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RCAでのプロジェクト授業
ライター渡部のほうです。
というより、大学教員渡部のほうです。
今回のブログは自分の備忘録でもあるので、若干説明臭いけど、許して。

先週の木曜日、4月25日、からロンドンに来て、今週はRCAでのサラ・ティズリー氏と東京造形大学(後記:ここ、肝心なところ書き忘れてたので追加しました)の渡部との共同プロジェクト授業に集中(その間1本取材、3本原稿書いたりもしてましたが)。
お題は「Contemporary design history」現代史をどう作るか、というもの。
学術的に現代、というと、第二次世界大戦以降、になるだろうが、今回は特に、1990年以降の時代に焦点を絞る。
4〜5人のグループを作り、個々にテーマを決め、方法論と発表方法(読者は誰なのか?など)を考える。この後に実際に研究するかどうかは学生次第で、メインの目標は現代史作成のための方法論の作り方。

火曜日に説明、木曜日にグループ毎の個人指導、金曜日に発表、となかなかタイトなスケジュールながら、学生達はなかなか頑張ってくれてよかったよかった。

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こちらは初日の様子。
テーブルを囲んで、課題への理解がなされているかどうかの確認、ディスカッションなど。
この日は借りてきた猫並にちんまり座ってるだけの私。

学生は1年生、近現代史を専攻。
アカデミックな歴史家になる訓練を受けている人々である。
そこにジャーナリスト(というかライターというか、その辺は曖昧だけど、メディアの人)と、どう絡んでいくのか、まだ手探りの状態。

ディスカッションで徐々に分かってきたのは、学術の場とメディアでの「現代」の認識に壁があること。
学術の場で歴史研究をする際には文書情報の公式性や資料の信憑性などが求められる。
一方、現代を扱うメディアは文書として記録された資料が山のようにあるけれど(しかも現代はインターネットで資料はいくらでも拾える)、それらすべてが正確か、と言われると、そうでもない。
そもそも、まだデザインの対象物(物であれサービスであれ)が生きている、可変的な状況で、何を持ってして「これは正式」「正確」である、と言えるのか。

現代史の中でも1990年代以降はほとんどできあがっていない状態に近く、と、なるとメディアが残していく資料が「近い過去」を知る資料となるのだが、そこに歴史家はどう関与していけばいいのか。

メディアと学術歴史家とが一緒に作業をしていくのが理想、と、そうそう簡単には言えない。
例えば今回、ロンドンで午前に取材をし、夜までに書き上げなければ間に合わない仕事があった。
歴史家の意見を聞いてから、資料をすべて調べてから、では、締め切りの壁に対応できないし、また、記事が掲載されるページの文字制限がある。

今まで私にとって当たり前だったことに、学術の壁が立ちはだかっている。
学術の場に、メディアはどれだけ貢献できるのか。
さて、どう妥協点、というか、合致点を見いだせばいいのか。
今回の授業はプロジェクトの一環で、プロジェクト自体はこれから約1年掛けて行われるのだが、いやはや、大きな課題である。

さて、
木曜日の個人指導は、えっ私1人なの?と直前になって教えられ、超緊張。
二組の学生を30分づつ指導(これがTutorial。講義=lectureだけではなく、個々の指導が重要なことから、RCA始めイギリスの学校では教員の役職がTutorというわけなのか、とやっと気がつく)。

1組は「スローフード」をテーマに選ぶ。テーマは面白いのだけれど、スローフードの現代史、となると、スローフードの定義も曖昧で、非常に幅広すぎるし、このままだとデザイン史というよりは、文化史になってしまうので、なんとかデザインに落とすべく、どこか核となるものを探すことが必要。消費流通構造のデザインなのか、アウトプットされた商品なのか。学生の1人は「流通構造の変遷」を希望していたのだけれど、スローフードを謳う企業、メーカーというのは概ね小さい規模で、個々に非常に異なる。
などということを話す。

