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カテゴリ:展覧会( 274 )
台北『中村至男自選展』を見て
・台北で新しい個展の展示をめざす
 
 グラフィックデザイナー、中村至男 http://www.nakamuranorio.com の個展『中村至男自選展』が7月5日より台湾台北市の文化施設、松山文創で開催されている。本来は9月1日で終了のはずだったが、好評を得て9月22日までの会期延長となった。
 今回の展示には私自身、スタッフとして参加している。コーディネーター兼共同プランナーといったような役割だ。内部から見て行ったこの展覧会の様子を書いてみたい。
(以下は敬称略、写真は中村至男、木村一心、渡部千春撮影)

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 中村至男の個展は、すでに日本では 2017年、2018年と G8他で行われているが、松山文創の会場はこれまでの個展とは規模が違う、500平米という面積での展示である。

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 ちなみに G8は120.01平米とのことなので、約4倍だ。2つの個展を合わせても足りないほどの大きさは、当初なかなか想像しにくかった。
 G8での2回の個展展示作品をそのまま持って行き、余裕を持たせればなんとか、という考え方もあったことはあったが、単純に過去の展示を持って行くだけというのは独創性がないし、台湾での来場者にも面白味なく映る。
 新作を入れることに加え、展示物の構成を変え、大きさを変え、見せ方を変えていく事で新しい展示として見てもらう。これを目標としてまずは肝となる作品、及び確実に展示する作品を決め、会場のおおよその設計が決まったところで、サイズや配置を考える。バランスを見ながら追加するものを考えて行った。
 
 バランスを見ながら、と書くのはたやすいが、遠隔地、異なる言語や異なるソフトウエアなど、様々なハードルがある。これをこなせたのはスタッフに恵まれたお陰である。
 主催会社 KKLIVE、JUSTLIVE就是現場  https://www.justlive.com.tw のディレクター、エリオット・チャンは会場の設営関係から経理、パネルなどの素材や印刷方法、販売グッズの管理、PRなどに至るまで全体を把握。彼のように全体も見つつ細かいところまで配慮をしてくれる人がいなかったら、今回のような完成度は望めなかっただろう。
 会場設計は VERY CONCEPTION 麻粒國際文化試驗 https://www.facebook.com/very.conception/ が担当。相互理解に齟齬がないよう、台湾在住の日本人設計士木村一心 https://www.isshin-taiwan.com に入ってもらった。木村一心がこまめにエリオット・チャンと VERY CONCEPTION とやりとりし現地の状況を伝えてくれたこと、かつ、3D データに慣れていない中村至男と渡部用に展開図、俯瞰図にしてくれたことで、格段に効率が上がった。

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 現地打ち合わせ、設営時、イベントでは通訳Chocoが細かくサポートしてくれた。言語を訳すだけの通訳の範疇を超えて、細かなニュアンスも伝え、なおかつ場の雰囲気からどのように動けばいいかといったアドバイスもくれた。台湾と日本の事情や常識感覚をしっかりと認識しているからこそできることである。

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・フローを考える
 
 展覧会の醍醐味の一つは動線という流れがあることだろう。例えばスマートホンや雑誌などで一つ一つのグラフィックを単体で見るのではなく、続けて見て行く。こうした流れの作り方は書籍と似ている。一連の流れを掴み、深み、和み、肝、穏やかな終わり(呼び方は私が勝手に群をまとめて呼んでいるだけだが)、というように緩急のあるフローを考えた。

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 まずは台湾の人にも馴染みのある現地で行われた『単位展』(2016年)のメインビジュアルや、中華系の人々にはウケの良い「a piece of spring」(2011年)、新作を最初の掴みとした。
 「ブルードラゴン」(2017年)やモニターを使う「Twin Unverse 」(2007年)などで少し余裕のある場の後に、台湾の人に認知度の高い明和電機の作品のコーナーをほぼ現物のみで密集させ、物量の多さ、細かさで密度が高い場を持ってきた。

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 和ませる部分は、ミッフィの作品(2017年『シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン展 』での出展作品)や「私の部屋」パッケージデザインなど、ぱっと見てすぐ分かるもの。

 肝となるのは、会場の一番奥の部屋に設けられた、「どっとこ どうぶつえん」(初出2012年)、「Universe」(2018年)、「7:14」(初出2010年)の連作。スペースを広く取り、大きな作品をゆっくりと見てもらうことが狙いだ。
 日本ではなかった事の一つとして、「どっとこ どうぶつえん」の巨大な立体化がある。ワニは人が座れるほどの高さに、ゾウは高さ3メートルの壁を超え、幅は5メートル近い。巨大である。加えてその後ろ、壁の裏からキリンの長い首が見えているという構成だ。

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 会場他の壁面がほとんど白の中で、もともとの書籍『どっとこ どうぶつえん』に寄せ壁面を黄色くし、際立って華やかな場所になっている。ここは子供だけでなく、大人にもウケが良く。インスタグラムなどの SNS で見るとほとんどの人がここで写真を撮っている。

・大きさの力

 会場の床サイズも広いが、天高も高い。壁の高さこそ3mから3.5m と、ほとんど G8と変わらないが、天井の板がなく屋根そのものが天高となるので、上の抜けも大きい。この空間を活かす作品展示とするため、「春」や「7:14」を始め現地出力のものの多くはこれまでにない大きなサイズで出力した。最も大きなもので「a piece of spring」、「7:14」から2枚、「蛇口」(『Graphic Design in Japan 2013』表紙)で高さ約2m、幅約1,5m である。

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 自分の身長より作品が大きいと、見る側の目線も変わって来る。「7:14」の表紙のグラフィックでは、室内にいるような感覚になり、「蛇口」は落ちそうで落ちてこない水滴のギリギリの緊張感がより大胆に伝わって来る。

 立体的なモノとしての感覚やテクスチャーのない平面作品は、ネットでも簡単に見る事ができる。こと、中村至男の作品はグッズなどモノ化させたり、印刷のテクスチャーにこだわったりするものではなく、単純に視覚的な面白さを追求するものである。
 むろんスマートホンのサイズでも、PC のモニターのサイズでも、見たことには変わりはないのだが、そのサイズを超える印刷物で見てもらう事で、異なる視覚体験となる。
 中村至男の平面に特化した作品は、大きさやメディアに関わらず理解、解釈できるものだと思っていたが、私自身こうして大きく展示されたものを見ることで、より迫ってくるような体感として見ることができた。

・精緻さよりデザインの醍醐味に

 中村至男と仕事をするのは『明和電機の広告デザイン』(中村至男/土佐信道著、2006年 NTT出版刊)以来13年振りである。久しぶりに中村作品とガチで対峙することになったわけだが、以前に比べて随分変わったところもある。分かりやすいところではアウトラインが太くなって、大胆な作品が増えた事。また、ここ数年は特にくずしや、バグによるズレをも楽しんでいる。書道で言えば、楷書から行書、草書に進化しているようなものだろうか。

