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「現代デザイン論」について思うこと
ライター渡部のほうです。ブログ久々。

現在、東京造形大学で「現代デザイン論」という講義を担当しています。
ここで悩ましいのは「現代デザイン」とは何か?という点。
デザインとは何か、というテーマは様々に語られているので、それは一旦置いておいて、
難しいのは「現代」の定義です。

私の家のPCに入っている国語事典「スーパー大辞林」の中で、「現代」とは
1 現在の時代。その人が生きている,今の時代。
2 歴史の時代区分の一。世界史的には一般に,大衆社会の成立をみた一九世紀末以後,あるいは資本主義社会と社会主義社会の並立した第一次大戦後をさすが,日本史では,第二次大戦後をさすことが多い。
とのこと。
2に沿って、19世紀末以降、にしてしまうと「近代デザイン」だろうし、「日本史では第二次世界大戦後」と言われても、私の担当授業内の話になってしまいますが、50年代〜2000年代までは「グラフィックデザイン史」という項目でカバーしています。
つまり、2 では難しい。
では、1 の定義、現在の時代。その人が生きている,今の時代。 とすると、今、何が起こっているのか、を伝えることになります。

実際、私のやっている「現代デザイン論」では、今起こっていることや今あるものについて紹介する方法を取っています。
キャンパスノートやアラビックヤマトなどの文具もあれば、マジックリンやカップヌードル、ポッキーなどパッケージの世界展開の話もあれば、家具やインテリアデザインイベントの話もします。
「現代デザイン論」と名前は付いているものの、「論」を1から10まで順序立って説明するのではなく、断片をザクザクと見せていく、という方法です。

なぜかと言えば、現代が現在進行形だけにそれを総括して論ずる、ということが難しいからです。
(とはいえ、最終週は総括の話を入れないと、とは思っていますが)
断片として見せている、もう一つの理由に、今のデザインないし文化そのものが、非常に断片的だから、というのもあります。

50年代から80年代くらいまでマスメディアが「こうなんだよ」と言い、読者や視聴者が「そうなんだ」という、大筋で単一な流れがある時代が続いていました。
ところが90年代から徐々にインターネットとソーシャルメディアの普及し、個の力がぐっと強くなり、個が個に対してメッセージを発信する、それを受け取るようになりました。私はこの状況を「断片化」と捉えています。

次の課題は、どう総括するのか、です。
実は昨年度まで、この断片化したデザインのトピックを紹介するだけでそれぞれの学期を終わっていました。
ところが、別の授業での話ですが、学生から「もっと全体的な流れを説明して欲しかった」という声がありました。
ライター業では、記事、つまり断片化されたトピックを突き詰めて書くことが求められます。そうしたことを積み重ねて行くことで、大まかでも全貌が次第に見えてくる、時代の流れが見えてくる。それを基礎情報として自分の中に入れておいて、また断片について書く。この繰り返しです。

学生も断片を見ることで全貌は分かるよね?と勝手に思っていたのですが、どうもそうではないらしい。
自分の授業のツメが甘かったことを露呈するような話ですが、私の授業には俯瞰する視点が非常に欠けていたのでした。
現在進行形のものを俯瞰することは非常に難しいのですが、それでもやはり求められていることは応えなければ。

自分の頭内だけでは無理なので、現代デザイン、contemporary designと名の付くものを手当たり次第、読んで、見て、と、今(最終講義は17日、あと2日)はそのぎゅぎゅぎゅと頭に入れたものを、整理しているところです。

ネット上での資料で面白いと思ったのが、デザインジャーナリスト藤崎圭一郎さんのブログ「藤崎圭一郎の雑思録」での
モダニズムについて
http://cabanon.exblog.jp/21368350/

また「デザイナー/デザイン業 - 中部経済産業局ホームページ」のpdf書類のように、デザインを文化として捉えるのではなく、あくまで産業の一つとして考える見方も参考になります。
http://www.chubu.meti.go.jp/tyosa/creative/i.pdf


ここでは、デザイナー/デザイン業 の仕事内容から、報酬ガイドラインを作ろうとする現在の動き、今後の重要性などが分かりやすく書かれています。
(全国をカバーする統計局のデータでもどこかにあるはずなのですが、データが膨大なため、デザイン業を説明するページを見つけられませんでした。)

こんな感じで色んな資料を見ながら、今「現代はどうなっているのか」を俯瞰し、総括する話をまとめているところです。

授業とは別の話になりますが、
RCA(Royal Collage of Art)のサラ・ティズリー教授とで、「Contemporary Design History =現代デザイン‘史’」とは何か、を探るワークショップを行ったプロジェクトが、ウエブサイトになりました。
http://designhistoryofnow.rca.ac.uk
このウェブサイト上で(も)この議題というか永遠の課題を語って行くことになります(ただ、更新頻度はよく分かりません。ひょっとしたら1年に1回とかになるかも)。
by dezagen | 2014-12-15 11:09 | その他
『これ、誰がデザインしたの? 続(2)』
渡部千春著、デザインの現場編集部編
美術出版社刊
04年以降の連載記事をまとめた2冊目の書籍。連載で紹介したアイテムのほか、名作ロゴやパッケージ、デザインケータイなどを紹介。
 
これ、誰が書いているの?
 
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