グラフィックデザイナー/アートディレクター高田唯の新しい展示『Yui Takada with ori.studio 髙田唯 混沌とした秩序 』がギンザグラフィックギャラリーで行われている。
ギャラリーに入るとなぜか凧が100以上ふわふわと浮いている。凧の数はいくつなの?と聞いたのだが、聞く度に「大体100」「100以上」「120くらい」と増えて行くので、それ以上聞くのをやめた。
なぜ凧なのか、という疑問は愚問だ。
というのも、元々、高田唯の作品には決まった形式はなく、その時々に興味が趣くがままに進んでいるからで、そのバリエーションの多さは地下1階に展示されたこれまでの作品(の抜粋)を見るだけでも分かるだろう。100円マーク、方位磁針、泥よけ、スポーツ新聞のトリミングなどをひたすらコレクションしているもの、ベビースターラーメンを線として捉えて地図を作ってみる試み、折り紙を破いて層にしていく試み、紙の人形等々。
全く次の瞬間にはどの方向を向いているのか分からない混沌っぷりだが、それが一つ一つきちんと形になってるというのが、高田唯のすごいところ
完成度を研ぎ澄まして行くような形というより、ボリュームや積み重ねで、見ている人が満足する所まで持って行っている。
今回の展示でさらにスゴイのは、その混沌ぶりを書籍「AXIS」という形でまとめた中国のデザインチームori studioだろう。できあがった書籍はめくってもめくっても違う紙、違う折りが続く。それを閉じているのはなんとボルト。
高田唯の思考方法をori studioは書籍の形で、本人は「混沌とした秩序」という名の展示として今回見せているけれど、この秩序は掴みきれるものではなく、凧のように制御しがたいものなのか、とも思う。それで凧を選んだのか、元々高田唯の思考=在り方に凧がフィットしたのか、順番は分からないけれど、これまでの作品群の混沌を見てから、凧を見ると高田唯の在り方に納得する。
同時に「デザインはこうなければいけない」という束縛から離れて自由な気持ちで帰途につける。
とても気持ちの良い展示だ。
Yui Takada with ori.studio 髙田唯 混沌とした秩序 CHAOTIC ORDER