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カテゴリ:展覧会( 264 )
『山下ともこ:graphic show』
ライター渡部のほうです。

久々に都心に出て、グラフィックデザイナー山下ともこさん http://www.tomokoyamashita.net の展覧会『山下ともこ:graphic show』を見て来ました。
場所はギャラリー5610。
2009年からアートブックフェアなどで発表してきた自主制作のzineやポスターに加えて、新作のグラフィックをポスターに仕上げたもの(写真奥)を展示。加えて、過去のモチーフからスカーフを2種作成。

山下さんの自主制作作ヒヒンは、ほぼ一貫して直線と単純曲線を組み合わせた幾何学立体をモチーフとして、タイルのパターンをはめたものに始まり、白い紙や罫線入りノートを折った形状、積木風、と、毎回異なる見え方を探求している。

私自身、アートブックフェアに行く度山下さんのzineを買っているので、ほとんどのものは持っている。
もちろん、見ている。
が、こうして「広げて見る」と、今まで見えていなかったところがぐっと見えてきて、新しい発見がある、ということに気がついた。というより、私が見過ごしていた、というほうが正しいのだが、細かなテクスチャーの違い、垂直だと思っていたもののほんの少しの角度、など。

これは恐らく私がzineを本の一形態として考えているがゆえに、ページをめくり流れで見て行ってしまう。1つ1つのページを個々のグラフィックとしてじっくりと見切るということをしていなかったせいだろう。

1枚として見る。複数のページを一面として見る。こうした事ができるのも展覧会ならでは。
展覧会の仕立ても、見せ方に遊びの要素を入れる事はなく、極めてシンプル、直球でグラフィックを見る、正にタイトル通りの「graphic show」だ。

展示は今日までなので、是非に。

by dezagen | 2018-04-21 12:18 | 展覧会
東京造形大学 山手線グラフィック展 メインビジュアル
 ライター及び東京造形大学教員渡部のほうです。

 「東京造形大学 山手線グラフィック展」について、今回はメインビジュアルの説明です。
 前回、前々回と「です・ます」調で書いてましたが、どうも感想文っぽい感じがぬぐえないので、今回は客観的に書けるよう「だ・である」調です。

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 告知  https://blog.excite.co.jp/dezagen/28070175/ の際にも書いたが、メインビジュアルのデザインは、永井裕明教授および永井教授の事務所 N.G.inc.によるもの。

 メインビジュアルは
車体(外側)に貼られるものが「山手線、お借りします。東京造形大学」のコピー、「山→手→線→色→形⇄造→山」がループしているもの、の2種。
車内では「山→手→線→色→形⇄造→山」の左に9種のコピーを加えた B3サイズ、左右にコピーを加えた B3ワイド1種。のバリエーション。
いずれも、薄いベージュを地色に、淡いグラデーションの掛かった円を起用している。

「この企画のステートメントポスターを作るにあたって、シンプルでやや抽象的な表現が良いと思いました。このメインビジュアルを作成した時は学生達の作品を募集段階で、おそらく百花繚乱なイメージがやってくるだろうと。そうした場所にはベージュがとスミだけのシンプルなポスターが合うと考えました。
円のイメージは、私がデザインを手がけた金子親一氏の写真集『TORSO』の中の球体表現から来ています。シンプルでかつ、東京の中心で円を描きながらグルグル回る山手線にはピッタリな気がしました」(永井教授、以下「」内はすべて永井教授)

 シンプルなればこそ細部の造りが問われるもの。
 このポスターにおける「シンプル」は単なる簡略化ではなく、要素を削いだ上で残された要素に力を入れている。その最たる部分はコピーの文字部分だ。
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 印刷物では分かる人にしか分からないのだが(その実、私は聞くまで分かってませんでした)、コピー文字の部分は活字を使用。とはいえ、活版で組んだのではない。いかにして出来たのか?