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 作品を大きく刷れば、イラストレーターのバグや線のつなぎ目のズレがより拡大されても見える。
「あえて残している部分もあります」と中村至男はいう。「自分の作品はそうした精緻さを問うわけではないんです。過去には神経質なほど線の位置にこだわった時期もあったんですが、今はそれほど精緻さにこだわりはなくなってきました。むしろ、正確さ精密さだけではないデザインの醍醐味に焦点を当て、見ることの面白さを拡大していきたいです」
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・「見る人」中村至男

 展示企画が始まってから開場(及びイベントなど)に到るまで、中村至男と何度もミーティングを重ね気付いた事がある。中村至男はあまりメモを取らず。メモ代わりの写真もほとんど撮らない。つまり、文字や写真の記録に依存しない、ということである。
 その代わり徹底的に「見る」。見たことを体感として覚えておく、頭の中に記録しておく。また、見る集中度も高い。中村至男とのLINE によるチャットで、強く記憶に残った言葉がある。どういう話の流れでそう言ったのか自分でも忘れてしまったが「井の中の蛙大海を知らず」と私が書いたところ、「大海の中の潮流(流行)、井の中の大宇宙を知らず」と返された。
 井戸(あるいは沼や池でも良いが)の中にも小さな生物による世界がある。ささいに見える事をじっと見続け、想像力をたくましくしていくと、新たな宇宙観が見えてくる。中村至男はその宇宙の中で広がっていく、見る楽しさを「視覚の喜び」と言う。

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 記録媒体なしで「視覚の喜び」を留める、自分自身の身体に留め、作品の中に留める。視覚体験も含め、自分の体感を信じて、極力余計な情報を入れないようにしているように見える。
 自身の体感を信じ、続けていくのは容易に出来ることではない。視覚を記憶し再現することは「頭が覚えていて頭が動く」ということになるだろう。頭に溜めて溜めて構造ができたところで表現にまで作り込む、これが中村至男の方法であり、それがゆえに出来ている作品群なのだ。

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 展覧会のイベントとして行われた明和電機との対談で、明和電機社長土佐信道がこんな事を言っていた。
「中村さんは、視覚の中の仕組みというのを必ず考えている。グラフィックを見た途端にクスっと笑えるような、皮肉もあって面白い、そんな瞬間が常にあります。明和電機というモチーフを使っても、やっぱりその仕組みがあって、それから頭にスイッチが入るのを今回感じました」
 こうした揺るぎのなさは長年付き合いのある明和電機でも、今回の展示で気付いた事だという。

 中村至男の作品すべてではないが、かなりの量の作品を俯瞰し、かつ、広いスペースで堪能できる展覧会に仕上がっている。9月22日ももう間近に迫ってきたが、日本ではまでできていない規模の大きなこの展示を1人でも多くの人に堪能してもらいたいと思う。

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展覧会の詳細情報はこちらから
公式 facebook
渡部千春の facebook(公式サイトの和訳)
justlive のチケット情報

by dezagen | 2019-09-07 13:23 | 展覧会
高田唯北京個展と中村至男上海個展のPRについて
ライター渡部のほうです。
(今回はです・ます調で敬称略です)

現在北京にいます。
高田唯の中国二度目の個展、北京での『一花一日』の開催準備。本日が内覧会です。

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公式HPはないのですが、以下、主催のNEUEのfacebook
で詳細が見れます。

まずは概要。

「一花一日:高田唯展」
期間 2019 年 5 月 4 日〜5 月 31 日
開場時間:9:30〜18:30
場所:敬人纸语(北京市东城区地安门东大街甲89号南锣鼓巷福祥胡同内)
展示会場の入場料:30元(店舗は入場無料)

となります。この期間中北京にいらっしゃる方は是非。

今回の主催NEUEのデザイナーを紹介する展覧会プロジェクト、北京の高田唯の後には8月上海で中村至男、と続きます。
この二人のプレス用のポートレートを撮ろう!ということで、上海のフォトグラファー、宋万杰(ソン・ワンジエ 欧文表記:Julian Song Wan Jie)に撮影してもらいました。

以下その中から抜粋。

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普段の高田唯、中村至男のポートレート写真、もしくは他のデザイナーのポートレートを見慣れている人にはかなり異質な写真に見えるかもしれません。
俳優みたいな雰囲気だし、ヴィヴィッドな服着てるし、顔の表情も強い。
多分、この写真を日本の媒体で(このブログも日本の媒体ですけどね)ポートレート写真です、と使うのは難しいと思います。そんな写真をあえて撮ってもらったのには理由があります。

今回もそうですが、毎回中国に来ると人々の強さに圧倒されます。もともと大陸と日本の島国の気質が違う、というのもあるのでしょう。加えて、成長中の国の「もっと色んなものが欲しい」「もっといい生活がしたい」こういった貪欲さが、日常の生活、道行く人々からも感じられるのです。
人々からの需要の強さに対して、供給の力も強く、そうなるとメーカーの広告も強い、パッケージも強い。デザイン自体も強ければ、デザイナー自身も見せ方が強い。

デザイナーも人々もしくはクライアントの期待に応えられるだけの力強さを持つ必要があります。それが感じられるデザイナー像も存在するわけです。もちろん個人差はありますが。

ならば一度、中国スタンダードに合わせたポートレートがあってもいいのではないか、などと考えていたのが昨年末。
そんな時に出逢ったのが、宋万杰の写真でした。
イギリス発のデザインニュースで取りあげられていたのを見たのが最初でした。

宋万杰のインスタグラム https://www.instagram.com/juliannn_song/ で見ると分かりやすい。色も形も美しさも、時代性も皮肉も、すごくいい瞬間を切り取るフォトグラファーです。


聞けば彼が一緒にプロジェクトをやった時の衣装デザイナー、上海ベースの台湾人Angus Chiang (オフィシャルウェブサイトwww.anguschiang.com インスタグラムページ https://www.instagram.com/anguschiangofficial/  ) は昨年の高田唯上海個展にも来てくれたそうで、作品が好き、とのこと。
ならば!ということで、宋万杰に撮ってもらう写真にAngusの衣装を使わせてもらおう。やるなら徹底的にやってみよう、と、思った事を口に出したら宋万杰が場所やセッティングを決め、モデルさんの撮影も合わせてスタイリストさんも呼んで、とあっという間に独特の世界観作りをしてくれた、という経緯で出来たのが上の写真群です。

プロジェクトとして作ったこれらのポートレートは主に中国語圏でのPR素材に使う予定ですが、冊子にしてみたい欲も出てきました。まだ全然未定なんで、どうなるか分かりませんが、思った事を口に出すと2倍3倍のパワーで返ってくる国なので、本当にどうなるのか。。。

最後に、ポートレート撮影スタッフの記念写真を。黄色の服を着ているのが宋万杰です。

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Hair by ZaiXuan Li, make up by Beata Xu, produced by BiBo,the model is MengGe Yi


by dezagen | 2019-05-03 23:07 | 展覧会
世界のブックデザイン 2017-18(その2)
前半からの続きです。
ここからは各国別に紹介していきます。


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[カナダ]

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『Colosses: Mémories de portiers et récits de bars
(巨像:用心棒の回顧録とバーの物語)』
Sid Lee Collective発行

