編集、宮後です。
ひとつ前の
渡部さんのブログ記事を読んで、「言葉にできないデザイナーの仕事って何なんだろう?」という興味がわきました。仲條さんも中村さんも、デザインが魅力的なだけでなく、ご本人の人柄も大変魅力的で、デザインと人柄が渾然一体となって表現しがたい魅力になっているのではないかと感じました。「言葉にできない」というのは、デザインの表現部分だけ切り離して説明することができないからではないかと。
デザイナーの人柄がデザイン表現にどう影響するのか、個人的に興味があって、ずっと観察してきました。若いうちは、マーケットが求めているものに反応できる勘やセンスの良さでなんとかなりますが、年齢を重ねるごとにデザイナー本人が積み重ねてきた経験や人間的な深みがないと厳しいのではないかと感じています。事務所のスタッフを指導したり、学生に教えたりする機会も増えるので、人間力が問われるような気がします。
仲條さんは1933年生まれで御年83歳。現在、デザインの世界には、80代から20〜10代の人がいるわけですから、学校を出たばかりの若者は大先輩たちとは違うフィールドで勝負しないと勝てないわけです。それがデザイナーの大変なところでもあり、やりがいがあるところではないかと思います。
デザイナーという仕事は、まだ形になっていない概念を目に見える形にする非常に大事な仕事です。まだそこに存在すらしていない思想やぼんやりとした理念を整理し、視覚化することは、誰もができるわけではない特殊能力だと思います。たとえば、経営者が考えている企業理念を理解してロゴをつくったり、まだ世に出ていない新しい製品の形を考えたり。そのためには、デザイン力のほかに、経営者が求めていることを察知する直感、コミュニケーション能力、予算と時間を管理するマネジメント能力なども必要でしょう。それだけでも大変ですが、さらに本当に優れたデザイナーには進むべき未来を指し示せる能力もあります。これは優れた経営者や研究者にも備わっている能力です。
そう考えると、デザイナーというのは本当にすごい人たちだなと思うのですが、そのすごさが社会にあまり伝わってないような気もします。最近ではデザインが残念なケースで語られる機会が目立ってしまったがゆえに、よけいにそう感じます。
業界の中だけで話題にするのではなく、「デザインってすごいんですよ」ということを外に向けて語っていかないといけないですね。今年はもっと言葉でデザインを伝える仕事をしようと思ったのでした。