「文字に関しては、当初から活字で行くと決めていたのですが、関係者に確認を取るデザインを作る際に時間がなかったため、取り急ぎ自分の考える活字のイメージがあるフォント(ZENオールド明朝)で作りました。最終的にオーケーを貰った時には、活字を組んで貰って清刷りする時間がなく一旦は諦めていたのですが、最後の最後にどうしても活字の力が必要だと思ったのです」

 という「最後の最後」という時間が、実は本当に最終入稿の前日。永井教授含め事務所のスタッフ4名総出で、過去に使った活版の清刷り(きよずり。写真製版された文字や図記号などのこと。手貼りの版下を作る際には切り貼りして使う)から、コピーに使う文字を、全てほぼ同じサイズの文字を、一文字一文字探していき、スキャン。そこから Photoshop で組み直した。
 同じ書体の活字を、しかも同じサイズの文字を一文字一文字探していく、という想像するだけでも恐ろしい作業だが、実際に永井教授はこの作業が「戦いでした」と言う。

「終わって眺めてみると、明らかに堂々とした(もちろんコピーが良いからですが)ものに生まれ変わっていました」

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 先に書いたように、DTP用フォントと活版文字の違いは、分かる人には分かるのだが、分からない人には全く分からない。とはいえ、意識して見てみると、均一的に仕上がるデジタルでは感じにくい深さ、厚みが感じられてくるから不思議なものだ。
 活版も極力均一に整然と組まれているわけだし、活字だからデコボコガタガタしているとかそういうことではない。恐らく、機械任せではなく、人の手が入ったことにより、意識的なのか無意識なのか人間の目の感覚に近い読みやすさを考えながら組んでいったからだろう。


by dezagen | 2018-02-26 13:23 | 展覧会
東京造形大学 山手線グラフィック展 その経緯
 ライターおよび東京造形大学教員の渡部のほうです。

 引き続き、東京造形大学 山手線グラフィック展について。

 おかげ様で東京造形大学のグラフィック作品を乗せた山手線は、毎日順調に走っているようです。

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 貼られたりぶら下がったりしている紙印刷ポスターは、制作者157名による作品総数約1100枚。とは言ってもすべて違うグラフィックではありません。種類数で言うと290種。同じデザインが複数枚印刷され、異なる場所に配置されています。

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 同じ作品でも時に中吊りだったり、フレームだったり、両隣は違う作品だったりするので、どんな風に見えるか、見た場所でも印象が違います。
 ちなみにサイズは B3(中吊りなどで2枚が横並びになるワイド版など若干の変形はあります)、紙はミセス B を使用。

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 車内のモニターに映る映像作品は、10人の作成者による19点。1作品は30秒以内、の作品です。
 グラフィックデザイン専攻なのに動画も作れるの?と聞かれましたが、動画作成の授業を選択する学生はかなり多いので、動画を作る学生は結構います。

 結果として並べられたものを見ると、きれいに収まって良かったというのもありますが、むしろ、無事運行できて良かった、と言うのが正直な感想。

 そもそもこの異例なイベント、企画側であるグラフィックデザイン専攻の教員にとってもびっくりな企画ではありました。
 
 事の始まりは秋口。大学内で「大学の活動がもっと社会的に見える企画を募集」という告知があり、グラフィックデザイン専攻の教員7人で、何ができるかアイデアを出し合っていました。
 展覧会でも他の露出にしても「意外性のあるところ」「普段ギャラリーなどに足を運ばない人でも見るところ」がいい、などなどと話していたところ、永井裕明教授の口から出た言葉が
「山手線はどう?」。

 これまで数多くの広告を手がけ、その中で山手線を使うアドトレインも経験済みの永井教授ならではの発言。

「できるんですかね?」から始まって、その場で色々調べて行くうちに「できるかも」「提案してみよう」と話が進んでいったわけです。
 私自身は雑誌や書籍をメインにした仕事をしてきたので、広告やイベントのような仕事とは勝手が違うものの、なんにせよ企画段階というのはすごい楽しい。それぞれがデザインの仕事をしている教員なので、自分たちの経験値やリサーチ力、そして発想力がぶつかる場で、色んなアイデアが出るし、その実現性や可能性を調べて行くのが何より楽しい。方向性が決まってくるに従い、ヒートアップしていくという言葉通りに「やりたい熱」(この段階では「やってみたい熱」)が上がっていったのを実感していました。