エンボスされた革張りの上製本を開くと、屈強な男たちの写真が続く。。。書名から察すると、バーにいる用心棒の写真集???  荒々しいテーマですが、文字組や造本がかなり丁寧で上質な写真集に仕上がっています。出版者がなぜ用心棒の写真集をつくろうとしたのかは不明。謎です。


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[中国]

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『介入』
中国建築工業出版社発行

建築家とデザイナーの対談集。本の真ん中にあいた穴を避けるように、中・英・日・韓の4カ国語による文章と写真が配置されています。中綴じですが、機械で綴じずに、糸を通して手製本されています。今年は他国の受賞書籍にはあまり奇抜な造本はなかったのですが、中国はトリッキーな本が多かったです。その中でもこの本が群を抜いていました。


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[ドイツ]

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若いブックデザイナーのための奨励賞
『Nicht Sein
Über Suizide und Mögliche Ursachen
(非存在 自殺とその原因)』

ドイツのデザイン学生がつくった本(8部限定+30部増刷)。レーザーカットであけられた穴は実は棒グラフになっていて、ドイツ国内で自殺で亡くなった人数などを表しています。非常に重いテーマを、グレーとブルーの落ち着いた色の用紙と精緻なタイポグラフィで端正にまとめた作品。


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[オランダ]

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『The Living Surface
An alternative biology book on stains
(息づく表層。シミをめぐる斬新な生物学の本)』
Jap Sam Books発行

例年、珍書が多発するオランダ。しかし、今年はあまり掘り出しものがなく、この本が目立っていました。アーティストが身の回りのシミを保存、撮影し、カラーチャートを作成。英語、フランス語、オランダ語をそれぞれ90度ずつ向きを変えて配置しています。(たぶん学術的価値はあまりないと思われる)奇妙なコテンンツを大まじめにデザインした珍書。

ほかにもおもしろい本がありましたが、このあたりで切り上げます。展示は2019年3月31日まで印刷博物館で開催。会期中、トークイベントや手製本のワークショップもあるそうです。

「世界のブックデザイン2017-18」
https://www.printing-museum.org/exhibition/pp/181215/
by dezagen | 2018-12-18 00:50 | 展覧会 | Comments(0)
世界のブックデザイン 2017-18(その1)
編集宮後です。
今年も「世界のブックデザイン」の季節がやってまいりました。

「世界のブックデザイン2017-18」では、「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書のほか、日本、ドイツ、オランダ、スイス、オーストリア、カナダ、中国、各国のコンクールで入賞した書籍約200点を展示。今年は、過去10年間に同展で展示された「世界で最も美しい本コンクール」上位受賞書籍も展示され、11年分の流れを俯瞰できるような展示構成になっていました。

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今までの展示内容については、こちらのブログをご覧ください。
https://blog.excite.co.jp/dezagen/27811149/

では、早速今回の展示内容の中から印象的だった本をご紹介しましょう。
会場入口に展示されていた日本の造本装幀コンクール受賞作品から。


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[日本]

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『はな子のいる風景 イメージをくりかえす』
武蔵野市立吉祥寺美術館発行

1949年にタイから日本にやってきて2016年に亡くなったゾウのはな子の写真集。多くの人が撮影した写真で構成された写真集には、折り畳まれた手紙やスナップ写真などが貼付けられ、まるでアルバムを見ているよう。心がかよう、あたたかい写真集。


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『中世ふしぎ絵巻』
ウェッジ発行

魑魅魍魎が跋扈する不思議な絵巻の本。表紙は縦向きですが、表紙をめくると、中ページは90度回転して横向きに配置されています。本文は糸かがり綴じで180度フラットに開くので、ノドで絵柄が切れず気持ちよく読めました。


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[世界で最も美しい本コンクール受賞作]

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栄誉賞(オランダ)
『Claudy Jongstra(クラウディ・ヨングストラ)』
nai010 Publishers発行

染色した羊毛で作品をつくるアーティストの作品集。CMYKではなく、インディゴブルー、茜色、カモミールイエロー、ブラックインディゴの4色で写真を印刷。ページは製本せず、真ん中で折って、ビニール袋に入れてあります。一瞬、黒い羊毛が袋に入っているように見えますが、実は印刷。このドキッとするブックデザインはイルマ・ブーム。


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銅賞(スイス)
『Documenta 14: Daybook
Separate English, German and Greek editions
(ドキュメンタ14日誌 英語版、ドイツ語版、ギリシャ語版)』
Prestel発行

5年に1回、ドイツで開催される国際的な現代アート展「ドキュメンタ」の記録集。本のカバーは紙ではなく、型押しされたビニール。袖の部分がポケットのようになっていて、会場のMAPが挟まれています。特注のビニールカバーってすごくコストがかかるのですが。3カ国語版の見せ方もお見事。


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銀賞(日本)
『くままでのおさらい 特装版』
ビーナイス発行

世界で最も美しい本コンクール上位賞では、日本から唯一の受賞作品。井上奈奈さんの絵を中野活版印刷店がリソグラフで印刷し、美篶堂が手製本で仕上げています。円形にくりぬいた板紙を重ね合わせてクロスを貼った表紙もすばらしいです。職人の手で丁寧につくられているのが伝わってくる本。

(後半へ続きます)
by dezagen | 2018-12-18 00:43 | 展覧会 | Comments(0)
上海 高田唯個展 「高田唯潜水平面設計展」レポートその2
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 ライター渡部のほうです。
 上海の「高田唯潜水平面設計展」。レポートその2は、時系列&もう少し写真中心で。でもどれがもらった写真で、どれが自分の写真だったかが分からなくなってしまい、撮影者は混在してます。前回のブログと内容のダブりもありますが、ご容赦下さい。以下、敬称略、だ・である調、です。

■展示。準備から開場まで

 「高田唯潜水平面設計展」のオープニングは8月25日。
 高田唯と北條舞のオールライトチームと、渡部千春は別便で8月23日に上海入り。コーディネーター役の盛哲は中国の実家から新幹線2時間半で23日に上海入り。もう1人の日本在住コーディネーター戴勇強は24日に上海入り。台中展示のギャラリー綠光+marüte(8月27日まで高田唯個展を開催)の運営者木村一心も台湾から駆けつけてくれ、22日に上海入り。
 海外での展示は、展示者が1人でぽーんと行って後はお任せ、というわけにもいかず、皆ほとんど手弁当なのだが「何か少しでも手伝う事ができれば」と集まった助っ人達。高田唯は本人がお願いする事がなくとも、助ける人を集めてしまう持って生まれた才能を持っている、ような気がする。

 企画者の Neue Design Exhibition Project は上海在住のグループ。メインのメンバーは、
秦哲祺 (チン・ジャチ、プロジェクトリーダー、 キュレーター/Liang Project Gallery 共同運営者、視覚デザイナー )、
龚奇骏 (ゴン・ジジュン、キュレーター/デザイン事務所 K&C Office共同運営者、「上海活字」プロジェクト共同運営者)、
叶博驰 (イエ・ボウチ、プロダクト担当)。
 彼らと高田唯は展覧会の前、6月7月と短い間に3、4回の打ち合わせを行い、Vice 中国の映像記事の撮影も行っている。

