デンマークの建築家/デザイナー、フィン・ユールの椅子をまとめて見れる展覧会だと言うので、上野の東京都美術館『フィン・ユールとデンマークの椅子』展に行って来た。しかもまとめて見れるだけではなく、座る事もできる、という。かなり希少な機会だ。
そもそも、フィン・ユールの椅子を見れる場所って東京にあるんだろうか?ネットでヴィンテージもあれば、リプロダクト製品(ジェネリックというのか)もあるが、では実際見て買える場所というと…、正直思いつかない。
会場は、ハンス・J・ウェグナーやアルネ・ヤコブセンなど他の有名なデンマーク椅子と共に、ユールの椅子やテーブルなどが並ぶ。
こうして並べて見ると、デンマークの椅子は概して木素材が多く柔らかな印象の椅子が多い事が分かるが、その中でもフィン・ユールの椅子は特に「見て分かる滑らかさ」を持っている事に気付く。ハンス・アルプなど抽象芸術に憧れを持っていた事は有名な話で、今回の展示でもハンス・アルプの彫刻作品が展示されている。フィン・ユールの「ペリカンチェア」の背面が包みこむような形を見ると、ハンス・アルプの彫刻の思わず触りたくなる滑らかさとの共通点を見いだせる。
こちらは座れるコーナー。長年の夢だったペリカンチェアにも座ってきた。
でも「あれ?予想していた感触と違うかも」。その後、いくつも座ってみて、今の自分にしっくり来るのは「イージーチェア no45」(手前)(奥は同じくフィン・ユールのカウフマンテーブル、48ソファベンチ)だと確かめる事ができた。
これこそ椅子の面白い所。椅子を身体を支える器、と考えると、実際にその椅子と相性が良いのかどうかは実際に座って見なければ分からないし、また座った時の場所に依っても、年齢に依っても、その人が変化すれば身体にフィットする椅子は変わって行く。その度買い換えるという贅沢は私にはできない、が故にこの展覧会は希少なのである。