編集宮後です。
竹尾見本貼本店でデスクダイアリーの展覧会を見てきました。
デスクダイアリーとは、紙の総合商社、竹尾が毎年制作している卓上ダイアリー。1959年から多くのデザイナーが制作にかかわり、来年2018年でちょうど60冊目になるそうです。そんな貴重なダイアリーの数々を集めた展覧会「竹尾デスクダイアリーの60年」が12月10日から開催されています。
1959年の最初のダイアリーはこちら。デザインは日本デザインセンターで、本文にはパルテノン、マーメイドリップル、ウエーブレード、STカバー、MLファイバー、アングルカラー、彩美カード、NBKファイバーなどの紙を使用。当時はまだリング綴じ(スパイラル製本)でした。
卓上で180度フラットに開けるようリング綴じが使われていたのですが、1976年から糸かがり綴じになります。糸かがりは丈夫で良いのですが、見開き全体に写真や絵が入るとき、中央に糸が見えてしまうのが課題でした。そこで、糸が見えないように考えられたのが、背開き製本です。半分に折った紙を重ね、背の部分を糊で固めて製本するため、のどに綴じたあとが残らず、絵柄がきれいにつながります。この製本方法は、美篶堂の上島松男親方によって提案され、1988年のダイアリーから採用。現在も美篶堂による手製本で製本されています。
展示会場では、美篶堂の上島松男親方や上島真一工場長のインタビューのほか、2018年のダイアリーの制作工程を紹介する映像が見られます。ダイアリーがあまりにきれいに整っているので、機械で製本されたように見えるのですが、一冊ずつ職人の手によってつくられていたんですね。映像を見ていただくと、1冊のダイアリーができるまでに多くの人の手が入っていることがわかるかと思います。
60冊のうち、初期のものは透明ケースに入っていますが、それ以外は手にとって閲覧可能。貴重なダイアリーの一部は、デジタルアーカイブ化され、会場にあるiPadで見ることができます。
文字好きの方に見ていただきたのは、1983年のダイアリー。書体デザイナー、カリグラファーとして有名なヘルマン・ツァップさんのカリグラフィー作品が収録されています。このダイアリーのために新たに描かれた作品もあり、必見です(会場のiPadで全ページが見られます)。
60年分のダイアリーを一度に眺めてみると、新しい紙が次々と開発されていった様子や、当時のデザイナーが腕をふるっていた様子が生き生きと伝わってくるようです。企業の制作物を通じて、用紙開発の歴史やグラフィックデザインの歴史もかいま見られる貴重な展示でした。展示は、2018年1月19日まで竹尾見本貼本店で開催。会場に行けない方は、竹尾アーカイヴスのウェブサイトでも一部見ることができます。
「竹尾デスクダイアリーの60年」
開催期間:2017年12月11日–2018年1月19日
会場:株式会社竹尾 見本帖本店2F
竹尾アーカイヴス「竹尾デスクダイアリー」