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八王子総合卸売センター 宮崎勇次郎 壁画
 ライター渡部のほうです。

 市場が好きだ。台湾各所の、ソウルの、ジョグジャカルタの、チェンマイの、ハノイの、と言い出すとキリがないが、特に東〜東南アジアの市場はいい。
 同じ場にいながらにして異業種。お互いの陣地を邪魔しないようにしつつ自己主張。果物が並び、サンダルが並び、惣菜の香りがする。そんな雑多な雰囲気が好きだ。

 残念ながらこの状況下でそうした市場に行く事はできなくなっている。と、思っていたら、灯台下暗し。八王子の北野に「八王子総合卸売センター」http://sogo-ichiba.com なる場所があったのだ。

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 収納とディスプレーを一手に担ってしまうダンボールと発泡スチロールの箱が積み上げられ、通路を浸食せんとする勢い。そうそう。このシズル感だ、市場といえば。

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 味わい深い喫茶店も。

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 味ある手書きポップ。

 そんな味ありまくりの八王子総合卸売センターに、もう一つコクを増す要素が最近加わった。

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 この壁画は東京造形大学の同僚先生、宮崎勇次郎先生 https://miyazakiyujiro.wixsite.com/yujiro-works の作品。テーマは、爽やかに「グッドモーニング」。なぜ虎?天狗?スマイルマークのお日さま?と色々疑問があったので、宮崎先生に作品を解説してもらった。

「2020年は距離感や生活様式が見直され、人情味溢れ個性豊かな人々が働く八王子総合卸売センターも同様に一定の距離が保たれるようになりました。
買い物の滞在時間も決められたセンターでは、隣近所との会話や、店主の持論を交えた社会論などの多くの世間話が失われました。
今回の壁画では、東北地方で古くから伝承されている「虎舞」をヒントに虎を描き込みました。虎舞は「虎は一日にして千里行って、千里帰る」ということわざから、船乗りが無事に帰る事を念じた舞です。
その他に浅川の桜、高尾山から望む富士山との天狗など八王子になじみあるモチーフに加え、市場の朝をイメージした目玉焼きとソーセージのスマイルを描きました。
いま起こっている事が早く収束し、良い朝が迎えられるように願い制作をしました」

 なかなか深い意味が込められていたのだった。

 市場というのは雑多で、それがゆえに生まれてくる力がある。こういうところで絵を置くには、絵にもそれなりの力がなければいけない。宮崎先生の絵にはそれがある。

 宮崎先生の絵画はコラージュ的にモチーフを様々な所から持って来る手法なのだけれど、ただランダムにモチーフを選ぶのではなく、意味性を持たせながら一つ一つ丹念に選ばれたモチーフの集積というのも、力強さの1つの理由ではないだろうか。それを同じトーンにはせず、異なるテクスチャーを持つ表現で組み合わせる事で、いわば異種格闘技的なダイナミックさが生まれている。
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 こちらも市場の中のシャッター。
 神は細部に宿る、という言葉を思い出した。

by dezagen | 2021-04-16 10:45 | その他
『これ、誰がデザインしたの? 続(2)』
渡部千春著、デザインの現場編集部編
美術出版社刊
04年以降の連載記事をまとめた2冊目の書籍。連載で紹介したアイテムのほか、名作ロゴやパッケージ、デザインケータイなどを紹介。
 
これ、誰が書いているの?
 
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