 というような体勢で準備が始まったのだが、台風のためオールライトチームのフライトが遅れ、本格的な設営が始まったのは23日の夜から。昼間のギャラリーはこんな。

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 ゼロ状態。

 オールライトチームが到着し、早速什器レイアウトや壁に貼る紙モノにテープを貼る作業など。小さい作品が多いだけに、時間が掛かる。ひたすら地道な作業の積み重ね。
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 上海に行くまで高田唯も見れなかった、オープニングインビテーションの現物。
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 見て「良い!」と Go サイン。

 24日は早朝から深夜まで。設営と打ち合わせ。(私は自主研究のスーパーマーケットパッケージ観察で、展示準備には夕方出勤)オールライトチームと盛哲は、ぼろきれ雑巾並にぐったり。でも展示のディテール、打ち合わせの大事な所はちゃんと目がカッと開いてて、本当によく頑張ってた、オールライトチーム。
 
 巨大ポスター。これはガタイのいい兄さん達の仕事。
 後ほど聞いた所によると、到着後、急遽ポスターの1枚を変更したそう。出力は現地で行ったので、現物を見るのは到着してから。モランディ展のポスターを予定していたが、24日に確認した時、思ったような色が出ておらず、別のもので出力し直し。25日のオープニングにギリギリ間に合った、とのこと。
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 壁に貼るもの、レイアウトをおおよそ決めて、貼る。
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 台中の木村一心が一生懸命貼っている。壁や床のがたつきなども計算に入れなくてはいけないため、最初にざっくり水平器でアタリを着け、その後は目で水平感を整えていく。
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 こういう微調整は、さすが建築士、ギャラリー運営とで慣れている木村一心の技量発揮。

 意外なところで困ったスポーツ新聞のトリミング。
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 アクリルケースの蓋を置く時、保護シートを剥がす時に静電気が発生して、小さい紙が動いたりアクリルにくっついたり。保護シートを慎重に剥がし、さらにその後、少しずつアクリルケースを上げて、ズレたものを直す。

 さて、25日、できあがり風景。
 ギャラリー外観。
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 ギャラリーはコの字型。時系列に作品がずらりと並ぶ。
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 入ってすぐの右側スペースには巨大ポスターが6枚。素材はターポリンだったような。
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 中間のスペース。書籍は手に取って読んでもらえるよう、吊した状態。
「潜水というキーワードから、会場を海に見立て、本をカモメのように飛ばした」と、高田唯の説明。
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 奥の窪みスペースにトリミングを集中。新聞のトリミングも落ち着いていた。
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 壁平面の最後の作品は今回のメインビジュアル。バイクの泥よけ(フェンダーフラップというらしい)をモチーフにしたフライヤーなど。
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 さらに奥の部屋は暗室になっており、Allright Music東郷清丸のヴィデオと、今回の展示のために Vice 中国が作った映像が流れる。
映像はこちらで見ることが出来る。 http://thecreatorsproject.vice.cn/read/Yui-Takada-at-Tokyo-and-Shanghai 

 オープニングは4時から、のはずだったが、その前から人がどんどん入り始め、ギュウギュウに。造形大の中国人留学生卒業生も来てくれた。
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 オープニングの挨拶時。
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学術アドバイザー张磊(同済大学設計創意学院 副教授 http://tjdi.tongji.edu.cn/TeacherDetail.do?id=4656&lang=の素晴らしい紹介文&開場宣言。
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 一般公開の26日。高田唯はサイン攻め。
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 夜は別会場、衡山和集 THE MIX-PLACEという書店兼カフェでトークイベント。登壇者は高田唯に加え、渡部千春、张磊、Nod Young(グラフィックデザイナー https://www.nodyoung.com)。私が入って何をやってたわけでもないんだけども…。
 こちらも定員50人で立ち見の状況。満員(すぎ)御礼。

 トークイベントの会場写真はうまく撮れず。下は张磊、Nod Young。
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 27日。ギャラリーで取材を受ける高田唯。通訳は戴勇強(ペン2本使い。達人だ)。
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 オールライトチームは27日の午後までギャラリー在廊、その後帰国。木村一心は27日の台中展示最終日のため、26日の昼に一足早く台湾へ。私はトークイベントの後、深夜便で日本に帰国。盛哲と戴勇強は中国の実家へ。
 近隣の東アジア各地から人がそれぞれバラバラと集まって、プロジェクトの中の自分の出来る事をやって、また各自帰っていく、というスタイルはなかなか良いと思う。

■展覧会カタログ

 今回の上海展示では、展覧会カタログが作られた。G8の「遊泳グラフィック」でもカタログが作られなかったが、さすがスピードのある上海だと感心。

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(写真、Neue Design Exhibition Project提供)
デザイン:ALL RIGHT GRAPHICS+盛哲、印刷:上海艾登印刷
A4変形 64ページ

 展示作品の一部が赤い表紙の中に綴じられ、外側の黄色いページは寄稿文。Neue Design Exhibition Project(秦哲祺、龚奇骏)、 張磊、沈浩鹏(デザイナー、アーティスト)、谭沛然(グラフィックデザイナー、インタラクティブデザイナー、字体愛好者)、NodYoung、邵年(グラフィックデザイナー)がそれぞれ、デザイナーからの視点、学術的な分析などを書いている。(以下、抜粋文は意訳。翻訳協力:戴勇強)

 例えば Nod Young は
「高田唯の作品からはある種少年のような単純さや衝動が感じられる。だから僕は彼のことを「小唯(唯ちゃん)」と呼ぶ。主催者が送ってくれた資料の中に高田唯のスナップ写真があった。(北京ダックで有名な)全聚德レストランでココナツジュースを飲んでいて、財布はテーブルに置きっぱなし。なんだか長年の友達のような気にさせる。だから僕は彼のことを「小唯」と呼ぶ」

「彼に対して「アンチデザイン」「デザイン界のダメな子」などのコメントも聞こえてくるが、これは正しい判断とは言えないだろう。彼はデザインの境界線を突破し、さらにパワフルなものにさせている。ただし彼自身のきっちりとしたデザイン能力がなければ、ここまで作る事は無理だろう。/印刷工芸(例:活版印刷)にしても、80年生まれの若者らしい今の時代の考え方で探求し、この知識経験をベースにデザインを作る。彼の作品に若い人々はすっと入っていける。それゆえ他から飛び抜けたものとなっているのだ」沈浩鹏

「今日のグラフィックデザインにおいて高田のアグリーは重要である。新世代の人々は新しい視覚言語を求めている。高田の作品はグラフィックデザインがルール化し束縛してしまった美醜の境界、その幅を広げている」邵年

「「逸脱者」これが高田唯の作品を見た最初の印象である。/高田の作品は見る、討論する価値がある。重要な事は「今見る」「今話す」事だ。多くの人は高田唯の作品を前に言葉を失い、文字にも書き表せない。過去の評価基準から判断するのは意味がないからだ」Design Exhibition Project チーム

 分かりやすいところを抜粋したが、寄稿文はそれぞれかなり長くおおよそ日本語で1600字から長いものでは6000字ほどの訳文になっていた。
 彼の作風が一部で「ニューアグリー/新醜/New Ugly」と呼ばれているため、アグリーなのか、それとも新しい言語か、という問題を解くのに、現代思想や、特にポストモダンを例に取った歴史的解釈など、様々な観点から論じられている。
 
