去る6月14日(水)から16日(金)に行われたインテリア ライフスタイル展。久々に会う人、久々の賑わい、久々の実物。以前どう会話をしていたんだっけ?と探り探り言葉を交わすような、まだ少しもどかしい感じもあり。物を手に取りながらそのデザインの事、デザイン業界全体の事、昔の話、これからの話、色んな人と沢山話をしてきた。
今年3月から6月に掛けて21_21 DESIGN SIGHTで行われた『The Original』展の時にも感じた事だが、やっと実物を見ながら、人と話し合う事ができるようになったと実感する。「もの」に出会う喜び、感触を確かめる体験の喜び、こうしたものが本当に得難い。
とはいえインテリア ライフスタイル展、実際は最終日に駆け込みで、最後は走るように見ていたのだが、
Meet Design のコーナーで、すっきりした色合いの小物が気になって足を止めた。余計な装飾のないトレーや、丸い筒が連なるペンスタンドなど。日本コパックさんの「KIT」というシリーズだ。

撮影 Ryoukan Abe
デザイナーを聞いてみると「MUTEのイトウケンジさんです」とのお答え。この形と単色色使いのうまさ、なるほど納得。
かなり久しぶり(10年ぶり?)だけれども、イトウさんに問い合わせてみると、ちょうど日本コパックの本社ショールームでKITの展示をしているというので、KITの話を聞かせてもらうことになった。
(お話を聞いたイトウさん(左)と日本コパック企画生産本部の古川孝一さん。
後ろのポスターもMUTEによるもの。グラフィック立岩那奈(MUTE)、ポスター写真撮影 香川賢志)
KITが発表されたのは2021年。その前段階として、2019年に販売開始した日本コパックのバナースタンドシステムシリーズ「RAY」がある。ネジ式のジョイントで工具を使わず組み立てできるポールスタンドで、バナーを下げるだけでなく、間仕切りやハンガーラックとしても使える。
このジョイントシステムを使い、縁にナチュラルなヒノキ材を使用したカラーMDFの棚板を組み合わせ、シェルフとして販売されたのがKITシリーズの始まり。シェルフは2021年10月のインテリアライフスタイル展で発表された。
その後、徐々にシリーズを増やして行き、現在KITのシリーズはテーブル、シェルフ、ハンガーラック、サイドテーブル、スタンドミラー、ベンチ、コートスタンドなどの大きめの家具と、ブックエンド、ケーブルボックス、トレー、ペン立てなどの小物からなる。
家具は25.4mm径の塗装されたスチールのポールが基本。色は黒、灰、薄緑を基調に、商品によりネイビー、ダークグレー、ブリック、イエローなどのサブカラーを揃えている。
撮影 Ryoukan Abe
ちなみに「家具」と書いたが、日本コパックは店舗備品や什器などのメーカーで、KITはコントラクト用什器でもあり、また一般家庭用家具としても扱っている。家庭用家具として考えると価格は若干高めにも感じるが、コントラクト什器を常に扱っているメーカーとして、物件に合わせたサイズの微調整にも応じるため、個人での購入でもサイズ調整が可能なところは大きな魅力だ。むろん業務用什器としての頑強さも備えている。
「色は好きですね」と言うイトウさん。KITのシリーズでも色使いのうまさが活きている。個人的には基調色の1つ、上にはあえて「薄緑」と書いたが、カラー名は「インダストリアルグリーン」、が良い。その名の通り工場機械や什器に使われる少しグレー掛かった薄緑だ。
撮影 Kenji Kagawa
このインダストリアルグリーンはかなり万能な色だと私は思っている。統一すれば工場感が出て、それも好みとして1つアリ。木素材や白い色をベースとした場に置いても、存在感が大きくなりすぎない。アクセントカラーと組み合わせると、両方引き立ってくれる。
今までこの色合いは昭和レトロっぽいイメージもあったが、KITではすっきりとした形と相まってレトロのイメージは払拭されている。
イトウケンジさんの作品はいつも、色に、形に、素材に新しい見え方を与えてくれる。
撮影 Kenji Kagawa
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おまけ的な情報。
今回のインテリアライフスタイル展では到る所で「MUTE イトウケンジ」の名前を見た。イトウさんが出していたデザインを聞いたところ、新旧合わせて8件も出展していたそうだ。すごい…。