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緑光+marute リノベーション計画と今後の展開について
 ライター渡部のほうです。

 田部井美奈さんが台中で個展 http://blog.excite.co.jp/dezagen/27455430/ を行った、緑光+marute (本来は緑は繁体字。 uは上に‥のウムラウト)。

 
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 住宅と店舗が入り交じる街の一区画、おおよそ80メートルほどの道の 旧水道局官舎をリノベーションしたエリア「緑光計画」の一部に入っている。近隣は土日ともなれば若者や観光客で賑わう、トレンドエリアになりつつある。

 
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 リノベーションはどうやってやったんだろう?ギャラリーってどんな人が来るんだろう?などなど、気になったので今年1月、再度遊びに行ってみた。

ギャラリー緑光+marute 

・緑光計画ができるまで

 話を聞いたのは緑光+marute の運営を手がける木村一心さん。運営を手がけるだけではなく、緑光計画全体に大きく関わっている人物だ。
 緑光計画のリノベーションを手がけた現地のデベロッパー「范特喜微創文化(英名 fantasy story)」に2014年から所属し、現在は半分范特喜に所属しつつ、2017年から台湾で会社「木村一心股份有限公司 」を設立し、ギャラリーの運営と設計の仕事を手がけている。
 リノベーション工事は木村さんが会社に所属する前の、201​2年から​​13年に行われたが、学生としてプロジェクトに参加していた。

 木村一心さんの HP

 緑光計画の元の建物は70年から60年ほど経っており、モルタル、レンガ、タイルなどを使用した外壁を残し、鉄骨を入れ強化、平屋部分の屋根を2階のベランダにし、隣接する建物とつながる屋外広場に変えた。


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 内部は、古く味わいの残る木枠やタイルなど、活かせるところは元の素材を使いつつ、補強。部分的に1つのスペースの壁全体をガラスにしたり、階段の手すりは黒い鉄骨で仕上げたり、と20世紀中旬の台湾家屋建築と現代建築の要素とが共存している。

 
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 緑光計画の中に入っているテナントは現在18軒。ハンドメイドや伝統産業など若い台湾ブランドを育てるという基準でテナントを募集し、現在は印花樂、 無藏茗茶、 臺虎精釀などが入っている。

 印花樂  台湾製のテキスタイルショップ。

 無藏茗茶  自社の茶畑、工場を持つ茶店。

 臺虎精釀 数十種類の台湾のクラフトビールを試飲しながら注文できるバー。

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・コンテクストを考えたリノベーション

 古い建築のリノベーション企画は日本でも増えているが、台湾では個人で一軒のレベルから、企業、自治体が手がける旧倉庫や工場と言った巨大施設まで実に幅広く行われている。

 リノベーションの際、その地域の活性化に力を入れているのも范特喜微創文化の特徴だ。台中だけでなく台湾の様々な地域でリノベーションを手がけているが、建物の成り立ちや建築構造はもちろん、地域的にどういう場所であるか、近隣ではどんな人々がどんな生活をしているか、前リサーチを十分に行う。
 完成後のテナント選びも手がけ、かつプロジェクト毎に范特喜微創文化のオフィスを作っておき、現地採用したスタッフを常駐させている。

「地域活性化のためのリノベーションは様々行われています。台北のように人口の多く新旧の入れ替わりが常に激しい都市では成功しやすいのですが、台中、高雄、あるいはもっと小さい町などでは成功しにくいのが現状です。

建物だけを直しても地元の人にすぐに受け入れられるとは限らない。また、成功してもその地域の地価が上がったり、突然変わってしまって、それまで住んでいた人達が入っていけないようなエリアになってしまうこともあります。

范特喜微創文化は、テナントなどの中身を作り、イベントなどもからめていき、極力地域の人が入って行きやすいプロジェクトを意識しています。例えば雲林県斗六市でのプロジェクトはリノベーションだけでなく、今後20年間の運営も含めた仕事で、随時アフターケア、メンテナンスを行ができるようにしています。このためスタッフの常駐、特に現地採用して地域の事を分かっている人を入れることが重要なんです」(木村さん)

・ギャラリーの役割

 2つ目のトピック。ギャラリーとしての緑光+marute について。
  前回のブログでも説明したが、現地での運営は木村さん、キュレーションは香川県高松市の書店 BOOKMARUTE  http://book-marute.com を営み、イベントを行っている小笠原哲也さんが行っている。