 高田唯自身「ニューアグリーって何!?」と言っているくらいだし、私自身も高田唯の作品が醜いとは思わない。誰が最初に高田唯を「ニューアグリー」と呼び始めたのか調べてみたが、はっきりせず、どうもネット上のコメントから出てきたようだ。ちなみに、他にニューアグリーに分類されるのは、服部一成、澁谷克彦、北川一成などが挙がっていたのを目にした。
 観点としては同意しないものの、こうした見方が出て来るのは興味深い。こうした新しい視点に出会えるのも、日本という小さな国から離れた、距離感のお陰かもしれない。

 最後に、今回のスタッフ写真を。
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左から盛哲、北條舞、秦哲祺、高田唯、雅巢画廊/Yard Gallery運営者(すいません、名前分からず)、龚奇骏、叶博驰

■展覧会概要
「高田唯潜水平面設計展」
場所:雅巢画廊(Yard Gallery) 上海 普陀 莫干山路 M50芸術区 4-B
期間:2018年8月25日〜9月9日 11:00〜18:00 (月曜休み)
企画運営:Neue Design Exhibition Project
学術アドバイザー:張磊
協力 雅巢画廊、上海艾登印刷、竹尾(上海)、VICE 中国、国際交流基金 北京日本文化センター


by dezagen | 2018-09-02 10:15 | 展覧会
上海 高田唯個展 「高田唯潜水平面設計展」レポートその1
 ライター渡部のほうです。
 また、高田唯ネタです。
 夏休みが始まると同時に台湾台中の展示運営、下旬に上海での展示の追っかけ、と今年の夏休みの自由研究は「高田唯」なんだな、と思っているこの夏の終わり。

上海「高田唯潜水平面設計展」展示外観。
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 上海での展示は私の企画ではなく、外部の者として見に行って来たため、まだ全体把握できてないところが多いので、まずは自分のメモから概要を。
 後でもう少し資料を読み込み、写真を足した続編を書く予定。

 今回上海の高田唯個展、「高田唯潜水平面設計展」。昨年 G8での髙田唯展「遊泳グラフィック」に対応し、遊泳からさらに深く潜った、潜水へと名付けられたタイトルだ。
 オープニングイベントの8月25日(土)から始まり、一般への開場は26日(日)から。9月9日(日)まで開催。

 場所は旧紡績工場を改装し多くのギャラリーやアート関係のショップなどが集まるエリア、M50創意園の中の雅巢画廊(英名 Yard Gallery)。最寄りの地下鉄駅からは10分ほど歩く、割に便の悪いところなのだが、観光スポットになっているらしく平日も人が絶えず、土日は老若男女様々な人が訪れていた。

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(広大すぎて、全体が分かるような写真は撮れず…)

内観一部
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 この写真はオープニングイベントが始まる前に撮ったもの。残りは後でいいや、と思っていたら、一気に激混み。オープニングイベントも、次の日の一般開場日も人が尽きず。写真が撮れない…。
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 作品は過去10年の仕事を入口から時系列に並べ、奥が一番最新の作品、となっている。
 展示に合わせて作られた新作、今回の展示ポスターとチラシは現地のバイクの泥よけを参考に作られたもの。
 
 現地ではバイク屋が泥よけを無償で上げるらしく、それが広告になっている。
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 恐らくバイク屋が自力で、word(?)などを使いながら作ったと思われる、ベタ感。高田唯はこの素人デザインの威力に多いに魅せられた。

それを元にメインビジュアルを作成。先の会場外観などに使われている。こちらはバイクに着けたもの。
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 オープニングのインビテーション。濃い赤地に金と黒の箔押し。箔押しの押し感も相まってものすごい力強いインビテーションに。
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 展示について、中国語が分かる方は企画者のサイトのこちらをご参照。

 前回のブログで https://blog.excite.co.jp/dezagen/28569141 今後の海外での活動に対して、高田唯は
「依頼してくれた相手の国だったり、気持ちだったり場所だったり環境だったり、そういうところから何かを見つけたい」
と言っている。
 
 現地のものからインスピレーションを受けて作られたポスターやインビテーションのデザインは、それが目に見える形で表れたものだが、この形に至るまでの過程、主催者の人柄や環境を見てみると、なるほどと感じるところが大きい。

 この展示を企画したのは、秦哲祺さん、龚奇骏さんを中心とする Neue Design Exhibition Project 。秦さん、龚さん共まだ20代半ばという若さだ。秦さんはすでに Liang Project Co Space というギャラリーを運営しているが、国内のファインアートが中心だ。
 彼ら自身も新しい試みとあって、印刷会社や上海の竹尾、VICE 中国 http://www.vice.cn、北京日本文化センターなどの協力を仰いだ。
 発案をしたのが5月頃だったというから、それから3ヶ月弱。その間に高田唯を説得し、各企業や機関の協力を取り付け、展覧会を開いた、というものすごいスピードである。

 ざっくりだが、台湾台中と比較すると、上海は全体的にスピードが速く、いきなり感があっても受容する素養がある。力強いものが街中に溢れ、日本や台湾と比べるとかなりマッチョな印象を受ける。さらに企画者が若い人達とあって、これは本人達から直接聞いたわけではないが、かなりエッジの利いたものを求めている印象を受けた。
 こうした環境の中では、バイクの泥よけというモチーフは、スピード感がありやや乱暴な運転具合も上海という街を象徴する1つであり、とはいえ彼らの生活の中に密接しすぎて見過ごされているものをうまく発見したように思う。
 
 今回、グラフィックデザイナー/アートディレクターの高田唯を選んだのは、
「その作風だけではなく、デザイン、アート、音楽、教育者、と様々なフィールドを自由に行き来するその生き方そのものがアーティストだと思った」
と、秦さんは言う。
「上海では、大御所デザイナーが美術館でやることはあっても、中堅や新しいデザイナーの展覧会を行う場所は少ない。だからこそ自分たちでやるべきだと思ったし、やっぱり上海の人も生で高田唯さんの作品を見たり、アーティストとしての高田唯さんに会いたい。オープニングにアート界やデザイン界、他様々な業種の人々が来て、トーク/レクチャーが満席だったのも、やはり本人を見たい、という表れ」

 秦さんとの話や、トーク/レクチャーイベントでの話で、現地の人から時々出てきた言葉「中国はデザインが遅れている」という認識が気になった。
 確かに第二次大戦後、東西が分断してから本格的な市場開放まで、つまり40年代後半から1992年までは、西洋を軸とする文化圏では、後期モダニズム、およびポストモダニズム、デジタルへの移行期、と大きなデザインの流れがあり、現代のデザインはそれをベースにしている。
 だが、その間社会主義的リアリズムであったり、独自のデザイン文化があり、またさらに遡れば、1920年代〜40年代初頭までの世界的に「デザイン」という言葉と文化が認知されてきた時代には、東京よりも上海のほうが先を行っていた。
 また、現代中国のスマートホンのアプリ普及もデザインされたものと考えれば、むしろ日本よりも先を行っているとも言える。

