演奏(製品実演)には経理のヲノさんことヲノサトルさん、スズキユウリさん、そして最後には歴代工員(スタッフ)さんも参加しての豪華な会。明和電機は基本的に土佐信道社長を中心とするアートユニットであって、音(楽)を伴う作品/製品を作って世にリリースしているわけですが、製品のデモンストレーションをするライブパフォーマンスはそれに加えてショウとしてのエンターテイメント性がある。
ライブパフォーマンスでは電気製品+コンピュータの工学的な側面がありつつ、(私が見る限り毎回)(そして今回も)電気が落ちる、コンピュータがフリーズするなどのハプニングがあり、機器類が思うように動かないという事態を土佐社長がトークや即興芸(?)でひとつのショウとしてまとめあげてしまう。今回は動かなくなった楽器を工員の手で叩くというハプニングすらあり、人間がやることを機械がやる本来の明和電機の楽器の面白さから、それを人間が擬似的に行うという逆転の面白さもあった。
こんなアクロバティック事ができるアーティストを明和電機の他に私は知らない。
それにしても30年とは……、息の長い活動だ。
明和電機の形態デザイン的な側面を見ていけば、高度成長期の電気工具の無骨さと職人芸的な仕上げの美しさから、突如レース編みのような繊細さ、女性や胎児をテーマにした肉体的なフォルム、はたまた単純幾何学線からなるキャラクターなど様々にスタイルを変えている。
初期からしてシャープな器具に中村至男さんの緻密なグラフィックデザインで統一されているのかと思いきや、しりあがり寿の描いたカッパの絵も欠かさずあった。ヤンキー時代もあれば、オタマトーンが他のキャラクターとコラボしたりと実に多様な要素を持っている。
それでも見ればすぐに「明和電機」と分かるのは、ロゴとコーポレートカラーの力が強い。加えて土佐社長のユニフォーム姿、だろうか。あるいはどんなことがあっても許容する周囲の温かさなのだろうか。
最近は三協アルミとコラボレーションをし、アルミサッシの端材で楽器を作成、企業CMにも出ていると聞き、見てみると三協アルミの広告というより明和電機の広告のよう。
台湾版では台湾華語(中国語普通語)で歌っているのでさらにびっくりしました。
明和電機さん、これからも末永く活動をお続けください。
(執筆 渡部千春)