ライター渡部の方です。
次に書くネタはもう決まっているのですが、なかなか書き進めない感じがするので、こちらの話を先に。
8月後半にノルウェーのオスロ、フィンランドのヘルシンキとパリに行き、久々にヨーロッパのデザインに触れ、改めて気付く事が多過ぎて、実はまだ消化しきれていません。
まずはデザインの意味が変わってきているというのが一番大きな発見でした。プロダクトもグラフィックも、全般的に形を成さないデザインに移行している印象があります。
日本だとUIとかUXとかの方が通りがいいように思いますが(一緒にするのもざっくりしてはいるのですけども)、いわゆるサービスデザインの領域で活動するデザイナーが増えていて、プロダクトの分野で家具を作っていくとか、グラフィックの分野で広告キャンペーンだけ作るというような専門職を追求する仕事に向かう人が減っているようです。
統計を取ったわけでも、何十人と取材して得た情報でもないのですが、今回会った人達からは異口同音にそんな話を聞いてきました。
例えば、ヘルシンキにあるデザインミュージアムのユッカ・サヴォライネン館長は、今後はデザインの流れがサービスデザインに向かっていくだろうし、割合として有形のものは減って行くだろう、と。ミュージアムとしてはそれを「見せる」事も必要ですが、その場合、文字を中心としてその記録を見せていくことになるでしょう、と言っていました。
こちらはその展示の写真ですが、確かに文字ばかり。
フィンランドの学校給食を良くしようというプロジェクトで、どうプランを練っていったか、プロセスが書いてあります。英語のキャプションもあるので、そちらを読んでくれば良かったわけですが、文字ばかりだとパッとは意味が分からず、私もさーっと記録写真だけ撮って帰って来てしまいました。
ソフトウエアの広告など見ていると、グラフィックはツールさえあれば「誰でもできる」と謳っているし、その流れで言えばプロのデザイナーの職能は形を作るだけではない、他の何か、ということになります。
実際「モノ」から「コト」へと変化は日本でもずっと前から起こっているのですが、北欧はインフラの分野、行政がクライアントになる所など、日本よりももっと大胆に舵切りしているように見えました。この辺はもう少しリサーチしていきたいと思っています。
美しいフォルムを持ったプロダクト、グラフィック、インテリア、テキスタイルなどなどもなくなることはないはずですが、例えば日用品がいつの間に民具、工芸として鑑賞物になっていったように、そうした美しさの追求は「デザイン工芸」的な存在になるのかもしれないと思っています。