 中国はデザインが遅れているのではなく、独自のデザイン文化を持っている、という解釈のほうが正しいように感じる。もっと自信を持っても良いのではないだろうか。
 ただし、法律的には海外の情報は多く遮断されていて、日本から中国の情報を得ることも、中国から日本を含め外国の情報を得ることも、ハードルはある。例えば日本と台湾、香港などと比較すれば、交流の量が圧倒的に少ない。

 それぞれが、少ない情報を頼りに憶測を展開してしまっている状況を改善できれば、もっと面白い事ができそうな気がする。今回の展示が打開策の1つとなってくれる事を期待したい。

by dezagen | 2018-08-29 20:30 | 展覧会
台湾 台中 高田唯展「形形色色」 その4
 ライター渡部のほうです。

 台中高田唯の展示企画中、6月頃だったか正確に覚えていないが、高田唯から衝撃的なニュースが。
「実は…、上海のギャラリーからも声が掛かってて」
 時期的に大学が休みになる8月にやる事になり、高田唯としては初旬に台中、下旬に上海、と8月に二つの海外展示を行うことになった。
 上海の展示は私の関わるところではないのだが、中国語圏での高田唯、及び日本のグラフィックデザインの受容を知りたいと思っていた私には大変なチャンスである。まあ、その分高田唯にとってはかなり忙しい夏となったわけだが、いつも動き回っている回遊魚のような人なので、忙しさは変わらないのかもしれない(ちなみに高田氏、9月は銀座の老舗画材店月光荘 http://gekkoso.com が持つギャラリー3箇所同時の個展が控えている)。

 上海での個展の特設サイトが出来ていたので、参考までに URL を。
 かなり規模の大きい展覧会になるようだ。
 
 さておき。
(以下、ギャラリー周辺のものなどの写真は後藤洋平さんの撮ってくれたものから)

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 2つ目の海外個展も控え、国外での仕事(展示も含め)がますます広がりそうな高田唯に、1つめの海外個展、つまり初めての海外個展となった台中での展示と今後の展望について聞いてみた。

— 初日とアーロン・ニエさんとのトークイベントも終えて、ひとまず初めて海外で展示を行った感想を。

高田「台湾の人は、割と作品のコンセプトを聞きたがりますね。なんでこういう形が生まれて、こういう色を使っているの、とか。
何かキャプションとか解説を付けたほうが良かったのかとも思います。でも、トークでも言いましたけど、コンセプトを説明してしまうと、そのまま解釈されてしまうのがつまらない。見てくれる人、それぞれの想像力をかき立てたいと思っているので、あえてほったらかしにするというのもアリかな、とも思うんですけれど、そこはいつも悩みどころなんです。ちゃんと伝わったかな、と不安になることもある。
トークでは伝わったと思うのですけど、聞いていない人には分からないので、作品の解説ではなくても、働き方とか、何を意識して生きているかとか、周辺の解説はしても良かったかもしれない」

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— すごく多くの人から話しかけられたり、質問されたりしてましたよね。どんな事を聞かれていたんですか?

高田「コンセプトの事とか、使ってる紙とか印刷技術とか。あと台湾の印刷技術が良くない、コントロールが効かないって言っている人もいましたね。」

— どう答えたんですか?

高田「僕自身、日本で印刷屋さんにはこういう風にして欲しい、ということを伝えてる。ただ不満を言うだけではなくて、チームとして一緒に作る、一緒に向上していくようにしたらいいんじゃない、というアドバイスをしたつもりだけど、伝わったかどうか分からない(笑)」

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— 次は上海と続いて、国外、言語や慣習が異なるところ、に続いて行くんですけど、やりたいこととか、見つけたいこと、何かありますか?

高田「とりわけ具体的にあるわけではないんですけど、依頼してくれた相手の国だったり、気持ちだったり場所だったり環境だったり、そういうところから何かを見つけたい。全部僕の仕事ってそうなんですけど、相手ありき。僕がいるようでいない。結構カメレオンみたいなタイプ。その時、その人、その場所の求めている事に答えたいというのが根っこにはあって、そこから自分がやりたかった事も引っ張り出して乗っける、みたいな感じですかね。
だから、もしヨーロッパだったらその場に行って、見て、感じて、ギャラリーの人や美術館の人と話して、そこから求めている事や、逆にその国にあまりない事、自分の一生で経験したいい事、面白い事、自分の価値観をまぜながら表現したいです」

(綠光+marüte facebookページで当日の動画が見れます)

— 会期は終わってないけど、台中の個展は展示にもトークイベントにもすごく沢山の人が来てくれて、ひとまずスタートとしては成功だったと思います。これからもっと他の国や地域に行くと、これまで蓄積してきた経験だったり、常識だったりが通用しない事もあるだろうし、思いがけない障害もあると思います。これは国外に限ったことではなくて、国内でもあると思うんですが。そんな時はどうします?

高田「何か困った事が起きたときこそ、オールライトの中で、自分たちは何が得意で何が苦手か、(態度として)何が美しくて、美しくないかを判断するために、僕たちが大事にしているのはそもそも何だっけ?というのをみんなと共有して対応するようにしています。そうすることでスキルアップしている。そこは一番大切にしていることかも。かなりポジティブにやってます。
ネガティブにはいくらでも考えられる。でもポジティブに考える事もいくらでもできる。だったら無限にポジティブに考えて行くほうが人生楽しい。そういう風に斜めから、あるいは裏側からとらえようとする考え方にさせてくれたのが「デザイン」でした。いい学問だと思います。「柔軟学」と言っても良いかもしれません。先輩達の文章や言葉、態度を参考にしながら今に至ったので、感謝しています。今の自分には大学という側面もあるので、僕も若い世代にバトンタッチできたらいいなと思っています」

— 大学でそういう高田先生の考え方って伝わってきている?

高田「僕は言葉で伝えるのは苦手なので(もちろん言葉にはしますが)、背中を見せるのが一番伝わるかなと。仕事を楽しんでやっている姿や、個展をやっている事を見せるのが一番早いと思う。展示やイベントに学生も手伝ってもらったり、巻き込んだりとかもしながらやっています。
学生も含めて周りを信用しているし、安心して楽しんでいる。いい味方を付けていくのがオールライトの得意なところなんだと思う。計画性があってやってるわけではないけど、やりたい事を周りに言う事で、意外にそれが計画的に進んでいるのかも」

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— 今後、仕事をしてみたい所、具体的な場所や分野などはありますか?