 とはいえ、結構な予算を使う案なので、ダメ元で、というのは7人とも感じていたこと。
 審査の結果、大学側も「やりましょう!」と提案が通ったという知らせを聞いた時は、正直驚いたと同時に「うちの大学って懐深いな」と思いました。

 驚いてばかりもいられないわけで、早速作品募集に。
 テーマは「TOKYO」。
 対象者は3年生(約100名)が必須、1、2年生と4年生、大学院生、助手は有志で。1人何枚でも応募可能で、シリーズ展開で見せる作品も多かったです。

 集まったところで、一斉に教員の審査。この時点では約350種類くらいだったと思いますが、ずらりと作品を並べたところは壮観。

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 審査といっても基本的には全員の作品を出したい意向なので、公序良俗、意匠権、商標権などの規程に掛かりそうなものに修正を掛けるためのもの。JR のほうでも同様な審査をします。学生に修正を依頼し、ダッシュで戻してもらいましたが、規定に掛かって審査を通過できなかった作品があったのは残念。

 最終審査通過作品が決まった所で、今度は1編成の11車両、それぞれに作品の配置を決めます。取り上げたテーマや手法の違いなどを全体のバランスを考え配置しています。

 あれやこれやの細かい作業があり、やっと初日運行を迎え、本当にほっとしたというか、できるものなのだなあ、と感慨深かったです。
 やはり大きなイベント、しかも学外で、とあって、準備は大変でした。特に外部と内部とのやりとり担当をしてくれた海士智也准教授とグラフィックデザイン専攻の助手3人が本当に頑張りました。

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 助手2人の写真があったので、最後に。(3人揃った写真がなかったのは惜しい!)

 次回はメインビジュアルについて少し。

by dezagen | 2018-02-24 10:00 | 展覧会
東京造形大学 山手線グラフィック展 貸切運行の日
ライター渡部と東京造形大学教員の渡部のほうです。

「東京造形大学 山手線グラフィック展」がいよいよ始まりました。
自分の勤務する東京造形大学の主催、所属するグラフィックデザイン専攻の企画について書くのは、なんだか難しい。ライター客観視で書けばいいのか、企画発信目線から書けばいいのか、目線混在中。

さておき。
16日(金)は展示運行に先駆けて、関係者のみの貸切運行、という特別イベントがあり、これはかなり気分の盛り上がるものでした。

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私の写真が下手なのはこれ誰読者の方がご存じのはずなので、許して、としか言いようがないですが。車体の電光掲示が「団体」。初めて見ました

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構内表示も「団体」で、英語表示は「PARTY」。
集団を意味するpartyですが、カタカナ的な「パーティ」に引っ張られ、グッと来てしまいました。

走り出してしばらくの後、学長による挨拶が車内アナウンスで!
挨拶を「それでは出発、進行!」で締めてくれました。

展覧会における内覧会的な貸切運行ですが、場所が山手線だけに外の景色にも目が行くし、人にも会うし、作品も見るし、しかも動いてるし、で、普通の内覧会とはやっぱり違う雰囲気。
作品1つ1つをじっくり見るというよりは、通常とはかなり違う場所に置かれたギャップに目が行きます。

中の様子。当たり前ですが、走ってる所により光の入り方が違う。
同じ作品が11車両の1編成の中で複数枚使われている物も多いので、場により時間により、見え方が違います。
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人がいるかいないか(こんなに↓空いてる山手線もないと思いますが)でも見え方が違う。
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全体を撮ろうとすると吊り輪が邪魔なんですけども、実際に乗った人はもう少し作品に寄って見れるはず。
とはいえ、忙しい人々の乗る山手線。これが展示だと気付かない人もいるだろうし、作品を全く見ないで降りちゃう人もいるでしょう。
中吊り広告だと思ったらグラフィック作品で、なぜ?これ何?と思う人も多いだろうなあ。というのも実際に乗って分かった事。

