事をやり始めの時はギャラがそんなに良くないけれど、それで生活できるような基盤を持っていることが大事。

3)美術教育を受けてイラストレーターの道に進むと幅は広がる(と、思う)。
 この辺は個人差があるけれど、例えば大学で4年間何らかの美術教育を受けて、その4年の間もしくはその後イラストレーターになった場合のメリットはある。
 うちの大学、東京造形大学、はイラストレーション専攻というのはないので、何らかの専攻に入りながら、ということになるのだと思うのだけれど、例えばグラフィックデザインを勉強していると、ポスターや冊子やウェブなど作りながら、どういう仕組みや流れで完成物が出来ていくかが把握できるので、その中でイラストレーションがどう活きるか、逆に言えばイラストレーションの活用法を理解できる。
 アニメーションであれば、キャラクターデザインや背景をどう使うと、どう動かすと魅力的になるのか、理解できる。
 メディアであれば、例えばゲームを作る時にどんなキャラクターや世界感が活きるのか、あるいはウェブサイトだったりスマホアプリだったり、さらにはもっと先を行くテクノロジーの中で、イラストを使うと効果的なのかそうでないのか分かる。
 テキスタイルではイラストを含めた図、パターンを布にプリントし、それがインテリアファブリックや衣服や小物など、他の応用物に変化する楽しみが分かる。
 絵画であればとことん突き詰めて考え、表現する作業を通して、表現力、画力を上げる事ができる。
 など。他の専攻でも色々応用発展能力が付くはず。

3-2)上の話はなんとなく説明会っぽい。
 大学教員という立場から言ってしまうとこうなる。

4)美術系教育機関に行くのに「イラストレーターになりたい」という動機はいいと思う。
 イラストレーターになりたい、という気持ちを持っている人はすでにイラストレーションを描いた事がある人であって、また、多くの人はすでに他の人に見てもらったりしている。イラストレーションのスタイルは様々だろうが、なんらかの図像でコミュニケーションを取れる人だ。
 好きなものがあって、それをすでに実現している、さらにその能力を活かしたい、できればそれを仕事にしたい、という希望を持っている人は強い。それが実現できるかどうかは誰も保証できないけれど、やりたい事があればそれに付随するもろもろを耐えて行くことができるだろう。

5)では何を勉強すればいいか。
 あくまで美術系教育機関に限った話で言えば、自分のイラストレーションに何を付加させたいか、になると思う。
 まだプロになっていない人のイラストレーションには何かが足りていないはず。例えば人間のプロポーション作りに変化が足りない、そこを重点的に突き詰めたい、となれば、これも例えばだけれど、彫刻で徹底的に人間塑像を作って骨格を理解する。バックの世界感が作れないのであれば、建築系でパース感や環境を理解するのもいいだろう。イラストレーションをもっと応用したいとなれば、3)で書いたような応用力を付けて行く。

 「イラストレーターになりたい」ので、どの専攻で勉強するのがいいのか、という相談。に対しての答えとしては、こんな事が考えられるのだけれども、イラストレーターを育成するために大学の教育があるわけではないので、入ってみたら考えていたものと違っていた、ということはあるだろう。そんな時は「違ってる」=「知らなかった事」として未知の世界を楽しめる能力があるといい。なかなか難しいことではあるけれど。


# by dezagen | 2018-07-03 01:32 | その他
ピッツバーグのスーパーマーケットで
ライター渡部のほうです。

ブログ、全然書き忘れていたなあ、と「ブログ用」と名を付けているブログ用ネタファイルを見ていたら、3月に行ったアメリカ、ピッツバーグの写真が。
というわけで、4ヶ月のタイムラグがあるけれど、ピッツバーグで見たものを少々。

b0141474_12473153.jpg
ピッツバーグというか、全米域で出ているものだとは思うが、クリネックスのティッシュの箱。なんだか分かりにくいが、パッケージの写真をよく見てみると
b0141474_12525880.jpg
ひっくり返し、取り出し口を下に、タオルラックに置く。下から取り出す。という方式。
良いアイデアだけれども、バスルーム以外のところに置くのが難しそうだ。

b0141474_23325375.jpg
洗剤。真ん中のものが不思議な色と形。エナジードリンクっぽい。
b0141474_23333320.jpg
下の真ん中に口がある。これ、どう使うんだろう…。

b0141474_23363152.jpg
シリアルコーナー。下の袋は1キロ入りとか2キロ入りとか、それくらいのサイズ。アメリカってでっかいなー。

ピッツバーグに行って、おや、日本ではプレッツェルで有名なSnyderがポテトチップスを?と思ったが、微妙に違う。
b0141474_23372476.jpg
こちらはSnyder of Berlin https://www.snyderofberlin.com
プレッツェルで有名なのはSnyder's of Hanoverのほう。 http://www.snydersofhanover.com
どちらも(ピッツバーグのある)ペンシルベニア州の会社。
「?」
で、それぞれの会社のウェブサイト、歴史ページを見ると、元々同じSnyderという会社だったものが、1950年にポテトチップス部門としてSnyder of Berlinが独立したのだそう。

アメリカでポテトチップスといえば、大きなシェアを持つのがLay's。とはいえご当地ポテチというか、東北部で強いなどエリアによって若干の違いがある。
b0141474_23385518.jpg
こちらはWISE https://twitter.com/wisefoods?lang=ja こちらもペンシルベニア州の会社。

b0141474_23391286.jpg
昔っぽいデザインが心をそそるHERR'S http://www.herrs.com こちらもペンシルベニア州のメーカー。

b0141474_02223070.jpg
燃えるほど辛い。こちらもペンシルベニア州のGibble's http://gibblesfoods.com
ペンシルベニアって、芋大国なのだろうか。

b0141474_02175555.jpg
ポテトチップスはカロリーが高いというイメージで、ポップコーンが健康的だとか、色々新しいスナックが出ており、その中でカルビーのハーベストスナップ(いわゆるえんどう豆スナック) https://harvestsnaps.com の人気ほぼ定着。フレーバーもバリエーション豊富。
日本でも売ってたりしますが。日本だと「さやえんどう」http://www.calbee.co.jp/shohinkensaku/product/?p=20150424115245 に当たるのかな。
b0141474_02152474.jpg
ピッツバーグはハインツの街でもある。(実際今回の旅はハインツミュージアムを見るのが目的だった)スーパーでもハインツ度が高い高い。


b0141474_02334649.jpg
b0141474_02333938.jpg
今回最大の出会いは、全国的に展開するスーパーマーケット(というか、生活雑貨や衣類、電化製品も売るGeneral merchandise store、略称GMS)TARGET https://www.target.com のプライベートブランド Market Pantry(日常食品シリーズ)。コーポレートカラーの赤とちょっとレトロっぽい大胆なタイポグラフィー使いが活きている。「バター」って堂々としてて本当にカッコイイ。
調べてみると、2016年にリニューアルしたそう。2年前にもアメリカ行ってたのに、何故気がつかなかったのだろうか…。
デザインはターゲットのインハウスデザインチームとパッケージの大御所パールフィッシャー http://www.pearlfisher.com/work/market-pantry/

というわけで、4ヶ月前のネタ。以上です。

# by dezagen | 2018-07-02 02:46 | プロダクト・パッケージ