高田「誰もが知っているようなビッグクライアントの仕事もしてみたいです。仕事の振り幅を作りたい、考え方を広げたいから。
アーロンさんのような仕事の仕方が理想のスタイルなのかもしれない。台湾の蔡総統の選挙キャンペーンを手がけたり、セブンイレブンの商品を手がけたりしながらも、CDのジャケットも小さい出版社のブックデザインもパッケージデザインも丁寧にやっている。
意外にこういう人って日本では実はあんまりいない。何らかの専門になっていく傾向がある。周りもデザイナーもこれが得意だから、他はもう踏みこまないようにしていこうというような、カテゴライズする国民性があるんで、そこもぐちゃぐちゃにしたい。
まだオールライトの仕事はこじんまりしているんで、そういう意味でもメジャーなところでも普段やっている丁寧さを見せたいし、ビッグクライアントに持って行ったらどうなるのか自分でも見てみたい。世界にビッグクライアントはいっぱいいる。これも海外に出していきたいと思っている理由なのかもしれないです」

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 イベントなどで話を聞いたりした事はあったけれど、ライターとしてデザイナー/アートディレクターの高田唯をきちんと取材する機会がなかったため、今回話を聞いたことは新鮮だった。
 大学では同じ教科を教えていたり、学内で作っている冊子を共同で担当(渡部が文章担当、高田唯がデザイン)したり、と、打ち合わせはもちろんするものの、基本的には分担をしっかりと分けていて、お互いの仕事にあまり口を出さない。むしろ、完全にお任せ状態である。
 なぜかと言えば、高田唯が出してくるデザインに驚きたいから。
 高田唯(オールライト、というべきか)の仕事はほとんどルーチンワークではなく、これまでにないもの、をどかんと出してくる。時に斬新すぎて私のような中高年では理解の範疇を超えることはある(笑)。どこからアイデアソースがやってきたのか分からない得体の知れなさ、それでいて、どうしても目が行ってしまう魅力がある。
 本人は計画性がない、と言っているが、あえてしっかりとした枠を設けない事で、その時に出て来る瞬発力という力が表現として出て来るのではないだろうか。状況を、歴史を、常識を理解した上で、出してくる突破力は他に類を見ない。
 瞬発力、突破力が効果的に出てくるのも、これまでの蓄積はもちろん、オールライトの社員を始め周りの理解や協力がある事も大きいとも感じた。周囲環境に合わせ力を溜めて出す方法は高田唯の言う「柔軟学」という言葉に集約されるのかもしれない。
 
 今のオールライトの活動を見ると、ビッグクライアントの仕事が来るのも時間の問題のような気がする(とはいえ、どんなクライアントだろう)。さて、次の上海ではどんな展開が待っているのだろう。

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トーク終了後、左から通訳の楊曇硯、渡部千春、アーロン・ニエ、(ポスターを挟んで)高田唯、オールライト代表取締役北條舞、綠光+marüte 運営者木村一心)

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8月5日に手伝ってくれたスタッフの皆さん。東京造形大学のオープンキャンパスのTシャツを着てもらいました。




by dezagen | 2018-08-16 13:48 | 展覧会
台湾 台中 高田唯展「形形色色」 その3 
ライター渡部のほうです。

今回はなぜ高田唯展「形形色色」を台湾で行ったのか、その背景となる台湾、近隣アジアのデザイン状況についても絡めて書きます。
ほぼ自分のメモ用です。
今回は「だ・である」調で、高田唯は敬称略です。

 今回、台湾台中で高田唯の個展企画(というか、言い出しっぺ)を手がけた私の順番からすると、以下のような理由がある。

 昨年の9月から10月に掛けて、銀座の G8で高田唯展「遊泳グラフィック」 http://rcc.recruit.co.jp/g8/exhibition/g8exh_201709/g8exh_201709.html が行われ、多くの近隣アジア圏の来場者がいたこと。急遽3カ国語(英語、中国語、韓国語)の追加解説文を作り、貼ったという。
 高田唯のグラフィックデザイン、特にここ数年のもの、は直感的に響く人にはすぐ響くのだが、一般的に分かりやすいデザインというわけではない。にも関わらず、外国人が楽しそうに見ていたのはなぜなのか疑問に思った事。

 高田唯が「海外で個展を開いてみたい」と言っていたのは、この前からずっと言っていたような気もするが、G8での展示を受け、より一層口に出していたような気がする。

 そのすぐ後、10月下旬から11月上旬に掛けて、台湾台中の綠光+marüte で田部井美名の展覧会があった。(参考 https://dezagen.exblog.jp/27455430/)ここでも多くの来場者があり、ギャラリートークではギャラリー内に人が収まらない程だった。

 2018年1月は家具デザイナー藤森泰司の展覧会が台北の田園城市生活風格書店内ギャラリーで行われ、ここでも多くの台湾人が訪れたのを目にした。

 私が実際に足を運んだのは数が少ないが、個人レベル、ギャラリー単位でかなり多くの日本人デザイナーの展覧会が台湾で行われている。アートブックフェアやデザインイベントなどの出展者もカウントすると、相当数の日本人デザイナーやイラストレーター、アーティストが頻繁に台湾で作品を発表している。

 2016年に遡れば『単位展』(2015年に21_21 DESIGN SIGHT で開催)が台北に巡回展を行っている。『単位展』は展覧会規模も大きく、台湾での会場(松山文創園區 五號倉庫)も有名スポットではある。とはいえ、大御所(もしくは超有名)デザイナーの海外展覧会のような「メディアでよく見るものの本物を見に行く」「お勉強のために」と言ったコンテクストとはやや離れたものではある。「美術館レベルのメジャーさではないけれど、好きな人は見に来る」という展示だ。

 今度は若干先走りして、会期中にギャラリーで取っているアンケートの中の質問「好きな日本人デザイナーは?」の回答は幅広い。
 現状集まったものから見ると、田中一光、原研哉、浅葉克己、仲條正義、長友啓典、佐藤可士和、葛西薫、KIGI、 色部義昭、水野学、立花文穂、田中義久、服部一成、祖父江慎、寄藤文平、脇阪克二、矢後直規、吉田ユニ、長嶋りかこ、中村至男、佐藤卓、大黒大悟など(順不同)。
 日本人の美術系大学の学生でもこんなに出て来るのかどうか。台湾人のデザイン好きな人々はかなり日本のデザインも勉強していることが伺える。

 受け入れ側である台湾がかなり大きく変化している。綠光+marüte のある台中は台湾の首都台北ではない場所で、主に日本人のアーティストを紹介しているギャラリー、とかなり珍しい場所ではある。
「ユニークな立ち位置が台湾で注目されることも事実で、毎回かなりの来場者があります。毎回の展示に足を運んでくれる方や作品を購入してくれる方が徐々に増えてきています」
と運営者の木村一心は言う。首都圏でなくとも受け入れる層があり、確実に増えている。

 少し話を変えて、近隣アジアの変化も考えてみる。
 例えば10年前であれば、近隣の東アジア圏で大御所とまではいかない日本のデザインを展示する場としては、香港が多かったように思う。デザイン文化のレベルが高く、かつ中国語と英語というメジャー言語を使用している事もあり、国際的にも通用するデザイン感覚を持ち合わせているため、香港=東アジア圏でのデザインハブ地という印象だった。
 日本や韓国もデザインの感度は高いが、固有文化と固有言語があり、他国には理解されずらい難点があった。
 
 ところが昨今、近隣アジア圏全体で優秀なデザインが一般レベルに普及してきている。また、個人規模での展覧会(個展やグループ展参加)は、東京、ソウル、台北、上海、北京、香港など、至る所に分散してきている。

 言語が通じなくとも、グラフィックデザインという視覚言語、プロダクトデザインなら体験(同時に視覚的な効果もある)と、日本語、韓国語、中国語などを完全に理解せずとも理解できる別の「言語/コミュニケーションツール」がある。これはデザインの強みでもある。