関係者のみの貸切ではなく、通常の山手線で乗客の人々がどんな反応をするのか、気になるところ。

高校生を対象としての作品説明も行われました。写真に映っているのはグラフィックデザイン専攻の福田秀之教授。
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全体で300余りの作品が展示されています。
テーマは「TOKYO」とかなり大きく来たので、東京タワーや浅草寺などの名所など東京全体を紹介するような作品が多く、そうなるとモチーフに引きずられて似た印象になりがち。むしろ、焦点を小さく絞って出していった方が、強い印象にもなるし、多様性を持つ巨大都市のリアルさが出て良いと思うのですが(というのは、教員の目線)。

その点、山手線も意識しつつ、焦点を目白と目黒に絞ったこの作品はいい(私の個人的な指向として)。
目なのか胃袋なのか、はたまた全然別のものなのか。
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学生の作品を外に出してみた事で面白かったのは、この作品↓
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下に映っている学生は、上の写真作品の被写体。
グラフィック画面において、被写体はグラフィックの1要素になって平面化、メディア化するわけです。
大学で見ていると「学生の作品だね」と見過ごしてしまうのだけれど、複数枚複製され社会に出してみると、この紙に印刷されたものは社会とのコミュニケーションツールとしての固定したメディアとなっている。一方、現実のモデルとなった学生自身はメディアではない。
という差が見えたのでした。

1時間ノンストップって長いのかな、と思っていたけれど、乗ってみたらあっという間でした。
降りた時はちょっと寂しくなってしまった、専用車両。
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シュー、バタン、ガタゴト、ゴー、と行ってしまいました。
さようなら、次はいつ会えるかな?

山手線のアドトレインがどこで走ってるかを見れるサイトもあるので(どうやって調べているんだろう…)探して見て下さい。
東京造形大学 山手線グラフィック展は2月28日まで運行しています。

#東京造形大学
#山手線ジャック
#グラフィックデザイン
#tokyozokeiuniversity
#造形大
#美大


by dezagen | 2018-02-17 11:08 | 展覧会
東京造形大学 山手線グラフィック展
ライター渡部のほうです。
というよりは、東京造形大学教員の渡部千春です。

今回は展覧会の告知です。

東京造形大学の、(私が所属している)グラフィックデザイン専攻の主催による展覧会、
学生の作品、ポスター、動画を約300点展示。

東京造形大学 グラフィックデザイン専攻 https://www.zokei.ac.jp/academics/undergrad/gd/

と、聞くと割と普通に聞こえるかもしれませんが、割と普通じゃないです。

場所が山手線。

ホームじゃないです。山手線の11車両の1編成全部。
それが12日間、朝から晩まで、ぐるぐる回ってます。

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メインビジュアルはN.G. Inc/永井裕明教授。

「東京造形大学 山手線グラフィック展」
実施期間:2018年2月17日(土)〜2月28日(水) 
会場:山手線 外回り
(すいません、先の投稿で2月16日(金)からと書いてしまいましたが、17日(土)からの運行の誤りでした)

今回はこんな感じで。
次回(あるいは次々回)は、展示作品例やプロジェクトの裏話なども書きたいと思います。


by dezagen | 2018-02-15 14:10 | 展覧会
台北 観察の樹×藤森泰司 Kino Stool 展示発表会
ライター渡部のほうです。

1月12日(金)から1月28日(日)まで、台湾台北市の書店兼ギャラリー「田園城市生活風格書店」で「Kino Stool」 の展示会が行われている。
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Kino Stool は日本をベースに、日本と台湾で医療、福祉関係のデザインコンサルタント、プロジェクトなどを企画している会社「観察の樹」http://www.kansatsunoki.com  が企画、藤森泰司氏 http://www.taiji-fujimori.com がデザインを手がけたもの。高齢者が使いやすい、玄関に置けるスツールだ。
実際に座ってみると、コンパクトながら安定性があり、中高年の自分でも欲しいと思う。
家具、什器、道具など「高齢者向け」を必要とするユーザーは、実際のところ高齢者に限らないのである。
高齢者向け、とは、一般の製品の中でより「安定性」「使いやすさ」のレベルが高い製品という事が言えるだろう。

