ライター渡部のほうです。
東京造形大学大学院のプロジェクト「リノリウムの新しい使い方展」「祈りのかたち展 vol.2」を見に、渋谷ヒカリエ のaiiima2まで。
「リノリウムの新しい使い方展」は、主に床材に使われる事の多いリノリウムを他にどんな応用ができるのか検証していったプロジェクト。
リノリウムというと、小説の中にたまに出て来る古いアパートのキッチンの「剥がれたリノリウムの床」という表現が思い浮かぶ。
それくらい最近のリノリウムについては知っていなかったのだが、聞けば、リノリウムとは亜麻仁油始め天然素材を原料とし、抗菌、抗ウイルス性に優れ、かつ天然素材のため生物分解性も備えている、というサステナブルな社会の今時な素材として注目を浴びているのだそうだ。全然知りませんでした。すいません。。。
さて、プロジェクトではそんなリノリウムをもっと幅広く使ってみよう、という試みで、加えてインタラクティブな要素(振動などに反応)も盛り込んだプロダクトが6種類作られた。
例えば「LINOMAL」と「LINOCK」と名付けられた積木のような玩具。(制作チーム:丸山真奈、ケイ シエン、オウ シンウ)
LINOMAL
LINOCK
どちらもリノリウムの抗菌性、抗ウイルス性といった安全性を活かし、小さい子供が遊べるものとなっている。LINOMALではぶつけても危険ではないような丸みを持たせたり、LINOCKでは持ち方によって形の感じ方が違うその触感を楽しめるような工夫がされている。どちらも動かす事により、台のスピーカーからそれぞれに合わせた音がなる仕組み。LINOMALではそれぞれの動物ごとに、猫ならにゃー、豚ならブー、と違う音を出す。
他の作品も最近のリノリウムの色のよさ、触り心地の良さを活かしていて面白い試みだったが、平面的な貼り材に終始してしまった事、インタラクティブ性があまり活きなかった事が残念ではある(という書き方はどうしても自分の務める大学の学生作品として見てしまうから、なのだけれど)。
もう少し曲線的立体的な造作にはならないか、印刷など施せないか、もっと色を楽しむ方法など見てみたい。面白いプロジェクトなので次年度も是非継続してもらいたいし、もっと幅広く検証してもらいたいと思った。
同会場、もう一つの展示、「祈りのかたち展 vol.2」は会津若松の仏壇仏具位牌のメーカー、アルテマイスターとの共同プロジェクト。祈る、をテーマにハンカチやモニュメントなど5作品が作られた。
こちらでは「kemari」という作品に目が行く。(制作チーム:チョウ カキン、リ シイツ、リ チヒロ、岩森咲季、橘玲慧)
こけしかけん玉にも見えるこれは、ペットの毛玉をボールにし、土台に置くもの。ペットへの気持ちを形にして祈る、というか思いを託すもの。
今回は生きているペットでも亡くなったペットでも、という前提だったが、真価が発揮されるのはやはりペットが亡くなった後だろう。
ペットも家族の一員のようにいるものの、人間さまが死んでしまうと儀式があれこれあり、お墓などの形にして残す一方、ペットはこうした物事が形式化していない。それゆえ自由に思いを残す方法を考えればいいのだが、何もないのも寂しいと聞く。
どちらの展覧会も3月7日(日)まで。
展覧会、作品の詳細は以下のサイトでどうぞ。