ライター渡部のほうです。
プライベートブランドのパッケージについての雑記、その2。
パッケージというよりは、プライベートブランドの利点、可能性について。
今、ヨーロッパ(私の知っている限りの話なので、イギリス、ドイツ、スイス、オランダ、北欧諸国など主にヨーロッパの北西側)のスーパーマーケットのPBで目立ってきているのが「フリーフロム free from (ラクトースフリーやグルテンフリーなど、アレルギー物質や、食餌制限のための要素を除いたもの)」や、カロリー、塩分を控えめにしたり、全粒粉で作られたりなど健康に配慮した食品のシリーズ。
米国でもほぼ同様と言えるが、米国の場合、Whole Foods MarketやTrader Joe'sなど、健康配慮型の商品に特化したチェーン店の増加が目立つ。
こうした食品群は日本にもあるが、調味料から単品の食品、スナック、調理済み食品、総菜などに至って全てをカバーしているブランドはほとんどないだろう。
それぞれの分野専門のナショナルブランドではなく、総合的にブランドカテゴリーを作れるプライベートブランドだからこそ出来ることだと思う。
こうした健康に配慮したブランドシリーズの展開として考えられるのは、フィットネス機器、アプリとの連携だ。
日本と欧米ではかなり事情が異なるので、まずは欧米の事情から。
Apple Watch Nike+、fitbitや、Jawbone、withingsなどのアクティビティトラッカー、フィットネストラッカー類は歩数や運動量、睡眠時間や心拍数を計測、製品によっては体重計とも連動し、これらの数値をスマートフォンやPCのアプリで記録していき、健康管理に役立てるというもの。世界的には米国が断トツに売れているが、全世界的に普及が進んでいる。
アクティビティトラッカーアプリの多くは、食事管理のページもあるのだが、これがなかなか難しいところだ。
食品パッケージに書かれている栄養成分表を毎回丹念に手入力しているのも面倒だし、自炊している場合は素材とその計量、調理法による結果の違い、実際に食べた量まではなかなか計算できるものではない。
対応策としてfitbitやJawboneのアプリ、単体ではMyFitnessPalアプリなどが食品のバーコードを読み込む機能を持っている。英ガーディアンの記事によれば、MyFitnessPalのスキャンできる食品アイテム数は2016年1月時点で5万アイテムあるという。
プライベートブランドのパッケージの話に戻すと、フリーフロムや健康配慮食品のシリーズ群が作れている状況なので、これらの食品群とアクティビティトラッカーのアプリが連動しやすい下地が出来ている。
バーコードで読み取れるならば、ナショナルブランドでもプライベートブランドでも違いはないわけだが、消費者の目線で見ると、統一されたブランドがあることで、1)店舗で商品群を見つけやすい、2)パッケージに統一性があるのでスキャンする時にバーコードがどこにあるか分かりやすい、という利点がある。
プライベートブランドを持つスーパーマーケットやその親会社、機器類とアプリのメーカーとスポーツ施設や医療機関が連携すれば、さらに健康管理は充実するだろう。
と、プライベートブランドを活用した健康管理は可能性がまだまだあるのだが、これを日本にそのまま導入するのは無理がある。
・プライベートブランドの普及率が異なる。ヨーロッパと言っても国によって差があるが、売買高でトップのスイス53%に始まってスペイン、オランダ、ドイツ、ベルギー、オーストリアは40%超え、フランス、ポーランド、フィンランドは33%超え、イタリアは20%となっている(Private Label Manufacturers Association (PLMA)調べ 2015年発表のもの)。日本のデータが見つけられないが、5%程度と書かれている資料はあり(出典元不明)現状のスーパーマーケットや個人商店などを見る限り、これくらいのシェアでも不思議ではない。
・プライベートブランドへの意識が低い。普及率が低いのに合わせ、まだプライベートブランドの幅が狭く、価格の安さを売りにしているものが非常に多い。健康配慮型の食品群シリーズを作れる状況がまだない。(ひょっとしたら、将来的にも作れないのかもしれないが)
・食品の買い方が異なる。ヨーロッパ北西部の国々では、スーパーマーケットチェーンの種類も数も、日本に比べると極めて少ない。いつも行くスーパーマーケットがほぼ決まっていて、かつ、買い物頻度は少なく、1度にまとめ買いをする傾向がある。日本は複数のスーパーマーケット/コンビニエンスストアを使う消費者が多く、まとめ買いもするが日々、その都度必要なもの欲しいものを買い、鮮度を重視する傾向がある。
他にも様々理由はあるが、プライベートブランドの利点を活かす状況ができていない、というのは事実。
とはいえ、利点がある分野だけに、今後発展する可能性は高い。
恐らく、ヨーロッパやアメリカとは少し違った形で独自発展するものと思われる。
さて、どのように発展していくのだろうか。