台湾の生産力を活かしたプロジェクトを行う事で地元に貢献する事も、観察の樹のコンセプトの1つだ。
このスツールも台湾の工場で生産。展示の特別バージョンとして、台湾南部屏東の少数民族が織った布を使ったクッション付きの製品も発表されている。

と、実は今回のレポートはここまで。
私自身のスケジュールがタイト過ぎて、現地できちんとした取材時間が取れず。
まずは行って来ました、というご報告&告知だけになってしまった。
プロダクトの詳細に関しては、また後ほどレポートするのでお待ち下さい。

期間中に台北にいる方へ。
会場アクセス、開店時間などの情報はこちらをご参照下さい。
観察の樹 ニュースページ

田園城市生活風格書店の facebook ページ

by dezagen | 2018-01-16 15:55 | 展覧会
竹尾デスクダイアリーの60年
編集宮後です。
竹尾見本貼本店でデスクダイアリーの展覧会を見てきました。

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デスクダイアリーとは、紙の総合商社、竹尾が毎年制作している卓上ダイアリー。1959年から多くのデザイナーが制作にかかわり、来年2018年でちょうど60冊目になるそうです。そんな貴重なダイアリーの数々を集めた展覧会「竹尾デスクダイアリーの60年」が12月10日から開催されています。

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1959年の最初のダイアリーはこちら。デザインは日本デザインセンターで、本文にはパルテノン、マーメイドリップル、ウエーブレード、STカバー、MLファイバー、アングルカラー、彩美カード、NBKファイバーなどの紙を使用。当時はまだリング綴じ(スパイラル製本)でした。

卓上で180度フラットに開けるようリング綴じが使われていたのですが、1976年から糸かがり綴じになります。糸かがりは丈夫で良いのですが、見開き全体に写真や絵が入るとき、中央に糸が見えてしまうのが課題でした。そこで、糸が見えないように考えられたのが、背開き製本です。半分に折った紙を重ね、背の部分を糊で固めて製本するため、のどに綴じたあとが残らず、絵柄がきれいにつながります。この製本方法は、美篶堂の上島松男親方によって提案され、1988年のダイアリーから採用。現在も美篶堂による手製本で製本されています。

展示会場では、美篶堂の上島松男親方や上島真一工場長のインタビューのほか、2018年のダイアリーの制作工程を紹介する映像が見られます。ダイアリーがあまりにきれいに整っているので、機械で製本されたように見えるのですが、一冊ずつ職人の手によってつくられていたんですね。映像を見ていただくと、1冊のダイアリーができるまでに多くの人の手が入っていることがわかるかと思います。

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60冊のうち、初期のものは透明ケースに入っていますが、それ以外は手にとって閲覧可能。貴重なダイアリーの一部は、デジタルアーカイブ化され、会場にあるiPadで見ることができます。

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文字好きの方に見ていただきたのは、1983年のダイアリー。書体デザイナー、カリグラファーとして有名なヘルマン・ツァップさんのカリグラフィー作品が収録されています。このダイアリーのために新たに描かれた作品もあり、必見です(会場のiPadで全ページが見られます)。

60年分のダイアリーを一度に眺めてみると、新しい紙が次々と開発されていった様子や、当時のデザイナーが腕をふるっていた様子が生き生きと伝わってくるようです。企業の制作物を通じて、用紙開発の歴史やグラフィックデザインの歴史もかいま見られる貴重な展示でした。展示は、2018年1月19日まで竹尾見本貼本店で開催。会場に行けない方は、竹尾アーカイヴスのウェブサイトでも一部見ることができます。