面白かったのは「広告付きの雑誌の場合、取材先に都合のいいことしか書かないんですか?」という質問。
メディアの体質にもよるけれど、なるべく第三者の目として書くようにしている、と答えたが、もう少し説明すればよかったかも。
私のようにデザインを対象としたジャーナリスト/ライターの場合、そもそもが森羅万象すべてデザインされているという視点なので、その中から「面白い」と思うものしかピックアップしない。取材先に都合がいい、というよりは、面白いトピック/アイテム/人/団体、だから取りあげるのである。
そうでなければ単純に無視。
つまり、メディアとして取りあげるかどうかの時点で、すでにいいものとして選択されていて、そこに批判の目はほとんどない。
無視するということが批判表現、という言い方になるかもしれない。
日本とイギリスのメディア体勢はかなり異なるので、一慨には言えないけれど、批判されるようなデザインは自ずと淘汰されていってしまうので、私自身はあまり追いかけていない。

二組目は「バーバリーの1993年から2013年、チェックとチャブ」がテーマ。
皆さん、チャブchavって言葉、ご存じでした?私は知りませんでした。
英辞郎の定義によりますと、
「chav【名】〈英・侮蔑的〉チャブ◆2004年に流行した言葉。教養レベルが低く、不作法で、独特の服装でショッピングセンターなどをたむろしている若者たち。典型的な外見は、男性の場合、安っぽい金ぴかのアクセサリー、バーバリーチェックのキャップ帽、フード付きトレーナー、ジーンズまたはジャージ、白いスニーカー。女性の場合、ミニスカート、スチレットヒール(stiletto heel)、金色の大きなイヤリング。」
とのこと。
バーバリーが目指す、英国伝統の云々というイメージとは違うターゲット層に消費され、バーバリーどうする?というのが一時イギリスで大きな話題となっていたそう。
日本で置き換えると、バーバリーチェックもそうだけど、ポロラルフローレンとか、本物偽物関わらず、女子高生など若い層に消費されていることと似ているが、chavの場合、もっと過激に不作法な人々であるらしい。
このグループの場合は、非常にテーマが明快なので、あとはどうリサーチを進めるのか、誰に話を聞けばいいのか、方法論を固めるだけ。
などということを話す。
余談として、日本でのバーバリー、海外でのバーバリー、成金趣味、などについて雑談。

そしていよいよ金曜日のプレゼンテーション。
テーマは上に書いたもの以外に、「ヘレンハムリンリサーチセンター http://www.hhc.rca.ac.uk (RCAの付属研究機関で、インクルーシブデザインについて1991年から研究を始め、1999年に正式な機関となった)」「ポップアップ建築」「ラグジュアリーブランドのオンライン販売」がテーマに上がった。

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文字だけのスライドを使い、ほとんど言葉で説明するプレゼンテーションもあれば、

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写真をふんだんに使いながら説明していくプレゼンテーションもある。

私が面白いと思ったのは、クラシカルな方法だけれど
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テーマの定義方法、ユーザー、生産者、歴史家の関与、声の集め方、まとめ方、といった方法論をフローチャートにした方法。
分かりやすい。

また、ラフ状態だがグループのディスカッションそのものをプレゼンテーションにしたグループもある。

このプレゼンテーションから見えてきたのは、学生が(あるいは学術の場が、なのかも)見たこと聞いたこと、すべてを詰め込もうという傾向にあること。
目標を絞り、重要なものを絞っていくのはメディアのほうが得意だろう。また、聞き取り=インタビューも、メディアの人間のほうが慣れている。
作業の役割分担をしながら、意見交換をしていくことで現代史を作ることができるのではなかろうか、というのが、この一週間で感じたこと。
まだプロジェクトは続くので、どうなるか分からないけれど。

それにしても、英語でディスカッションを聞いたり個人指導したりするのは疲れる…。
聞いてくれた学生に感謝。自分によくやったと褒めてあげたい。
by dezagen | 2013-05-05 01:19 | その他
『これ、誰がデザインしたの? 続(2)』
渡部千春著、デザインの現場編集部編
美術出版社刊
04年以降の連載記事をまとめた2冊目の書籍。連載で紹介したアイテムのほか、名作ロゴやパッケージ、デザインケータイなどを紹介。
 
これ、誰が書いているの?
 
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