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絵本『うさぎがきいたおと』ができるまで
編集宮後です。
あまりに久しぶりの投稿で、ログインの仕方を忘れそうになりました...。

今までなにをしていたのかというと、Book&Designという新しい個人出版社とギャラリー開設の準備をしていました。ギャラリーのほうはほぼできあがっていましたが、出版社のほうはゼロからでした。出版社のつくりかたについては、また別のところで書きたいと思うので、ここでは9月に出る新刊書籍ができるまでをまとめます。

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こちらが新刊『うさぎがきいたおと』です。手製本で有名な美篶堂代表の上島明子さんの文章に、石井ゆかりさんの書籍の挿絵などを手がけている木版画家の沙羅さんが絵を描いた、大人のための絵本。

2010年に美篶堂が自社制作した本をリプリントし、一般流通する書籍として再販したもの。8年ぶりに再販されると聞いて、書店流通用の本をBook&Designで担当したいと提案し、一緒に印刷していただくことになりました。

今回は、数々の印刷賞を受賞している山田写真製版所のプリンティングディレクター、熊倉桂三さんに印刷監修をお願いすることに。

熊倉さんには過去に取材で何度もお世話になっていたのですが、印刷をお願いするのは今回がはじめて。沙羅さんの原画の繊細な色を引き立たせるため、通常のプロセス4Cではなく、カレイドインキを使用。カレイド用に製版データを調整して印刷していただきました。原画の鮮やかさや立体感が見事に表現された驚きの仕上がりでした。

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印刷立ち会いの様子。
木版画家の沙羅さんと山田写真製版所の熊倉さんが
刷りだしを見ながら、色の出方をチェック。

(山田写真製版所での熊倉さんとの打ち合わせや印刷立ち会いの様子は、本づくり協会の会報誌『 BOOK ARTS & CRAFTS vol.3』の記事を参照ください)

打ち合わせから印刷立ち会いまで同伴できなかったのが残念ですが、あとでお話をうかがうにつれ、その丁寧なプロセスに驚きました。原画を見ながら、作家とプリンティングディレクターが相談し、モニタで色を調整しながらデータをつくるそうです。その場で方向性を決められるので、何度も色校を出す必要がなく、結果的にはこの方法のほうが早く無駄なく良い印刷ができるのだとか。

印刷ができあがったあと、刷り本を美篶堂の長野工場へ移動し、手製本の作業が始まります。美篶堂とBook&Designでそれぞれ刷り本を分け、外まわりのみを異なる仕様でつくるのです。

今回の絵本は見開きページを半分(中表)に折り、折った部分に糊をつけて天糊製本したもの。天糊製本は180度フラットに開くことができるので、見開きにまたがっている絵柄がノドに食い込まずに製本できる方法です。

美篶堂の長野工場の様子。一冊ずつ手で製本していただいています。

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貼り合わせのページに糊をいれているところ。

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表紙に板紙を貼り、糊が乾くのを待っているところ。

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カバーも一冊ずつ手で巻いていきます。

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できあがりました。


Book&Design版では表紙に板紙を重ね、ドイツ装にしました。その上からカバーをかけて完成です。書店で流通できるようカバーにバーコードが入っています。美篶堂版では、布貼上製本・ケース入りという特別仕様になっています。こちらは美篶堂の製品を販売している店舗とオンラインショップでの販売です。
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上が美篶堂特装版。布貼上製本にタイトル箔押、ケースがついています。
下がBook&Design版。どちらも中は同じです。


中ページは同じで、外まわりの仕様だけ変更しています。それぞれで少部数ずつ中ページを印刷するよりも、まとめて印刷することで1冊あたりの原価を下げるよう工夫しました。

こうして、かなり手をかけてつくったので、その良さが伝わるような流通方法をとりたいと思い、トランスビューの注文出荷制で注文をいただいた書店のみに配本することにしました。おかげさまで、順調に注文をいただけています。実際、書店店頭に並び始めるのは、9月中旬頃の予定です。

今回、自分で出版社をつくるというチャレンジをしてみましたが、このプロセスを共有できれば、ほかの編集者やデザイナーの方々も自分で本を出版できるのではないかと思いました(すでに自分の出版社をつくって自著を刊行している著者の方々もいらっしゃいます)。また、この方法は、自分たちで本をつくりたい企業、ブランド、自治体、学校などにも応用できそうです。

いまは(印刷するだけなら)個人でも簡単に本をつくれる時代になりましたが、一定部数以上を書店に流通させるとなると、まだまだハードルは高いです。流通のための道筋がつけられれば、あとからその道を通る人がいるかもしれない。そう思いながら、いろいろ試行錯誤中をしています。書店で見かけたら、ぜひ手にとってご覧ください。


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9月8日から30日までの土日祝、Book&Design Galleryで原画展を開催しています。こちらもぜひ!。


絵本『うさぎがきいたおと』

文:かみじまあきこ 絵:沙羅
装丁:川上恵莉子、守屋史世
印刷:山田写真製版所
製本:美篶堂
刊行:Book&Design
(9月10日発送予定)

用紙:本文、カバー アラベール ホワイト 四六判130kg
   見返し NTラシャ はなだ 四六判100kg
   表紙 板紙(2mm厚)
印刷:カレイド印刷、カバーはマットニスがけ
製本:ドイツ装、手製本

四六判変型(128 X 190 mm)、48ページ
本体2,500円+税
ISBN 978-4-909718-00-6
http://book-design.jp


by dezagen | 2018-09-13 09:30 | | Comments(0)
『これ、誰がデザインしたの? 続(2)』
渡部千春著、デザインの現場編集部編
美術出版社刊
04年以降の連載記事をまとめた2冊目の書籍。連載で紹介したアイテムのほか、名作ロゴやパッケージ、デザインケータイなどを紹介。
 
これ、誰が書いているの?
 
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