竹尾アーカイヴス「竹尾デスクダイアリー」








by dezagen | 2017-12-19 08:09 | 展覧会 | Comments(0)
世界のブックデザイン 2016-17 feat. 21世紀チェコのブックデザイン
編集宮後です。印刷博物館で始まった「世界のブックデザイン」展を見てきました。

「世界で最も美しい本コンクール」入選図書のほか、日本、ドイツ、オランダ、スイス、カナダ、中国、チェコ各国のコンクールで入賞した書籍約200点が展示されています。また、「日本におけるチェコ文化2017」にあたる今年は、「チェコの最も美しい本コンクール」受賞作に加え、21世紀のチェコのブックデザインに焦点を当てたコーナー(下写真)で50点の書籍が展示されていました。

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過去の「世界のブックデザイン」展の記事はこちらにまとめました。

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

今年気になった本を紹介していきます。まず、入口付近に展示されている「世界で最も美しい本コンクール」から。

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銅賞(スイス)
『Withheld due to』(事情により保留)

ジップロックの保存袋の中に、綴じてない二つ折りの紙束がそのまま入っている装丁。「おっ?」と思って中を見ると、いくつもの写真。実はこれ、イラクのアブグレイブ刑務所における捕虜虐待についての法的措置のあと、アメリカが公開を許可した収容者の裸体のスナップ写真。裁判の判決は出ていても、道徳的、社会的な観点ではまだこの問題は「終わっていない」ことを綴じていない未完成の造本で表現。

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銅賞(スイス)
『Bernhard Chadebee - Intrus Sympathiques』(ベルナール・シャドゥベック 感じよい侵入者)

ベルナール・シャドゥベックのポスターをまとめた作品集。ポスターが二つ折りになって綴じられており、天が化粧裁ちされていないので、1ページずつめくってポスター全体を見ることができない。「印刷事故」とも思われかねない、きわどい装丁。

ここから国別にコンクール受賞作品を紹介。

[オランダ]
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『Nieuwe Bijbelvertaling』(現代語訳聖書)
「Bijbel」(聖書)の文字が背、表紙、小口にぐるっとまたがるよう大胆に配置。小文字「i」と「j」の間の白地に注目すると、白い十字架が! 黒と金の2色のスピン(しおり)もお見事。

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『Prints』(プリント)
オランダのデザイナー、カレル・マルテンスの作品集。マルテンスの特徴でもある独特の蛍光色や幾何学的な模様が目をひく。折り畳んだページをたばね、天をカットしないで製本。スイスにも同じような製本の本がありました。


[ドイツ]

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『Soir?e Fantastique』(素晴しい夜)
ライプチヒのオスカー・ライナー印刷所で1840〜70年にかけて印刷されたポスター約330枚に同時代のライプチヒの写真が重ね合わされた資料集。ポスターと写真をコラージュのように重ねてしまうという大胆な手法がユニーク。当時の街中で使われていた文字を知る資料としても貴重。


[中国]

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「中国の最も美しい本2016」入選書籍で、チベット地区民間所蔵チベット文字貴重文献叢書。極端に横長のサイズで、糸かがりで綴じられている。かがり糸の色が綴じる位置や折ごとに変えられているので、とってもカラフル。小口側に文様が印刷され、箱に入った豪華仕様。気になるお値段は6000元(約10万円)。

今回の特集国、チェコ。

[チェコ]
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『Alfabeta』(アルファベット)
子供がアルファベットを覚えるためのお絵描き絵本。グラフィックが3色に抑えられているが、カラフルで楽しそうなデザインが秀逸。全体的にチェコの絵本はかわいらしさとクオリティを両方満たしていて、かなりハイレベル。特に、かわいい表現がうまいのはお国柄なのでしょうか?

