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藤森泰司アトリエのWork From Home
 
・自分のスペースを作る

 新型コロナウイルスに関わる緊急事態宣言が4月7日に出てから、あるいはその前の自粛空気感から、リモートワーク(在宅勤務)という仕事の在り方が急激に広がった。

 私自身も周囲も基本的に自宅兼事務所のフリーランスが多いため、自宅勤務には無理がない。一方でお勤めの友人知人もおり、在宅勤務の難しさを訴える声も多く聞く。

 後者で言われる難しさとは、自宅で仕事する事に慣れていない、そういう環境がないというものがほとんどだ。大きな理由として、家庭生活という私的な場所に仕事という公の気持ちを持ち込むのが難しい心理的な問題と、実際に仕事場がない物理的な問題がある。
 通常、会社で仕事をしている人の場合、家で仕事をする場所を設けている人は少ない。家庭のダイニングルームなどでは気持ちが緩む、あるいは家族とのコミュニケーションで、小さい子供は親が仕事をしていると認識してくれないなど、他にもリモートワークの難しさの背景には様々な環境のハードルがある。

・ハードルに対する回答

 このハードルに対して1つの答えを出そうとしているのが藤森泰司アトリエの行うプロジェクト家具シリーズ「Work From Home」である。簡単に言えば、在宅ワーク用の簡易家具シリーズだ。

 机というのは不思議なもので、例えばダイニングテーブルを見ただけで人々の気持ちも食事だったり読書だったりその時々の自由な使い方を想起させるし、仕事机であれば「ここでは仕事をする」と気持ちや行動までが変化する。
 極端には板一枚の違いなのだが「専用」を作る事で環境を作り、それを見る気持ちすら変えてしまうというのは面白い事である。「Work From Home」はこうした専用環境を、極力簡単に作ろうというプロジェクトである。

 現在、作られているのは以下の4つのタイプ。写真はFD1のモデル。現在もブラッシュアップを重ねている。

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FD1 ( Foldable Desk ) 1人用。54,000円 (以下税別)
FD2 ( Foldable Desk ) 対面式2人用。56,000円
BD ( Booth Desk ) 囲い付き1人用。65,000円
WB ( Writing Bureau ) 1人用ライティングビューロー。 86,000円

 すべて家庭でも使え、かつ不使用時があることも考え、折り畳みコンパクトに収納、使用できる。最低限の十分な機能を確保させているところにもこの家具の魅力を感じる。
 販売方法もコンパクトに、オンライン上で注文を取り、それぞれ10台に達したら発注する、というもの。生産までに時間の掛かる量産タイプではなく、よりフレキシブルに対応できる受注生産の態勢を取っている。
 今後は在宅ワークだけでない生活周りの家具へも広げて行く予定だ。

 少量生産、受注生産の家具を買おうという場合、その製品のクオリティを担保するものが必要だが、このプロジェクトメンバーを見ればクオリティは間違いない。
 デザイン、販売を直に行うのは藤森泰司アトリエ。家具の製作はこれまでも多く藤森泰司氏の少量生産家具を手掛けてきたイノウエインダストリィズ。ロゴデザインは山野英之率いるTAKAIYAMA.inc と、それぞれ「依頼をしたら間違いが絶対ない」人々。(私から見ると)スター揃いのプロジェクトだ。

 このプロジェクトから見えてくるのは単に良い家具ができた、ということだけではない。
 デザイナーの仕事の1つは、問題を解消すること。ハードル=問題が出てきたら、それをいかに解消するか、つい考えてしまうのは職業的な習慣だろう。それを考えているだけでなく、行動として外に出すか出さないかでデザイナーの力量が問われる。
 またオンデマンド家具制作、販売への挑戦でもある。
 このプロジェクトがどのように動いていくのか、それ自体も見所ではないだろうか。

 Work From Homeの詳細はこちらのウェブサイトページでご確認を。


by dezagen | 2020-05-30 10:51 | プロダクト・パッケージ