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OOO
 ライター、渡部の方です。
 ビールのおいしい季節になりました(というか暑い)。
 で、こんな写真から始まります、今回の「これ誰」。
 台湾からの新しい風です。 

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 OOO(Outstanding Ordinary Objects) https://ooo.co.com は台湾人の陳靖雯 (Chen Chingwen チェン・チンウェン)とスコットランド人Nicol Boyd(ニコル・ボイド)の夫妻が2020年から始めたプロジェクト。
 陳は ブランディングを主に手掛けるデザイン事務所 Five Metal Shop https://fivemetalshop.com  の代表を務め、台湾のファミリーマートなどの案件を手掛けている。
 ニコル・ボイドは これまで香港をベースにし、現在台北に移動中のプロダクトデザイン事務所 Office for Product Design https://officeforproductdesign.com の代表。Office for Product Designとしては、これまでローゼンタールやモレスキン、Pupupulaなどヨーロッパや中国のブランドにデザインを提供し、iFアワード、レッドドット、グッドデザイン賞などの受賞歴を持つ。

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 OOOのプロジェクトは、ある日の朝の突然の思いつきから、と陳は言う。
「普通のものをすごくすごく精緻に作ったらどうだろう?」
 そこで選ばれたのが「ビールの栓抜き」だ。

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「ビールの栓抜きは、世界どこにでも安いものがあり、大体同じ形。スコットランドでも台湾でも日本でも。今ちょっとそこの酒屋さんで一番安い栓抜きを買って来たけど、やっぱり大体同じような形で、そしてすごく安い。これをもっと立派な仕上げにしてみたら、みんなが当たり前に安物で使い捨てだと思っていて気も使わない栓抜きにもっと意識が行くんじゃないか、と思ってデザインを始めたんだ」と、ボイドは説明する。

 陳はさらに加える。「バーの中でもっとコミュニケーションを促す事になるかもしれないと思ったんです。台湾人同士は意外にシャイで、バーで隣合ってもイギリスのパブのように他人同士が話を始めるという事はほとんどないですね。でもお店で出される共有の栓抜きがすごく特別なものだったら、話が始まるかも」
普段デザインストラテジーを手掛け、カスタマージャーニーも意識する陳らしい。

 OOOのビール栓抜きは手に持った時にその存在感をきちんと感じるほどの重さだ。また、幾度もポリッシュを重ね、持ち手から輪の部分まで非常に滑らかでずっと触っていたくなる。手の体温が少しふっくらしたステンレスの栓抜きに伝わっていく感じも、栓抜きが徐々に自分の物になっていく感覚のようで面白い。

 話が逸れるが、この感覚はレンゾ・ピアノが1996年にデザインしたイッタラ(旧ハックマン)のカトラリーに感じるものに近い。単に自分が持ってるお気に入りのカトラリーという話なのだが。さておき。

 驚くのは彼らの行動力で、栓抜き体験のために、OOO独自のクラフトビールも作ってしまった事。台湾のクラフトビールメーカー酉鬼啤酒 UGLY HALF BEER https://www.uglyhalfbeer.com と一緒にエールを共同開発。
 さらに、その瓶ビールの容量330mlがきっちりと収まるビールコップも作った。
「これも誰もが思い浮かべるコップの形だけれど、透明度が高く頑丈な無鉛クリスタル製。底も側面と同じ厚さで弧を描くように丸めて、330mlのビールを縁いっぱいまで注ぐとガラスの存在が見えなくなり、まるでビールの塊のように見えるんだ」と、ボイド。

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 台北ではこれらのプロダクトを使い、ポップアップバーのイベント「OOO NOT A BAR BAR」を2020年の8月から9月に掛けて開催。実際にコミュニケーションを促す場を作り上げた。
 さらにさらにプロジェクトは発展し、アイスクリームスプーンとアイスクリームカップにも。こちらもポップアップイベント「OOO NOT A (ICE CREAM) BAR」を2022年10月11月に開催し、来場者に体験してもらった。

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 OOOのプロジェクトはテーブルウエアだけではなく、台湾の工場でよく使われている椅子から発想した椅子へと拡大を続けている。

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 ありふれた、あるいは固有の形に付加的意味を加えるという意味では、例えばアートの分野でジェフ・クーンズがやっていた試み、フィリップ・スタルクの「ルイゴースト」と同様の試みとも受け取れる。
 クーンズやスタルクの例と異なるのは、ステータスでもなく大量生産品でもなく、物を通じて体験を豊かにするものであること。普通の栓抜きやアイスクリームスプーンからすれば高いかもしれないが、高級ブランドにはしたくないと言う。
 ファストファッションに代表されるように、今は世界中で安いものが溢れている状態だ。多くは使い捨ての運命を辿る。そんな中で長く使ってもらい物体験を重ねて行こう、そんな動きが台湾からも広がっている。

 OOOの製品は以下のウェブサイトから購入可能。

 8月4日(金)までは神保町の
東京都千代田区神田神保町1丁目25−4 
でポップアップショップを開催中。



by dezagen | 2023-07-30 19:41 | プロダクト・パッケージ
『これ、誰がデザインしたの? 続(2)』
渡部千春著、デザインの現場編集部編
美術出版社刊
04年以降の連載記事をまとめた2冊目の書籍。連載で紹介したアイテムのほか、名作ロゴやパッケージ、デザインケータイなどを紹介。
 
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