全部をきちんと見ていないので、見落としがありそうですが、ざっと目についた本を挙げてみました。

造本という点では、中綴じやコデックスなど、180度フラットに開く製本が多かったような気がします。なんとなく格好がついてしまうコデックスに比べ、下手するとチープに見えてしまう中綴じのほうがデザインの難易度は高いですね。日本の出版ではコスト面と流通面から製本の自由度はあまり高くないのですが、そのなかでいろいろ挑戦してみる意味はありそうです。見ているだけで「こんな本をつくってみたい!」といろいろなアイデアがわいてきて、わくわくしました。

展示は、2018年3月4日まで印刷博物館で開催されています。


by dezagen | 2017-12-04 01:10 | 展覧会 | Comments(0)
紙活字 日めくりカレンダー展
編集宮後です。
紙活字®をつくっているPaper Parade Printingさんの企画で、10月下旬の週末にBook&Designでイベントを行いました。

紙活字は、文字どおり、紙でできた活字。木活字に近いのですが、紙でできているので、活字の表面をけずってテクスチャーをつけられ、誰もが気軽に活版印刷を楽しめるのが特徴です。
http://papertype.jp/
https://www.makuake.com/project/paperparadeprinting/

紙活字の考案者、和田由利子さんに初めて取材したのは、2011〜12年のあたり。個展の会場で実物を見せていただきました。その後、文字のデザインが調整されたり、クラウドファンディングで卓上の紙活字の活版印刷キットがつくられたりと徐々に進化していく様子を拝見していました。

和田さんが守田篤史さんと一緒にPaper Parade Printingとして活動をはじめ、365日の日めくりカレンダーを制作したと聞いて、展示のお手伝いをすることに。本とデザインのスペース、Book&Designで展示、トークイベント、ワークショップのイベントを行うことになりました。

詳細はこちら。
http://book-design.jp/events/130/

10月21日(土)のトークイベントでは、日めくりカレンダーの印刷加工のお話を中心にお話していただきました。限られた予算の中で、表現したいことをどのように実現したのか?、繊細な諧調を印刷でどう再現したのか?など、興味深いお話が。特に、Photoshop上でスクリーン線数を調節し、コンビニのカラーコピー機で校正を出力する技は新鮮でした。そのほか、オンデマンド印刷機の丁合機能を使って印刷する技やページの開きをよくするための製本の仕方など、知らない技法をたくさんうかがいました。

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10月21日のトークイベントの様子。Paper Parade Printingのお二人、篠原紙工の篠原慶丞社長のトークセッション。トーク終了後、活発な質問や意見交換があり、多いに盛り上がりました。印刷加工のお話が中心だったので、次回はぜひ文字デザインのお話をうかがってみたいです。

また、28日(土)に開催された紙活字ワークショップでは、デザイナーさんや美術大学の学生さんなど、7名の方に参加していただきました。Paper Parade Printingのお二人が講師になり、「Book』の文字で印刷。ワークショップに参加した方々は、紙活字の表面を傷つけてテクスチャーをつけたり、ランダムに並べたり、思い思いのデザインを楽しまれていたようです。まわりの方のアイデアに触発されたり、お互いの紙活字を交換して作品をつくったりできるのがワークショップのおもしろいところですね。

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ワークショップの様子。全員がデザイン関係者だったためか、紙活字を斜めにカットしてずらして印刷したり、他の人の紙活字を借りたり、斬新なアイデアの作品が多かったです。

22日と29日の日曜日は展示デー。日めくりカレンダーの原画や途中過程の色校や試作が展示され、作者のお二人も在廊されていました。

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1日ずつ印刷された日めくりカレンダー。御徒町の家具店WOODWORKでは額装された製品も販売していました。

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右上は、卓上の紙活字の印刷キット。このキット用に開発されたインキもついていて、自宅で紙活字の印刷が楽しめます。展示会場でも販売しました。

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壁面に貼られた校正紙。紙活字を活版印刷した原画をスキャンし、Photoshop上でスクリーン線数を何パターンか変えてデータを制作。コンビニのコピー機でテスト出力し、本番の印刷に適したスクリーン線数を検討。線数を決めてから、オンデマンド印刷機で印刷し、篠原紙工で製本。中央のテーブルには製本の試作が並んでいます。

