編集宮後です。
今年も「世界のブックデザイン」の季節がやってまいりました。
「世界のブックデザイン2017-18」では、「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書のほか、日本、ドイツ、オランダ、スイス、オーストリア、カナダ、中国、各国のコンクールで入賞した書籍約200点を展示。今年は、過去10年間に同展で展示された「世界で最も美しい本コンクール」上位受賞書籍も展示され、11年分の流れを俯瞰できるような展示構成になっていました。
今までの展示内容については、こちらのブログをご覧ください。
https://blog.excite.co.jp/dezagen/27811149/
では、早速今回の展示内容の中から印象的だった本をご紹介しましょう。
会場入口に展示されていた日本の造本装幀コンクール受賞作品から。
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[日本]
『はな子のいる風景 イメージをくりかえす』
武蔵野市立吉祥寺美術館発行
1949年にタイから日本にやってきて2016年に亡くなったゾウのはな子の写真集。多くの人が撮影した写真で構成された写真集には、折り畳まれた手紙やスナップ写真などが貼付けられ、まるでアルバムを見ているよう。心がかよう、あたたかい写真集。
『中世ふしぎ絵巻』
ウェッジ発行
魑魅魍魎が跋扈する不思議な絵巻の本。表紙は縦向きですが、表紙をめくると、中ページは90度回転して横向きに配置されています。本文は糸かがり綴じで180度フラットに開くので、ノドで絵柄が切れず気持ちよく読めました。
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[世界で最も美しい本コンクール受賞作]
栄誉賞(オランダ)
『Claudy Jongstra(クラウディ・ヨングストラ)』
nai010 Publishers発行
染色した羊毛で作品をつくるアーティストの作品集。CMYKではなく、インディゴブルー、茜色、カモミールイエロー、ブラックインディゴの4色で写真を印刷。ページは製本せず、真ん中で折って、ビニール袋に入れてあります。一瞬、黒い羊毛が袋に入っているように見えますが、実は印刷。このドキッとするブックデザインはイルマ・ブーム。
銅賞(スイス)
『Documenta 14: Daybook
Separate English, German and Greek editions
(ドキュメンタ14日誌 英語版、ドイツ語版、ギリシャ語版)』
Prestel発行
5年に1回、ドイツで開催される国際的な現代アート展「ドキュメンタ」の記録集。本のカバーは紙ではなく、型押しされたビニール。袖の部分がポケットのようになっていて、会場のMAPが挟まれています。特注のビニールカバーってすごくコストがかかるのですが。3カ国語版の見せ方もお見事。
銀賞(日本)
『くままでのおさらい 特装版』
ビーナイス発行
世界で最も美しい本コンクール上位賞では、日本から唯一の受賞作品。井上奈奈さんの絵を中野活版印刷店がリソグラフで印刷し、美篶堂が手製本で仕上げています。円形にくりぬいた板紙を重ね合わせてクロスを貼った表紙もすばらしいです。職人の手で丁寧につくられているのが伝わってくる本。
(後半へ続きます)