ライター渡部のほうです。
GWは4泊5日でロンドン+パリへ。
ずっとスーパーマーケットでパッケージを見て来て、ここ2年ほどはロンドンとパリ、つまりはイギリスとフランスのスーパーマーケットとその商品、を中心に見るようになってきた。
今後スーパーマーケットで売られる一般的な食品、日用品のパッケージはどうなっていくのか、を見る上では、やはりイギリスが先端を行っていると思う。フランスは、イギリスに比べれば保守的だが、突如モノプリのような大胆なプライベートブランドの展開をすることもあり、なかなか見逃せない。
(これにドイツを加えれば、もう少し多角的に見れるとは思っているが、ドイツはドイツでどの都市を見るか、難しいところではある。さておき。)
P&Wはイギリスで最大のスーパーマーケットチェーン、テスコのプライベートブランドのアートディレクションを手がけている。
さらに、私に取って非常にラッキーな事に、日本人の森田亜紀子さんがお勤めなので、英語だけの会話でこぼしてしまう情報をフォローしてもらえる。だけではなく、日本とイギリスをどちらも知っている人と話していると、商品やデザインの話だけではなく、社会的背景など様々な事を比較しやすい。
今回も取材の後、森田さんともろもろな事を話していた中で、森田さん曰く「英国の小売店はモノを売る以上に、社会的責任を担う企業として様々な活動をしている」というところが気になった。
メーカーの社会的責任はよく聞く話だが、それに比較して小売店の社会的責任はあまり語られることが少ない。
日本の小売店のIR情報、CSR情報を見ると、皆それなりに社会貢献をしているのは分かる。地域貢献などは恐らくイギリスともそれほど変わらないのではないだろうか。とはいえ、一消費者として店舗に行った時に、それが実践されている感覚に薄い。
社会貢献という言葉も幅広いので取りようだが、私のようにプライベートブランドを見ている者の視点からすると、メーカーとは異なり消費者と直接対面する小売店ならではの商品開発力が欲しい。これはマーケティング戦略とも言えるが、各店舗を利用する消費者が必要としているモノを揃え、既存でなければ作り、棚で見やすく消費者を誘導させる事。また、パッケージの表示も(できれば統一し)分かりやすくすることで、ナショナルブランド、プライベートブランドに限らず、消費者が商品をきちんと比較できること。
消費者が欲しいものは、価格の安さだけではない。
例えばオーガニック商品。すでに20年以上も前の事になるのではないだろうか。私がイギリスに住んでいた頃、スーパーマーケットに「オーガニック」だけで1つの棚ができていた。オーガニック食品(他)は専門店や市場に行かないと手に入らない、という状況だったのが、スーパーマーケットで手軽に手に入るようになったわけだ。
これも、消費者に対する社会的貢献と言えるだろう。
イギリスで今は、オーガニックは当たり前になってきていて、むしろアレルギーや、フードマイレージを考えた商品開発だろう。
むろん、こうした特化商品も専門店に行けば買える。オンラインで注文もできる。だが、普段買い物をする店にあれば、消費者が楽であることは言うまでもない。
アレルギー対策として、現在どこのスーパーマーケットでもfreefrom(アレルギー物質がない)商品群を揃え、プライベートブランドの1つとしてシリーズ化し、専用の棚がある。
これはテスコの例。
紫のカラーバーの着いたパッケージはテスコのオリジナル商品。freefrom商品をまとめた棚なので、ナショナルブランドの商品も揃う。
ただ、このfreefrom商品は、まだ開発途上だと私自身は考えている。テスコのfreefromはグルテン、小麦、乳、卵を使っていない物となっている。実際に食品アレルギー物質と指定されているものは何かと言えば、こちらは日本の例だが、消費者庁の資料によればhttp://www.caa.go.jp/foods/pdf/food_index_8_161222_0001.pdf
卵、乳、小麦、落花生、えび、そ ば、かに いくら、キウイフルーツ、くるみ、 大豆、カシューナッツ、バナナ、 やまいも、もも、りんご、さば、ご ま、さけ、いか、鶏肉、ゼラチン、 豚肉、オレンジ、牛肉、あわび、 まつたけ
イギリスの例ではhttps://www.food.gov.uk/science/allergy-intolerancecelery、cereals that contain gluten (including wheat, rye, barley and oats)、crustaceans (including prawns, crabs and lobsters)、eggs、fish
、lupin (lupins are common garden plants, and the seeds from some varieties are sometimes used to make flour)、milk、molluscs (including mussels and oysters)、mustard、tree nuts – such as almonds, hazelnuts, walnuts, brazil nuts, cashews, pecans, pistachios and macadamia nuts、peanuts、sesame seeds、soybeans、sulphur dioxide and sulphites (preservatives that are used in some foods and drinks)
と、とんでもなく多い。
これらすべてのfreefromを作るのは難しいが、グルテン、小麦、乳、卵だけではなく、もう少し幅のある「○○フリー」商品群の開発、及び、それが分かりやすい棚、が求められる。
イギリスで食べたサンドイッチの原材料は、アレルゲンには太字が使われ、分かりやすくなっていた。
サンドイッチなど、調理済み食品は特にプライベートブランドの力量が発揮されるところ。
イギリスもまだ足りていないと感じるが、日本はさらにここにもう少し配慮があるといいと思う。
日本はコンビニエンスストアのシステムがうまくできているので、一度導入すれば、かなり流通するのではないかと思う。
小売店の社会的貢献として、地域で健康推進イベントなどを行うのもいいが、もっと店舗での努力が欲しいところだ。
P&Wの代表の1人、Adrian Whiteford(エイドリアン・ホワイトフォード)氏は、こうした食品表示に対しての危惧を、普段の会話だけでなく文章化して訴えている。その話はまた別の機会に書こうと思う。