今回のイベントは Paper Parade Printingの企画で、台東区浅草のBoo&Designのほか、蔵前のWOODWORK、墨田区のMoi Coffee、東向島珈琲店の4カ所で開催。Book&Designでの展示期間は台風が近づく中の開催でしたが、雨のなか、足を運んでくださった皆様、ありがとうございました。

製品に関するお問い合わせはこちらまで。
http://papertype.jp/

by dezagen | 2017-10-29 22:28 | 展覧会 | Comments(0)
台湾で田部井美奈個展「PANTIE and OTHERS つまんでひらいて」を見る
ライター渡部のほうです。

現在、台湾中部の都市、台中のギャラリー綠光+marute (uは上に‥のウムラウト)にて、グラフィックデザイナー田部井美奈氏の個展「PANTIE and OTHERS つまんでひらいて」が開かれている。

田部井美奈氏のウェブサイト

ギャラリー綠光+marute 

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こちらはDM。少し版ズレさせてレトロな感覚もあるいい感じの味わい。

そもそもこの綠光+marute、どういう場所なのかというと、香川県高松市の書店 BOOKMARUTE  http://book-marute.com を営み、イベントを行っている小笠原哲也氏と、台中で古い建築の再生プロジェクトを行っている木村一心氏 https://www.isshin-taiwan.com により運営されているギャラリー。これまでも数多くの日本人アーティスト(写真家、イラストレーター、デザイナーなど含む)を紹介してきている。

小笠原氏が運営に関わるせとうちアートブックフェアに田部井氏が出展したことをきっかけに、この個展の企画に繋がったのだという。
テーマになっている「PANTIE and OTHERS」のPANTIEは、アートブックフェアで出展した際に作ったzineの名前。その他の作品も、という意味で「PANTIE and OTHERS つまんでひらいて」なのだが、ちょっとどきっとする展覧会名だ。

こちらが古い家を改造したギャラリーの外観。
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ちょうどオープニングのトークが始まったところ。ギャラリーの外にまで来場者が溢れている。
むしろ来場者に「どうして来たの?」「どうやって知ったの?」など聞いてみたかったが、来場者があまりにも熱心に田部井氏の話を聞いていて、そんなことを聞ける雰囲気ではなかった。いずれ、台湾における日本のデザインの受容性について調べてみたいとも思う。

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中に入ったところ。
展示の様子はこんな感じ。
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大判で出した写真は、田部井氏の事務所で撮影したもの。過去の仕事、作品など、
「すべては持って来れないので、お部屋をそのまま持ってきたような感じで見てもらえばと思い、写真を使っています」と田部井氏。
紙の質感や手触り感を伝えるため、左側はいくつか拡大した作品の写真を飾っている。

こちら(下)は別のお部屋。
「直線や円など、定規で書いたような線でどんな表情が作れるか、試している」とのこと。
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田部井氏のデザインは、ブックデザインやポスター、ロゴなどでは、対象物のイメージをさらっと仕上げているように見える。だが、そこで使われる、パターンや色はこうした自由作品を作りながら積み重ねているものなのだと感じた。

PANTIE他、今回の個展に合わせて作った作品やポストカードにもなるポスターなど印刷物も気になるところ。
最初の写真のDMは東京用のものをgraphicで、台湾で配布するものをレトロ印刷の台湾支店で刷ったもの。
作品集(写真下の2枚)はサンエムカラー。
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切り取るとポストカードにもなるポスター(下)は、PAPIE LABO.
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展示用ポスターと写真の出力はショウエイによるもの。
紙モノそれぞれの印刷の表情が異なっているのも楽しかった。
(写真上から5〜9枚目は田部井美奈氏提供。1〜4枚目は渡部撮影)

展示は11月6日まで。この時期、台中に行く機会のある方は是非(同、ギャラリーでユトレヒト http://utrecht.jp の出張販売もあり。また周辺エリアも新旧入り交じる面白いエリアなのでお奨め)。
木曜日から月曜日までの、14:00〜19:00
火曜日と水曜日はお休みなのでお気を付け下さい。


by dezagen | 2017-10-24 14:30 | 展覧会