編集宮後です。デザイナー、山野英之さんの事務所 TAKAIYAMA inc. の展覧会「3F/B.C.G」に行ってきました。タイトルになっている「3F」はTAKAIYAMA inc.のアプローチの法則であるFocus/Frame/Function(焦点、枠組、機能)、「B.C.G」(僕のCG)は山野さんのプライベートワーク名だそう。
展示ではこれまでの仕事を、フォーカス、フレームとグリッド、機能と構造、印刷、本、ロゴ、サイン、写真、動画、プロジェクトの10カテゴリーに分けて紹介。山野さんのプライベートワーク「B.C.G」の新作も展示されていました。会場はデザイン小石川、会場構成はDaisuke Motogi Architecture。山野さんの考え方やアプローチがまるっとわかる展示です。
こちらが会場写真。かなり広い空間ですが、14本の柱を中心にカテゴリー分けされており、1つずつ見ていくとかなり見応えがあります。小さな名刺から巨大なサイン計画、映像作品まで、様々なサイズや時間軸の仕事が一緒に並んでいて、山野さんのお仕事の幅広さを感じました。



山野さんとは、2004年に『これ、誰がデザインしたの?』のブックデザインをお願いしてからのお付き合い。今は、文字デザイン誌『Typography』のデザインでお世話になっています。柱に貼ってある下2枚のレイアウトは『Typography』の誌面。かなり細かくグリッドが切られているのがわかると思います。印刷物で見ると、画像をポンと配置したように見えますが、レイアウトデータを開くと、このように緻密に計算されているのがわかるのです。
表面的には「センスがいい人が作った感じのいいグラフィック」に見えるのですが、その裏でかなりいろいろ考えられているのがTAKAIYAMAのデザインかなと思います。きれいなグラフィックで終わらず、ちゃんと機能しているんですね。建築家とのサイン計画の仕事が多いのも、感覚的ではなく、空間の中でグラフィックがどのように機能するかを考える構造的なアプローチをしているからなのではないでしょうか。


こちらは、山野さん個人の作品「B.C.G」の展示。一番右がIllustratorで描いた元の絵で、その部分を切り取った作品が左側に並んでいます。Illustratorのデータを拡大しても画素が粗くならず、どこまでも均質に拡大されていく様子を作品にしたもの。一見、きれいな色の抽象画に見えますが、「スケールとは何か?」を再考させられる作品だと思いました。
こうして見ていくと、感覚的な部分と構造的な部分との振れ幅がかなり広いことに気づくかと思います。どちらかに秀でたデザイナーは多いのですが、両方をハイレベルにこなせる人は案外少ないのです。その振れ幅を楽しんでいただくためにも、じっくりと時間をかけて展覧会をご覧になることをお勧めします。
展覧会は、10月1日(日)までデザイン小石川で開催。
文京区小石川2-5-7 佐佐木ビルB棟2F
http://designkoishikawa.com/exhibition/383/
http://takaiyama.jp/news-post/exhibition-bcg/