 ギャラリーがスタートした2015年からこれまで、山口一郎、田部井美奈、平野甲賀、宮脇慎太郎、若手写真家のグループ展、妖怪造形大賞展の巡回、台中在住のイラストレーター Fanyu(林凡瑜)など、イラストレーション、グラフィック、写真、立体など幅広く日台のアーティストを紹介している。
(これまでの展示リストはこちらで https://www.isshin-taiwan.com/gallery

 気になっていた事の1つが、台中で日本のアーティストを紹介して、ギャラリーとして儲かるのだろうか」。

 図々しい質問だとは思いつつ、木村さんに聞いてみると、
「給料が日本の約三分の一程の台湾で、高価な作品を売るのは日本より難しい。それだけに僕らのようにストイックに日本の作家さんを紹介している台湾のギャラリーはあまりありません」という。
「ですが、むしろそのユニークな立ち位置が台湾で注目されることも事実で、毎回かなりの来場者があります。
観光客の人達が作品を買うことは稀ですが、台中で一番日本の芸術家が集まる場所というコンセプトが受け入れられ、毎回の展示に足を運んでくれる方や作品を購入してくれる方が徐々に増えてきています」

・日台だけでなく、世界に広がる基点

 概して日本のアーティスト(デザイナーやイラストレーター含む)は、なかなか海外展示のチャンスを持たない。国内の優れた才能が国内だけで、悪く言えば身内だけで「いいね」と言い合っている状況のように見え、文化の異なる場での評価を受ける機会が少ないのは残念な事ではある。とはいえ、現実的な問題とし移動や搬入搬出の手間が掛かること、言語などは大きなハードルだ。

 緑光+marute は宿泊施設や通訳などは現地の友人知人からサポートしてもらったり、日本の作家と交流したい学生にイベントスタッフのボランティアを募るなど、負担を軽減する努力を行っている。

「日本から来るアートやカルチャーは、国際交流に繋がりまちづくりを促進します。建築を作るだけのリノベーションではなく、地域の活性化を促すという意味でも、ギャラリーというのは良い場になっています」という木村さん。ギャラリーを通して建築の運用を体験し、設計士としての新たな役割を見つけていきたい、と今後の意気込みを語ってくれた。 
 
 緑光+marute の可能性は、日台の関係だけに留まらない、ということも加えておきたい。
 昨今、台湾は急激に海外からの観光客が増えている。中国語で書かれるプレビュー、レビューや観光客からの個人発信の情報は、台湾と同じ繁体字を使用する香港を始め、中国本土、華人の多い東南アジアやその他の地域に広がっていく。そこからまた次のステップアップに繋がっていくことだろう。
 緑光+marute のような日本人アーティストが展示をやりやすい環境は、確実に展示者の視野を広げてくれるに違いない。


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追加情報:
 台湾、台中に馴染みのない方に、基本情報を。
 台中市は台湾の西側、真ん中よりちょっと上に位置する。人口約278万人の、人口では台湾第2の都市。首都からの距離は異なるが、日本の感覚で言うと大阪市のようなところだ。

 台北から一番行きやすいのは台湾新幹線(台湾高鐵)。
 台北駅から台中駅まで約1時間。普通指定席で700元(約2700円)
 ただし高鐵台中駅が市内から離れているので、ギャラリーのある地区へは高鐵台中駅から公共バス、もしくはタクシー(20分くらいで約300元(約1100円)くらいだった記憶)。
 ウェブサイトに日本語もあり、また台湾内でのコンビニからチケット購入も可能。

 台湾鉄道の在来線で行く方法もあり。特急、急行、普通などにより所要時間が異なるが約1時間半から3時間半ほど。この場合の台鉄台中駅は街中にある。
 高速バスは台湾桃園駅から台中市内まで約2時間、台北市内からだと約3時間ほど。

と、チケットの買い方さえ分かってしまえば、簡単に行ける。
(他にも高雄、台南から入って行く方法など様々あるので、詳しい情報は各鉄道バス会社のサイト、もしくは台湾旅行ガイドのウェブサイトやガイドブックをご参照を)

by dezagen | 2018-02-17 01:32 | インテリア
『これ、誰がデザインしたの? 続(2)』
渡部千春著、デザインの現場編集部編
美術出版社刊
04年以降の連載記事をまとめた2冊目の書籍。連載で紹介したアイテムのほか、名作ロゴやパッケージ、デザインケータイなどを紹介。
 
これ、誰が書いているの?
 
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