 このような近隣アジアのデザインを介しての交流は、デザイナーにとってチャンスとなりうる。行動範囲を広げる事で日本国内ではできなかった、思いつかなかったような仕事、考え方、作り方に出会える大きな機会になる。

 高田唯も「海外で個展を開きたい」と思っていた。展示オープニングを終えた時、改めてなぜ海外でやりたいと思っていたのか聞いてみた。
「自分は言語能力がなくて、英語も喋れないような状況なんですが、そんな自分のデザインがどこまで通用するのか、どう見られるのかが気になった事。少し自分を苦しめるという、アーロンさんの考えと近い。また、そういった場所に身を置くことで、自分が何を思うのか知りたかった」
という答えが返ってきた。続けて、
「また日本のグラフィックを見過ぎて、少し飽きてきているのも理由の一つ。もっと目に刺激が欲しい。SNS で海外のグラフィック事情が見れるようになって、外に出てもっと見たい、という欲が出てきた。同時に、オリンピックも近づいて来ている。大学でも中国人が大勢いる。抗えないグローバル化の状況が身近にあるというのも理由としてある」

 高田唯が言及したように、留学生に関する課題も今回の目的の一つだ。
 高田唯も私も現在東京造形大学教員という職務にも就いている。うちの大学に限らず、アジアからの留学生は年々増している。現状は主に中国本土、韓国、台湾が多い。
 それぞれの土地でデザイン精度が上がっているにもかかわらず、あえて日本で勉強したいと思う理由は何なのか。彼らは何を求めているのか。どのように指導すれば彼らの期待に応えられ、才能を伸ばす事が出来るのか。疑問は尽きない。

 高田唯と私の希望と疑問を解消させるのに、他力本願では進まない。ここは一つ自力でやってみよう、と考えたのが、今回の高田唯展「形形色色」という結果になった。
 自力とはいえ、全部自分たちの資金でやるには無理があり、今回は大学を通じて桑沢学事振興資金を使わせてもらった。このことで随分資金的には随分大きなサポートとなった。
 場所として台湾台中を選んだのは、上記したように台湾と日本のデザイン交流が増している背景があり、近隣アジア及び他諸外国の中でも親和性が高い土地であり、綠光+marüte が既知のギャラリーで日本人の運営というやりやすさから。また同時に中国語圏、世界に広がる華人の中国文化圏へのアピールにも繋がりやすいためである。
 
 展示はあと2週間ある。その間の反応も追い続けている。さらに高田唯は8月26日からは上海での個展も控え、ここでの反応も見てきたいと思っている。
 
 次回はオープニングとトークイベントを終えた後の高田唯取材をまとめたものをアップします。
 

by dezagen | 2018-08-14 19:25 | 展覧会
台湾 台中 高田唯展「形形色色」 その1
ライター渡部のほうです。

台湾、台中での高田唯さん(大学では同僚なんで、「さん」付けは慣れてないが、さておき)の展示が、8月4日から始まった。

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ギャラリー「緑光+marute」と 同じ敷地内の別スペースも使い、2カ所で展示。
ギャラリー内ではこれまでの作品を入口から奥の部屋に行くに従い、過去から現在へと時系列で並べていく方式。

こちらは入口付近

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入口から入って右横の奥部分。
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さらに奥の部屋。
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高田さんの作品の中に、真ん中のオレンジのバケツや青い手袋のようにちょいちょい現地の日用品や印刷物が入っているところがミソ。
斜めリングノートの横にあるのは、台湾の蚊取り線香。
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(※)


普段見過ごしがちな身の回りの中の形や色の面白さに気付いてもらえるといい、あるいは日用品だと全然気がつかないで作品として見てしまってもらってもいい、という高田さんの意向。

こちらは第2会場のガラス張りのお部屋。

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現地の新聞の求人欄からインスピレーションを得た新作グラフィックが上に吊られ、下にはその元となった新聞が並べられている。
下の写真は、普段からあるものなのに、台湾現地の人が下に敷いてある新聞も写真に撮っていたのが印象的だった。これまで見えていなかった魅力に気付く瞬間。

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(※)

今日はまずはここまで。

写真撮影:後藤洋平
(※)は渡部千春撮影

by dezagen | 2018-08-05 19:38 | 展覧会
第20回 亀倉雄策賞受賞記念 中村至男展 2018 を新潟県立近代美術館で見ました
ライター渡部のほうです。

東京では今年春、G8で行われた『第20回亀倉雄策賞受賞記念 「中村至男展2018」』。 http://rcc.recruit.co.jp/g8/exhibition/201804/201804.html
新潟県立近代美術館 https://kinbi.pref.niigata.lg.jp/tenran/kyosaiten/kamekurayusakusyo2018/ でも行うというので、ラストチャンスの6月30日(会期は7月1日まで)、開催記念講演もあるというのでダッシュ日帰りで行って来た。

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新潟県立近代美術館では、受賞作である2017年の『中村至男展』と亀倉雄策賞受賞記念『中村至男展 2018』を一気に見れる、という贅沢さ。
これは良かった。全部全部チクチク見て回りたかったが、これまでの亀倉雄策賞受賞作を見せる『亀倉雄策賞1999-2017』展もあり、早足で。。

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そして講演。対談相手は長岡造形大学の池田光宏准教授。中村さんの大学時代の後輩という間柄のせいか、和やかな空気。
G8で行われたトークショーのほうに行けず、行った人から又聞きしてただけなのだけれど、G8のほうではかなりコアなトークが交わされていた様子。
今回は聴講者の方々も本展主催者である長岡造形大学の学生さんが多く、「分かりやすい作品解説」になっていたのが印象的、とはいえ、G8のほう行ってないから比較は出来ないけども。
帰り道にお会いした浅葉克己先生が「中村さんは喋りが上手になったよね」と言っていたので、あながち間違ってないと思う。

講演では1990年代のソニー時代の作品の話から、明和電機の仕事、佐藤雅彦さんとの仕事(IQの映像、久々に見ました。今見ても面白いなあ)、展覧会ポスターや『シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン展』での参加作品、『どっとこどうぶつえん』などの絵本作品など、現在に至るまでの仕事をきっちり見せて解説。

以下、自分の手書きメモから起こしているので少し口調が違うかもしれないけれど、記憶に残った中村さんの言葉。
「2000年くらいから(理論的なデザインより)生理的に、「分かるー!」と思うような作品になってきた。グラフィックはそもそも言語化できないものを図像化するものだから、言葉で説明するとつまらない。目で見た時の小気味いい感覚を大事にするようになってる。」

画面には『秀英体100』展 http://www.dnp.co.jp/shueitai/event/gggshuei/index.html の秀英体の春の字をサクっと切ったりとか、(確かTDC bccksの『Twin Universe』)車と車がぶつかっちゃう!と思いきや、重なって抜けていく作品などが映し出され、聞き手の池田さんから

「日大の集団行動みたいな感じ」

という名言が飛び出す。それを受けて中村さんが
「あれは、やられた、と思いました」

に笑ってしまった次第。
他にも面白いお話が沢山あったけれど、この辺で。



by dezagen | 2018-06-30 22:20 | 展覧会